第10話

次の日。

「面会謝絶って、どういうことだよ!」

 宙斗が病院の受付で、看護婦さんを問い詰めていた。

「すいません。詳しいことは主治医の桂先生に聞いて下さい」


「おいっ、千歳が面会謝絶ってどういうことだよ⁉」

 桂先生を見付けるなり、宙斗は叫んだ。

「もう少し、静かにしてくれないかな。ここは病院だよ」

 昨日の剣幕が嘘の様に、穏やかな口調であった。

「何で、千歳が面会謝絶なんだ⁉」

 宙斗の声の大きさは全く変わらない。

 周りにいた医者や看護婦さんたちが、宙斗たちに注目する。

 桂先生は呆れたように、溜息を吐いて言った。

「……千歳ちゃんの容体が急変した」

「えっ……」

「今日の朝に発作が起きた。今は少し治まったけど、大事を取って、面会謝絶にした」

「もしかして、俺の所為なのか? 俺が昨日、外に連れ出したから……」

 宙斗の顔が一気に青ざめる。

「それが直接の原因かはまだ分からない」

「……いつになったら、会えるようになるんですか?」

 宙斗が弱弱しい声で聞く。

「まだしばらくは会えない」

 それを聞いた宙斗がガクリと崩れ落ちる。

「直接は会えなくても、手紙くらいなら渡せるよ」

 宙斗がゆっくりと立ち上がった。



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