廃材たちは終末世界で泣き叫ぶ

灰人

幻想

 花畑にいた。

 

 それはもう昔々に絵本の中に夢想した風景のように、ぼんやりとしかしはっきり僕はそこに立っていた。


 僕はそこで少し前に流行った歌を口ずさみながら、何かを待つようにふらふらと彷徨っている。


 やがて何かが見えてきた。いやそれは何かというより誰か、と言い換えるべきだったか。


 歩みを進めると、そこには小さい少女が花を編んでいた。手先が器用なようで、見る間に色とりどりの花冠が出来上がった。


 おそらく完成したのだろう、一息つくように花冠を地面に置き、こちらを見た。


 こっちを見た。


 その白く、黄色がかった目に捉えられた僕の心臓は締め付けられどくんどくんと波打った。


 少女は一旦地面に置いたはずの花冠を手に持ち、こちらに向かってくる。その足取りはまるで天使のようで…


 しかし、少女がまた一歩踏み出した瞬間地面がぐわりと歪んだ。黒い現実が蝕んでくる。歪む。夢が覚めるーー

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