Battlefield Final Bullet

海色

軍事学校入学編

第一章一節 入学

プロローグ。彼の日記

「これが彼の日記です」

目の前の青年から一冊の本を手渡される。

辞書ほどにもなる厚く古い本。ページ一枚一枚は黄ばんでいたがどこも破けてはいなかったので『ソイツ』の綺麗な文字をスラスラと読むことが出来た。

懐かしい。この本を読むとあの頃を思い出す。どれ程の時間が経とうと忘れることのなかったあの頃が更に鮮明に頭に浮かび涙が溢れてくる。

「……ありがとう。この本を継いでいてくれて」

何年も前に別れたライバルの子孫。俺の一生で出会うとは思っていなかったので、少し動揺を隠しきれないがそれ以上にアイツの血が続いているという嬉しさが勝つ。

後でゆっくりと見るためペラペラとページを飛ばしながら見ていると、一枚の紙が日記の間からこぼれ落ちてきた。

「……これは」

床に落ちた紙を拾い上げて広げていく。

その紙には日記と同じ人が書いたであろう綺麗な字でメッセージが書いてあった。

その手紙の一番上の行を見るとそこには宛名が書いてあって、そこに書いてある名前を見るとまた俺は涙が溢れ出してしまった。


『…へ』








真夜中。数人の男達が資料を持って走りコンピュータを忙しなく操作していた。

「先輩、これどっちですか?」

「ああ、それはこっちの高校だ」

男はパソコンと睨み合いながら資料の山を指差す。

「え?ここでいいんですか?」

「ああ?何言ってんだお前。止まってないで早く動け」

指示をされた新人であろう男は手に抱える大量の資料を指示された通りに資料の山の上に重ねる。

合っているのか不安になりつつもこれ以上何かを言うと指示を出していたで上司であろう人にまた言われてしまうと考えすぐ次の作業へと移る。



「…ああ。ようやくひと段落か」

少し時間が経ってから、その上司であろう人は軽く伸びをしてふと先ほどの資料の山を眺める。

「…はあ?」

その山を見るとエアコンの風によって煽がれていることと元々不安定だったことにより今すぐにでも崩れそうだった。

「あの野郎ふざけんなよ!!」

上司はすぐに席を立ちその山へ向かって手を伸ばす。

……がしかしその手も届かずに山は崩れてしまった。


「だぁぁめんどくせぇぇ!!」


山に届かず虚空を掴んだ手を引っ込めることもせず、行き場を失ったまま怒りによって力が入り固く握りしめた。

今倒れたこの山は大切な書類だ。そして目の前ではふたつの種類の書類がごちゃ混ぜになっている。しかもこれの原因である新人は既に帰ってしまった。

「めんどくせえ…俺はいつ帰れるんだよ…」

上司はぼやきながらも少しずつ書類を分けていく。

しかし数百枚の書類を一人で、しかも夜照明が付いているとはいえ暗く見えづらい視界の中で完璧に分けることなど不可能だ。だから上司は二枚の紙が本来の居場所とは別の場所にいることに気がつかなかった……



「よし、終わったぞ…ようやく帰ることが出来る」

一時間ほど経過すると、崩れた山があったところには二つの山が立っていた。

残業の先のトラブルが終わり、遂に仕事から解放される上司は照明を消しその場を去った………



今、日本はとある国と戦争をしている。

といっても大々的なものではなく、裏で密かに行われている。

一応日本は平和主義というものを掲げているため、そういうことは言えないのだ。

戦争を繰り広げている相手はエネミリア。世界を脅かす武装国家だ。

密かに行われているとはいえかれこれ十年ほど戦争は続いており被害は甚大で、人手も武装も何もかもが足りていないのが日本の現状だ。そこで、日本は軍人の育成を始めた。

それが軍事学校。現在日本には東、西、北、南、中央に5つの軍事学校がある。

この軍事学校は国民には一般的な普通科の高校と知られているが、ホームページどころか入学する方法すらわからない。

入学の方法はただひとつ。国からの招待だ。

軍人の家の子供。または国が直接選んだ有望な子供を軍事学校へ招待して入学させた。


この物語は一切の招待を受けず軍事高校に招かれることのなかった少年。霊継風斗と、天才的な技術を持ち将来有望ながら一般の高校へ行ってしまった不運な少女。水凪弥生の二人が繰り広げる怒りと悲しみ、そして喜び渦巻く血戦の話だ……


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