第6話 恩返しデュエル!感謝の気持ちはカードで語れ

 いよいよデュエルスクール卒業まで残り数日に迫った。授業はすべて終わったし課題もすべて終わらせた。卒業生は自分でタイトルを決めてレポートを提出することが義務づけられていた。俺は『「こいつ、できる!」と言わせるデュエル哲学』というタイトルでレポートを書いて先生方から評価をうけた。成績も問題ないし卒業するには何の障害もない。

 だが、俺にはまだやらなきゃならないことが一つある。

「よろしくお願いします、クロス先生」

「こちらこそよろしく。君の成長この目で見届けさせてもらうよ」

これは卒業生の代表が在校生に模範を示すために行われるデュエル。大抵は卒業生同士か在校生とデュエルすることになっているが、相手に規定はないので俺はクロス先生を指名した。

 クロス先生とはこの学校に入学してからの付き合いだ。第二の人生を与えられた俺にデッキをくれて、デュエルの基礎と極意を教えてくれて、エリアルの件でも助けてくれて、進路についても相談に乗ってくれた。俺はこの人に恩返しをしなければ気が済まない。クロス先生は間違いなく俺に道を示してくれた恩師なのだ。の世界じゃ恩師なんて呼べる先生なんて一人も出会えなかったしな。もっと先生方に心を開いていればドロップアウトなんかしないで順風満帆な人生を歩んでいたかもしれないけど・・・まぁ今更そんなこと後悔しても仕方ない。今までの感謝を込めて最高のデュエルでフィナーレを彩るぜ!

 このデュエルは学校の中にある大聖堂のようなきらびやかな空間で行われた。中は広くて観覧席もあり60人いる全校生徒が席についてもまだ余裕がある。まるで神聖な儀式を執り行うような所でデュエルスクールのラストデュエルが始まる!

「先攻後攻はどうします?」

「君が決めていいよ」

「じゃあ、先攻を取らせてもらいます」

「ほう、君のパワーデッキなら先に戦闘を仕掛けられる後攻を選んでくると思っていたよ」

確かにいつもの俺なら後攻を選ぶところだろう。だがこのデュエルは・・

「「デュエル!!」」

「僕のターン!永続魔法 《珠玉竜の血統》を発動!これにより1ターンに1度手札のレベル4以下の《珠玉竜》モンスターを特殊召喚します。《珠玉竜ーシャイニング》を特殊召喚!シャイニングの効果発動!召喚、特殊召喚に成功した時、デッキから《珠玉竜》モンスターを手札に加えます。《珠玉竜ーパーフェクトダイヤ》を手札に加えます。さらにシャイニングをリリースしてパーフェクトダイヤをアドバンス召喚!パーフェクトダイヤはレベル7ですが、《珠玉竜》1体をリリースしてアドバンス召喚できます。僕はカードを二枚伏せてターンエンドです」

「いきなり最上級モンスターを召喚してきたか」

「ええ、先生には僕の全力を見てほしいです」

「それはありがたい。私のターン、ドロー!私はカードを4枚伏せる。さらに魔法カード《苦渋の宝札》発動!このターンモンスターの召喚、特殊召喚はできないがデッキから2枚ドローする。さらに1枚カードを伏せてターンエンド」

クロス先生のデッキは「トラップデッキ」。罠カードはモンスターの召喚時や攻撃時に発動する。すでに召喚されているモンスターには発動できない物も多いので先攻で強力モンスターを出してテンポをとった。そして罠カードはセットしたターンには発動できないので後攻だと発動が遅れる。だからあえて先攻をとった。だが罠デッキの弱点はクロス先生も熟知している。この程度で攻略したとは言えない。このターンからが本当の勝負だ。

「僕のターン、ドロー!」

クロス先生の伏せカードは5枚。このトラップ地獄を潜り抜けるにはやはりが必要か・・・。

「僕は《珠玉竜ールビー》を召喚!」

「この瞬間罠カード《迷宮の落とし穴》発動!召喚された相手モンスターを破壊し手札の魔法、罠カードをフィールドにセットする」

「僕は伏せてあった速攻魔法 《珠玉竜の転生》を発動!このカードは場の《珠玉竜》モンスターをリリースして墓地の《珠玉竜》を特殊召喚できます。ルビーをリリースして墓地のシャイニングを特殊召喚する!これで《迷宮の落とし穴》は不発に終わりますね。モンスターが破壊できなければ罠をセットする効果も使えない」

「ほう、うまくかわしてきたね。さすがユーグ」

「さらにシャイニングの効果発動!デッキから《珠玉竜ーコバルト》を手札に加える。そして《珠玉竜の血統》の効果発動!手札からコバルトを特殊召喚!」

《珠玉竜ーコバルト》には《珠玉竜》モンスターの攻撃時の相手の魔法、罠カードの発動を封じる効果がある。これで罠カードで攻撃を凌ぐこともできないはず・・。

「君がコバルトの召喚を狙っていることはわかっていたよ。罠カード《迷宮の彼方》発動!召喚された相手モンスターを除外する!」

 コバルトがゲームから除外されフィールドから姿を消した。除外されると復活させる手段は少ない。これで罠デッキ対策のコバルトは封印され切り札を失った。《迷宮》罠は自分のフィールドにモンスターがいない場合のみ発動が可能な罠。このカード群の発動条件を満たすためにクロス先生はあえてモンスターを出さない戦術をとっている。

 クロス先生の伏せカードは残り3枚。俺のフィールドのシャイニングの攻撃力は1500、パーフェクトダイヤは2500。もし2体の攻撃が成功すれば4000ダメージを与えてこのデュエルに勝てる。だが先生が罠をセットする段階から俺のフィールドにはパーフェクトダイヤがいた。残りの罠にはおそらくパーフェクトダイヤに対抗できるカードがあるはず。だが、ここで攻撃を躊躇してたらこのデュエルに勝てる見込みはなくなる。いたずらに時間を稼いでも先生に罠をセットさせるチャンスを与えてしまうことになる。なら、ここは臆さずに攻める!

「バトル!パーフェクトダイヤで直接攻撃ダイレクトアタック!」

「・・・くっ!」


クロスLP4000→1500


パーフェクトダイヤのブレスがクロス先生に直撃した。攻撃が通った!次の攻撃が決まれば俺の勝ちだ!

「この瞬間罠発動!《対峙する迷宮の番人》!このカードは直接攻撃を受けた時、《迷宮》罠を含む罠カードを手札、墓地から3枚除外することでデッキから《迷宮の番人ーデビルガーディアン》を特殊召喚できる!墓地の《迷宮の落とし穴》、《迷宮の彼方》、フィールドの《迷宮の影》を除外してデビルガーディアンを特殊召喚する!」

フィールドに巨大な門が出現し、中から大鎌を持った面妖な姿のモンスターが現れた。《迷宮の番人ーデビルガーディアン》。これがクロス先生の切り札、罠デッキの弱点であるフィニッシャー不足を補うカード、俺の前に対峙する最大の壁・・・!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る