第5話

数週間後。

「「ガッキー、退院おめでとう!」」

 ガッキーが日常生活に支障がないくらいまでに回復したのだ。

「いや~、それにしても脅威的な早さの回復力だよな」

「うん、桂先生もびっくりしてたよ。普通は、もう一カ月は入院するものだって」

「でも、もう暫くはリハビリで病院に通わなくちゃなんないけど」

「でも、何はともあれ、これで緑ヶ丘高陸上部のゴールデンコンビ復活だな!」

「何だよ、それ、初めて聞いたよ」

「俺とお前のゴールデンコンビ♪」

「結成した覚えは全くないけど」

「俺の心の中だけで、絶賛営業中」

「何の営業だよ。……ていうか、俺は走り高跳びでお前はリレーなんだから、コンビ組めねえだろ」

「まあ、それはアレだ。アレでカバーだ」

「アレって何だよ」

 何かエンドレスで続きそうだ。

「あはははは……。二人とも面白ーい」

 千歳はこの二人のやり取りがツボになってしまった様だ。



 次の日。

「あーあ、ガッキーも遂に行っちゃったなあ……」

「あいつなら、大丈夫さ。きっと故郷に帰って来れる」

「故郷はここら辺だよね……」

 病室は千歳と宙斗の二人きりであった。

「でも、あいつには待ってくれている人が居るんだ……。彼女がな」

「そんな戦場に旅立ったみたいに言わないでよ」

「いや、学校もある意味、戦場だぞ」

「……どこが?」

 いきなり意味不明なことを言い出す宙斗。

「購買での焼きそばパン争奪戦とか、部活の時の大グラウンド争奪戦とかな」

「……平和的」

「そりゃそうだ。学校だしな」

「……私も高校生になりたかったな」

 千歳が少し寂しそうに呟く。

「……宙斗が学校で過ごしてるみたいに、普通に学校に行って、友達と話したり、帰りにコンビニに寄って買い食いしたり、ゲームセンターでプリクラを取ったりしてみたい……」

 千歳は、普通の女子高生になりたかった。

「……だったら、病気を治そう! 今すぐには無理かもしれないけど……なるべく早く治して、千歳がしたいことを思いっきり出来るようになろう! ……その時まで、俺はずっと待ってるから」

「……ありがとう」

 千歳にとって、宙斗の励ましは大きな心の支えになった。

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