第34話 九州平定


六月某日


 秀吉は紀州に続いて、四国の反秀吉勢力長宗我部元親の討伐に十万の大軍で進軍、迎え撃つ長宗我部元親も四万の軍勢で待ち構える。



 秀吉は、四国侵攻を先鋒黒田孝高、次鋒に毛利照元など諸国の与力大名で三方面から総攻撃させ、一気に片付けるつもりだ…



 各方面で秀吉軍は勝利し、次々に城を落とし、追い込んだ長宗我部元親に降伏を求める。



長宗我部軍


 秀吉軍に追い込まれた長宗我部軍の軍義が緊迫する。



武将 谷忠澄

「秀吉軍を甘く見ていたようです」


長宗我部元親

「なんだと…」


谷忠澄

「このまま戦えば、元親様を守りきるのは不可能だと」


武将達がざわめく…


長宗我部元親

「…確かに、三国を取られ劣勢だ…だが、まだ負けた訳ではない!本国の土佐だけは守りきる」


谷忠澄

「土佐を守る為にも、降伏すべきです!」


長宗我部元親

「黙れ!忠澄、貴様それでも武士か恥をしれ!!」


 他の武将達から怒号を浴びせられる谷忠澄…


黙れぇー!!!!


    臆病者ぉー!!!


 死んでも主君を守れぇー!!


  貴様ぁー!敵の間者かぁー!!!


谷忠澄

「恥を忍んで言わせて貰います!敵は十万の大軍、こちらは二万に満たない軍勢です!」


長宗我部元親

「相手が何人だろうと土佐を守りきる!戦わずして負けを認めるなどあり得ん‼」


谷忠澄

「負けではありません!今は、一旦引いて次の為に力を蓄えるのです!!そのための降伏です!」


長宗我部元親

「貴様ぁー! 主君に恥を掻かすつもりかぁー!!腹を切れぇー!!切腹しろぉー!腰抜けがぁー!!!」


谷忠澄

「…分かりました、元親様が秀吉と和睦したのを見届けてからなら、いくらでも腹を切りましょう」


長宗我部元親

「やかましいーー!!!今すぐ腹を切れぇー!!」


谷忠澄

「元親様、私は命が惜しいのではありません! 皆も聞いてくれ!!

敵は武具も馬具も光り輝き兵士は勇ましく立派な馬に股がり兵量の心配もしないで戦える…それに比べて我らの兵士はどうだ…小さな土佐駒に股がり鎧もくたびれて兵量も僅か、籠城しても長くは持たない…」


討ち死にを覚悟していた武将達が押し黙る…


谷忠澄

「死ぬのは、今ではない!! 今は…長宗我部家再起のため降伏するべきだ…」



 谷忠澄の強硬な説得に、武将達の心が降伏に傾き、やがて軍義は長宗我部元親を武将達が説得して秀吉に降伏する事になる…




 秀吉は、長宗我部元親から伊予・讃岐・阿波の三国を取り上げたが、長宗我部家の本国土佐は元親の領土と認め、長宗我部元親を配下に取り込んだ。






九州平定


 もはや豊臣秀吉に逆らう者はいない…日本の乱世は終ると思われたが九州で、戦国の悪意が渦巻く。




 島津義久は、九州の各地を攻略や調略で次々に落として九州制覇を目前にしていた…


 島津義久の侵攻を怖れた九州の大名大友宗麟は日本の最大勢力である豊臣秀吉に救済を求める…


 大友宗麟の願いを聞き入れた秀吉は、朝廷権威を振りかざし関白の立場で両者の間に入り、停戦令を出し和睦要請をした。



豊臣秀吉

「島津は侵攻を止めないだろうから、毛利家と長宗我部家に出陣の要請をしといてくれ…」


 秀吉は、島津義久に侵攻した領土の全てを返還して和睦するように要請をしていた。


黒田官兵衛

「…最初から島津義久を討伐するつもりでしたか」


秀吉

「毛利と長宗我部の領土を増やして手懐けるためだ…」


黒田官兵衛

「…なるほど、例の件をそろそろ始めるのですね…」


秀吉

「俺は、まだまだこれからだ!」



 戦国の悪魔は、秀吉の尽きる事の無い欲望を喰らい、どす黒く渦巻く殺しの螺旋を激しく回す…





七月某日 筑前


 秀吉軍が来る前に、九州を制覇したい島津軍は、三万の兵で大友勢力の岩屋城を攻撃したが、岩屋城主高橋紹運の采配の前に何度も撃退された…


 高橋紹運は、秀吉軍が到着するまでの時間稼ぎとして、犠牲になる覚悟がある兵士で籠城し島津軍三万と戦う…




同日 立花山城


高橋紹運の嫡男

立花山城主 立花宗茂

「出陣だぁー!岩屋城に加勢するぞぉ!!!」


高橋家 家老

「なりません!!宗茂様は、この立花山城と弟君を死守して下さい!」


立花宗茂

「黙れ!!私に父上を見捨てろと言うのかぁー!」


高橋家 家老

「紹運様は、自分が犠牲になってでも宗茂様を守るつもりです!!」


立花宗茂

「秀吉軍が来ない以上、私が…私が父上を助けなければ…」


高橋家 家老

「いけません!!紹運様はそんな事を望んでません! 紹運様が命掛けで戦うのは、宗茂様あなたを守るため…その貴方が死地に飛び込んだらどれ程悲しむか… 貴方の父、高橋紹運様が命を懸けて望んでいるのは、宗茂様が立花山城と弟君を守る事です!」


 まだ十九才の宗茂は、胸が張り裂ける思いで、父の意思を受け入れる決断をする…


立花宗茂

「それが…父上の望みだと……ならば、この宗茂…どんな手段を使っても、必ず成し遂げて見せよう!」





八月某日


 岩屋城の戦闘は半月以上続いたが七百六十三人は全滅、高橋紹運が自刃して幕を閉じた…

 しかし、島津軍の兵士四千五百人以上を道連れにすると言う凄まじい戦闘能力を見せた、高橋紹運と命を投げ出して戦った家臣達は、秀吉軍到着までの時間稼ぎを成し遂げた。




 立花山城主で高橋紹運の嫡男立花宗茂は、無事に秀吉軍先発隊と合流…

 島津軍は被害が甚大なため部隊の立て直しを余儀なくされ撤退せざる終えなかった。





   【娯楽】


 秀吉のイクサは、戦闘から戦略ゲームのような物に変化していた、日本地図を眺めて戦略を立てる秀吉…




 すでに、九州に進軍している軍艦黒田官兵衛宛てに朱印状(公文書)を書く秀吉…



 〝やせ城どもの事は風に木の葉の散るごとくなすべき候〟



豊臣秀吉

「官兵衛が、これをどう読むか楽しみだな ハハッ」


 ほくそ笑む秀吉…今の秀吉には、このイクサで死んでいる沢山の人間の事など、蚊ほどにも感じていなかった…軍艦黒田官兵衛に宛てた歌の様な暗号の様な命令でイクサをボードゲームの様に楽しんでいる…


秀吉近臣

「黒田様なら、秀吉様の意に添って読まれるでしょう」


秀吉

「さて、どうなるか…見に行くとするか」



 秀吉は先発隊よりも、さらに大軍を率いて悠然と九州に進む…先発隊と合流すれば二十万以上の大軍になる。










谷忠澄Wikipedia

九州平定Wikipedia

豊臣秀吉Wikipedia参照

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