第12話



鳥羽と土御門の母子を見てみるが、苦虫を嚙み潰したような表情を両者ともに浮かべている。


なるほど自分たちが持っていた有効なカードを、敵プレイヤーに勝手に使われてしまったと言った所だろうか? 将棋が好きだった俺も使いたい時に使いたい駒がない事や、今生で始めたトレーディングカードゲームで、こちらがしたい行動を未然に封じられた時は悔しさを感じた。


「見ての通り我が娘は、祖である安倍晴明の母である神の使い。葛の葉様の特徴を色濃く受け継いだ先祖返り……世が世であれば狐憑きや生成りと呼ばれ、迫害の対象であったであろうがコレは吉報である!」


と力強く演説する。


「皆も肌で感じたであろう? この莫大な呪力をッ! この呪力があろうとも協力が無ければ祓えないほどの災いに対抗する切りジョーカーになる。そして私は優秀な陰陽師の子弟を探す事にした才あらば用いる! 共にこの国難を乗り切るために協力してほしい!!」


そう言うと俺に手を差し伸べる。


「この土御門家分家の少年春明君の目は、真実を見抜くほど優れた見鬼の才と呪術の才を持っている現に、倉橋家が雇っている護衛の術者の隠形を見破った程の高い眼力を持っている。他家の者でも構わない是非力を貸してほしい!」


俺を出汁にして自分の一派の者でなくても重用すると言う、前例を作りつつ他家と言う言葉でカモフラージュして、鳥羽と土御門家を牽制しやがった。


このまま倉橋に喋らせ続けると、コレからの主導権さえも奪われかねない。


「土御門春明は当家の人間です勝手な勧誘行為はやめて頂きたい」


土御門家当主が声を上げた。

傍らには先ほどご挨拶した夫人が侍っており夫人の意見であろうと推察できる。


「全く持ってその通りです。我が鳥羽家も彼の能力を買っています今この場で決めさせると言うのは、酷なことではないでしょうか?」


こちらに視線を向け、そのまま意見を述べる。


「我が家でも同じような予言がされており、災いに対処するため真偽を調査しつつ可能な限り対策を立てていました……お聞きしたいのですが、倉橋家はいつから災いの事を知っていたのでしょうか?」


「七年ほど前だ」


「七年間も秘匿していたという事ですか?」


倉橋家にとっていつから予言の事を知っているか? という事は今はつつかれたくない急所となる。


「それは鳥羽や土御門とて程度の差は有れども、数年前からその災いの予言を知っていた。それを黙っていたのはあなた方も同じハズ。どうして私だけが責められるのだろうか?」


「……」


「我々土御門は、過度な混乱を招かぬようにと事実確認をしつつ。もし予言が真実であった場合に備えて行動していたまでの事」


お互いに主導権を譲るつもりはないようだ。


「では土御門、鳥羽が把握している予言の子の候補者を共有したいのだが異論はあるだろうか?」


「ありません」


「こちらも異存は無い」


お互いの顔色を窺いながら言葉を交わす。


「それでは今後の動向について話し合いたいと思う。まずは土御門家にお願いしたい事がある」

「何でしょうか?」


土御門家としては多少身を斬ってでも、呪術世界に貢献したと言う実績が欲しいと言ったとこか。


「我が娘は見ての通り祖霊葛の葉の血を色濃く受け継いでいるため、強力な呪術を行使する事ができる。しかしまだ幼い故、我が屋敷には写本ばかりで葛の葉様に関係する文献が乏しいのだ。そこで土御門家の書架へ入る事と我が娘に妖狐の術をご教授願いたい」


「承りました。それともう一つ、我々の方からも提案があります。この災いに対する備えとして、我ら土御門・倉橋・鳥羽の三家で同盟を結びませんか?  幸いにも我々は陰陽道における宗家の血筋であります。また分家とはいえ同じ血筋を持つ者どうしで連携を図るのも悪くないでしょう」


「良いだろう」


「構いませぬ」


と、倉橋、鳥羽家両名が了承する。


陰陽師の三国同盟と言ったところだろうか?


「倉橋には民に紛れている優秀な術師の捜索をお願いしたい」


「あいわかった」


気休め程度だが、突然変異的に強力な術者が生まれる事もあるので正しい判断だ。


「我々鳥羽……賀茂家としては陰陽三家の連携の他に神道系、仏教系、一神教への協力を要請した方が良いかと思いますが……」


「協議の上そのようにしよう」


「そうですね」


「私から一つよろしいでしょうか?」


そう言ったのは鳥羽家当主であった。


「何でしょうか?」


「我が娘も倉橋殿と同じように祖たる神霊……日の精である賀茂建角身命かもたけつのみのみことの神通力を持っています」


「なんと!」

「それは誠か!」


――――と周囲の術者達が感嘆の声を漏らす。

 ただの御先神程度とは訳が違う、本物の神霊の神通力の一端でも行使できる存在と比べてしまえば、一枚も二枚も格が落ちてしまう。


「遅ればせながら我が土御門家の次期当主ユリも祖である葛の葉様と同じお力を持っています」


「なんと!」

「それは誠か!」


「運命の御子が三人も!」

「これはめでたい」

「吉報だ」


などと騒いでいる。


そうコレが俺達四人が出会った日の事だった。




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『あとがき』


 読んでいただきありがとうございます。

 本日から中編七作を連載開始しております。

 その中から一番評価された作品を連載しようと思っているのでよろしくお願いします。

【中編リンク】https://kakuyomu.jp/users/a2kimasa/collections/16818093076070917291


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