あの桜の咲く四月に

夢水 四季

第1話

 ねえ、今日は何の本を読んでるの?

 ねえ、今日は何かいい事あった?


 僕は、いつもあの子に問い掛ける。

 でも、あの子は僕の問いには答えない。

 なぜなら、人間には僕の声は聞こえないから。

 僕はただの「桜」でしかないから。

 いや、桜そのものというよりは、桜の精といった方が正しいのかもしれない。

 僕は気付いた時には、ここにいた。

 そして、僕は長い間、この桜と共にここの土地の人間たちや様々な出来事を見てきた。

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