第24話⁂悪魔の要塞⁂


 

 不思議な青く輝く「氷の洞窟」が見えて来た。

 その洞窟を潜り抜けると……そこには、今までとは違った別の氷の世界が広がっていた。

 

 そこは……一歩足を踏み入れると、まるで別世界に迷い込んだかのような神秘的な光景が広がっている。 青色以外の光を通さない氷の洞窟は混じり気のないまさに“スーパーブルー”である

 氷河から放たれる、まるでLEDのような青い輝き。この美しさは神のなせる業なのか?


 そして…更に、洞窟の中に入ると細長い青く輝く氷のトンネルが有った。


 そのトンネルの端々には混じり気のないまさに“スーパーブルー”の青が光り、次には淡い紫色が幻想的に光を放っている。そして……その次には鮮やかな緑が通路を照らしている、なんと美しい事か!そう思って見入っていると今度は隙間から、雪の華が舞い降りて来た。


 紫の光が差し✨薄っすらパープルを帯びた銀色の雪の華が、一層美しく神秘的だ。



 するとその時、氷のトンネルの先に、氷のお城が現れた。

「ワァ————————ッ!キレイ!」


 その城はまさに神秘的な、冷たく輝く氷のクリスタル城だった。

 豪華でキラキラしていてシンデレラ城の様な外観。

 そして…あちらこちらにぽっかり薄灯りが灯っている。


 お城の中に侵入すると、天井からしみ出した水滴が凍ってできた氷柱(つらら)に覆われた神秘的な空間が広がっていた。

 氷のつららで出来たゴージャス極まりないシャンデリアが、至る所に青い光を放ち、一層華やかさを演出してくれている。




 そう思って……暫く……うっとり……その“スーパーブルー”に輝く、ゴージャス極まりないシャンデリアを眺めていると、その時……先ほどの、この世の物とは思えない美しい女性が現れ……そして、話しかけてくれた。


 「わたくしはこの氷の国の女王ビイチです。そなたの名は存ぜませぬが?何故この国にやって来たのですか?」


「ああ……私は海底の奥底に住むアクアの世界の魔女に会いに来たのです。聞いた話によると、その魔女に会って頼み込めば自分の望みが叶えられると聞いてやって来たのです。ですが…来る途中で海の恐竜たちに襲われて酷い目に合い、気が付いたらこの氷の国に着いていたのです」


「そうでしたか?それは大変でしたね」



「ああああ……その魔女が住んでいるアクアの世界に行くには、どうしたら良いのでしょうか?」


「それより……そなた……この氷の国に来る為には、噴水が幾重にも連なった水のトンネルを通りませんでしたか?」


「あっ確かに水のトンネルを通ってやって来ました」


「じゃ~その方法とは、どのようなものだったのですか?」


「実は……恐ろしい恐竜に襲われて命絶えそうになったので、思わず手に持っていたこの美しい御所車や古典四季花柄の艶やかな桜や牡丹、菊などの和花柄を贅沢にあしらった金色の扇子を、思い切り恐竜目掛けて振り下ろしたのです。すると……その時恐ろしい事に、巨大な水の塊が凄い爆音と共に、ドッドドドドドドドドド——————ッ!バッキュ~ン、ゴウゴウ、ドッカ-—————ン!と音を立て激しい水しぶきとなり、巨大な竜巻が起こり、やがて…海が割れたようになり巨大な洪水のトンネルが出来、するとあの巨大な恐竜たちは一気に竜巻きに飲まれザッブ~~ン、ピッシャ~~ン、ドッボ~ン海流に打ち付けられて、私の周りには一匹たりとも居なくなってしまったのです。そして…美しい噴水?水?の巨大なトンネルが延々と広がっていたので、実は…どうしようか悩んだのですが、この不思議なトンネルの先には一体何が広がっているのか見て見たくなり、危険も顧みず来てしまったのです」


「そうだったのですか?ああ……実は…その噂の魔女は、あくまでも噂。わたくしにそなたの望みを言ってくれませんか?」


「そう言いましても……見ず知らずの……今日会ったばかりの女王様に……私の望みを言っても仕方のない事」


「そなた……わたくしが信用できぬのか?……そんなに信用できぬのなら直ちにこの城を去るが良い!」


「イエイエ信用できないとは申しておりません。タダ?何が起こるか分からないので?」


「安心なされ。その望みとやらを言うてみい!」


「……実は…私は〈ジャイアント プラント王国〉大蛇の国のベニ-王に結婚を申し込まれているのです。ですが、本当は醜い頭が二つの大蛇なのです。この扇子のお陰で自由自在に変身できるようになったのですが、興奮するとすぐ本来の醜い姿に戻ってしまうのです。だから永遠の美を手に入れたいのです」


「何を言っておる?そなたは何とも美しい宝石のような蛇なのだが、ホ~レ自分の姿をこの氷の鏡に移して見なさい」。


「エエエエエエ————ッ!これは一体どういう事?」


 静蘭は世にも美しい蛇〈サンフランシスコ・ガータースネーク〉に瓜二つの巨大な大蛇に変身していた。


「エエエエエエ————ッ!ついさっきまでは、醜い頭が二つの大蛇だったのに一体どうして?……あちらこちらに湖や氷が張り巡らされているので、今日も嫌と言う程自分の醜い姿を見て来たと言うのに???」


「そのおぬしが言っていた海底深くに存在するアクアの世界の魔女だが、私が知っている限りそんな魔女など存在せぬ。誰に聞いたか知らぬが?おぬしは騙されておる」


「それでも…こんな美しい〈サンフランシスコ・ガータースネーク〉に瓜二つの巨大な蛇に変身できたので感激です」


 こうして…氷の国の女王ビイチの計らいで、しばらく滞在して元の醜い姿に戻らないか様子を伺う事にした。


 何とも心優しい女王ビイチの計らいで、この氷の国に暫く滞在した静蘭だったが、二ヶ月経っても三ヶ月経っても美しい姿が元に戻ってしまうことはなかった。


 何とも有りがたい話だ。

 感激した静蘭は氷の国の女王ビイチに救われ感謝感激。こうして十分にお礼を言って帰路に着いた。


 ◆▽◆


 だが……あの美しい氷の国はある日を境に、一瞬にして世にも恐ろしい真っ暗闇の朽ち果てた、悪魔の要塞に変貌していた。


 これは一体どういう事?


 そして…静蘭を美しい大蛇に変身させてくれた、あの美しい女王ビイチの姿は跡形もなく消えていた。

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