第17話 闘いの儀!ぶつかりあう魂!
「嫌なことがあっても全部忘れて何度でもやり直したらいいんですよ♡」
確かにフレシアちゃんの提案は魅力的だ。だが・・・俺は自分のデッキを見つめる。この一見何の変哲もない紙のカード達は俺の人生のすべて。こいつらと共に数々の
「フレシアちゃん・・・君の提案は断る。俺はこいつらを忘れてデュエリストをやり直すなんて御免だ。つらいことはたくさんあったけど今までの俺の人生を無意味にしたくない」
「そうですか・・・でも、今のマスターかっこいいですよ♡」
「・・・・・ありがとう」
これからもこいつらを信じて戦う。俺みたいなクズ野郎とも一緒にいてくれるかけがえのない仲間達と・・・・・
「おい!ここはどこなんだ!?」
真っ白な空間にいつのまにか男がいた。静寂に満ちていたこの空間に男の怒声が反響した。
その男は黒いスーツをだらしなく着ていてやや弛めにネクタイを締めていた。その男は廃人のようにくたびれていて栄養失調なのか体は痩せ細っていて顔つきもげっそりしていた。
その男は「俺」だった。
「どうやら君の記憶の封印を解いたことで眠っていた彼の意識が目覚めたようだな」
「・・・どういうことだ?」
「さっきも言ったが君の記憶は負の感情と共に分離された。彼は君の負の感情が分離して発現した人格。いわば闇の人格とでも言おうか」
「そうか・・・・・つまり俺の嫌な記憶を引き受けて肩代わりしてくれてるってことか」
だからこそ「俺」はあんなに苦しそうなんだろう。俺が異世界に転生して15年の間「俺」は負の感情に囚われていた。
「彼を眠らせるのは簡単だが負の感情に支配されていることに変わりはない。このままでは彼は永遠にここに幽閉されることになる。どこかに転生させる訳にもいかないしな」
「そんな・・・じゃああいつは一生ここで苦しみ続けるってことかよ!?俺が自分の嫌な記憶を押し付けたせいで・・・」
「そういうことになるな」
「何か・・・奴を開放することはできないのか?」
「君の負の感情はデュエルに起因するものだ。極限のデュエルをし続けた彼の魂を開放するにはデュエルで築き上げてきた矛をデュエルで収めるしかない」
「つまり俺がデュエルで勝てばあいつを救ってやれるってことだな!?」
「確かにその通りだが・・・彼の憎悪は極地に到達している。このデュエルはおそらく君の想像を超えた過酷なデュエルになることだろう」
「だとしても、俺がやらなきゃいけない!あいつを見捨てて異世界に戻ったらきっと後悔する!俺はもう諦めたくないんだ!!
そしてこのデュエルで俺が異世界でやってきたことは決して無意味なんかじゃないって証明してみせる!!」
「そこまで覚悟があるならもう何も言わない。君がどこまで成長したか見届けさせてもらう」
「ああ、皆のおかげで強くなった俺をよく見とけよおっさん!絶対『俺』に勝ってやるぜ!」
俺は今も出口を探して彷徨っている『俺』に近づく。奴も気づいて俺にすがりついてくる。
「おいあんた!出口教えてくれ!」
俺は不敵に笑いながら「俺」に語り掛ける。
「俺とデュエルして勝ったら教えてやるよ」
「そうか・・・お前が『俺』をここに閉じ込めてるんだな・・・ぶっ潰してやるぜ」
こうやって挑発すれば「俺」はデュエルするしかないよな。
俺たちは互いにデッキを構える。この空間でも異世界と同じくモンスターの実体化が可能なのか?『俺』は距離をとってモンスターを出すスペースを空けていた。
おっさんとフレシアちゃんも俺たちのデュエルを観戦しに来た。どうやらこのデュエルの決着が気になるらしい。なら存分に見せてやるぜ!これが俺の生き様だ!
さぁそろそろ始めようか!俺たちの、「闘いの儀」を!
「「デュエル!!」」
真っ白だった空間が徐々に闇に包まれてきた。どうやら「俺」の陰の気がこの空間を占拠しているようだ。邪悪なオーラをまとった「俺」は一体どんなデュエルをするのか・・・
「俺のターン!モンスターを裏側守備表示でセット!さらにカードを一枚伏せてターンエンドだ」
まずは手堅く様子見か。「俺」は慎重にデュエルを進める気らしい。そうだ、「俺」はたとえ絶望の淵にいようと決して冷静さを失わずに勝利を得る最善手を模索するデュエルをしていた。
「俺のターンドロー!《
「俺」のフィールドには裏側守備表示のモンスターが一体・・・一番に警戒しなければいけないのはリバース効果を持ったモンスター。リバース効果はモンスターが表になった時に発動する効果で裏守備で攻撃された場合でも発動する。だがこのまま手をこまねいていても次の「俺」のターンには反転召喚で表になってしまう。ならここは・・・
「バトル!マリンナイトでセットモンスターを攻撃!」
裏になっていたカードが表になって中からモンスターが飛び出す。これは・・・!
「表になった《虹彩騎士ースパークナイト》の効果発動!デッキから《虹彩騎士》モンスターを2体墓地に送る。俺は《虹彩騎士ーダークナイト》、《虹彩騎士ーフレアナイト》を墓地に送る」
「俺」のデッキも《虹彩騎士》デッキだと言うのか・・・。つまりこのデュエルは互いに同じデッキを使うミラーマッチということか。
「さらに相手に500ポイントのダメージを与える!」
スパークナイトは剣を閃かせ衝撃波で俺に攻撃する。
ユーグLP4000→3500
ぐっ・・・なんだこの痛みは・・・普段のデュエルじゃ人を傷つけることがないようにモンスターの攻撃を調整しているが、「俺」はそんな躊躇は一切しないようだ。まぁ当然か・・・「俺」にしてみれば俺は倒すべき敵だしな。
マリンナイトの攻撃力は1700でスパークナイトの守備力は1500。この攻撃でスパークナイトを倒すことに成功するが守備モンスターを攻撃してもダメージは与えられない。「俺」へのダメージは0だ。
「俺はカードを一枚伏せてターンエンドだ」
確かにこのデュエルはおっさんが言っていた通り過酷なものになりそうだ・・・。目の前の「俺」は憎悪を糧に俺に牙を剝いてくる。このデュエルは正真正銘命を賭けた「闇のゲーム」になりそうだ。
だが俺は内心わくわくしていた。だって目の前にいるのは他でもない「俺」なんだ!自分と本気でデュエルなんて経験をしてる奴は他にいないはずだ!
さぁかかってこい「俺」!俺にすべてのデュエリスト魂をぶつけてこい!
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