そう言えば……。

スキルが10個以上あったら、心が読めるってパーンが言ってたよな!


アルコールスプレーを拭きながら、歩いているホウを見つめながら【こっちに向けーー】とひたすらに心で問いかけ続ける。


暫くして、ホウがアルコールスプレーをし終わった。


「あのさ、ホウ」


「何ですか?」


「今、何か聞こえたりした?」


「いえ、何も……」


そう言いながら、ホウはベッドの布団にアルコールスプレーを振り出した。


「心の声、読めないのか?」


俺は、疑問に思ってホウに聞いてみた。


「あーー。読めるのは、心があって、10個以上のスキルがある人だけです」


ホウは、平然とそう言った。


「それって、ホウは……」


「心がありません」


そう言って、ホウはアルコールスプレーを補充し始める。


「心がないのか?」


「はい。ありません。生き物は、全て雑菌まみれで不潔な存在です。そんな不潔な存在に感情移入した事など一度もありません」


ニコッと笑うホウの顔が、めちゃくちゃ怖いと思った。


「じゃあ、俺も雑菌だよな」


そう言って、俺は食堂に向かおうとした。


「待って下さい」


「何?」


「雑菌ですが、初めて仲良くなりたいと思いました」


俺は、その言葉に驚いた顔をした。


「どうして?」


「アーキーがいた日本という国の、この海が見てみたいと思ったんです。綺麗ですね。産まれて初めて、こんな綺麗なものを見ました」


そう言いながら、ホウは検索機を握りしめながらうっとりしている。


「見せてくれるか?」


「はい」


俺は、ホウにその写真を見せてもらった。


エメラルドグリーンの海やクリアブルーの海の写真が広がっている。


「こんな色は、どうやって出るのでしょうか?見てみたいです」


ホウの目が、キラキラと黒真珠みたいに光っている。


「色がないって嫌だよな」


俺の言葉にホウは、


「産まれた時から、こうだったので……。嫌かどうかは、わかりませんでした。でも、アーキーの住む国を見たら初めて嫌だと思いました。色がついたものは、雑菌だと思っていた。けど、これを見たら違うと思ったんです」


ニコニコと笑って言った。


そうか、そう言う事か!


さっき、ミズーが頼んできたのも、こういう事だったんだ。


パーンが言っていた、色があるのは生物と雑菌だけだと……。


ソウヤ理事長も、キレート校長も、皆、色を戻してあげたいんだ。


ホウみたいに思っている人を一人でも減らす為に……。


この世界に、色を戻してあげたいんだ。


それなら、やる事は一つだよな!


兎に角、俺がマトメーを覚える事だ。

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