第35話
———ルドリートと清華達が邂逅していた頃。
「はぁああああ!!」
俺は自身に迫り来るゴブリンジェネラル5体を一気に切り飛ばす。
既に俺の周りには何十体もの異世界のモンスターの死体が転がっているが、依然として俺の前には数は減っているものの、強力なモンスターが迫って来ていた。
『おおーー! 大量だ! まるでモンスターの宝石箱だ!』
「お前どっからそんなネタを覚えてくるんだよ……と言うか宝石箱じゃなくてパンドラボックスだろ」
『良いじゃないか主よ。我も久しぶりの戦闘なのだ。血が滾ると言うものよ』
そう言うカーラの体には血は流れてないだろ、とツッコみたいところだが、今はそんな冗談を言っている状態ではない。
雑魚が減って行くにつれて、B級以上のモンスターだけが残り、一体を倒すのに大分時間が掛かるようになった。
既に俺は【身体強化:Ⅸ】まで使っているが、もう体が限界寸前である。
「ガァアアアアアア!!」
「チッ……邪魔だ!」
俺は飛び掛かってきたキングウルフに横薙ぎを繰り出すが、流石A級中位なだけあり、怪我はしても死にはしなかった。
それどころか後ろからキングゴブリンが棍棒を振り下ろしてくる。
『後ろだ主!』
「分かって……るわ!!」
俺は空中で1回転した棍棒を避けると、そのままの姿勢でキングゴブリンの脳天目掛けてカーラを振り下ろす。
ズシャアアアア!!
ゴブリンキングは頭から下まで綺麗に真っ二つになって灰になった。
しかし休憩する時間はない。
「シネ、ニンゲン!!」
「お前がなッ!」
オーガジェネラルが拳を振り抜く。
その威力はA級冒険者でも重傷を負う程なので、俺は拳に剣を滑らせて受け流し、駆け抜けざまに上半身と下半身を一刀両断。
カーラの切れ味は凄まじく、まるでバターの様にスパッと斬れた。
「よし、次———ん?」
俺は次の攻撃に備えて剣を構えると、気付けば目の前のモンスターが全て消えていた。
「……どう言う事だ……? あの一瞬で何があった?」
『我も分からない。ただ……この気配は……』
「ああ……この気配はアイツしか居ないだろうな……」
異世界では同じA級でありながら、別格のモンスターが存在していた。
しかし1番の特徴は———生命の魂を喰らうと言う能力だ。
そいつの名前は———
「———ソウルイーター……!」
俺が異世界で一度殺された相手でもある、謂わば天敵とも言えるモンスターだ。
『キヒヒヒヒヒヒ……!』
「相変わらずキショい声出しやがって。お前とは戦いたくないんだよ」
今の俺の顔はきっと苦々しい表情となっているだろう。
なんたって俺が5回殺された内の一体だしな。
『主……アイツは我も嫌いだ。とっとと殺そう』
「そうだな。よし———はっ!!」
俺は瞬きの間に一蹴りでソウルイーターの元に接近する。
まだソウルイーターは俺の元いた場所を見ており、気付いていない様子。
俺はそのまま破壊剣をソウルイーターに振るう。
ヒュッと言う風切り音と共にソウルイーターを真っ二つにし、風圧が辺りを吹き飛ばす。
しかし———
『キヒヒヒヒヒヒッッ!!』
俺の攻撃はまるで全く効いていないかの様に再生してそのまま俺へと触手みたいな物を飛ばしてくる。
「チッ……やっぱり駄目か……」
俺は舌打ちをしながらも、触手は受けずに
この触手によってダメージを受けるのは体ではなく、精神の方なので、あれに当たれば感知が解除してしまうのだ。
『不味いぞ主。このままでは我らが負ける!』
「そんな事は分かってる! 後少し待て!!」
俺はカーラと会話をしながら必死に当たらない様に避けて行く。
それを続ける事20秒。
遂にその時がやってきた。
俺の体でカチッと何かが綺麗にハマる音がした様な気がした。
よし、行ける———ッッ!!
『キヒヒヒヒヒヒヒッッ!! キヒヒヒヒヒヒヒ!』
「その余裕そうな顔に大きいのをお見舞いしてやるよッッ! ———【身体強化:Ⅹ】」
その瞬間に俺の周りにあった触手が吹き飛び、その代わりに俺の体から溢れる白銀のオーラがユラユラと揺蕩う。
更に瞳は完全な銀色へと変わり、雷紋は全身へと回る。
『キ、キヒヒッ、キヒヒヒッッ!!』
ソウルイーターは声では笑っているものの、顔は醜く歪んで警戒の表情を浮かべていた。
全ての触手を自身の体の周りに集めて防御体勢を取ったソウルイーター向かって、俺は軽く地面を一蹴り。
『ヒュッ———ッッ!!』と言う細く短い風切り音が鳴った頃には既に戦いは終わっていた。
「——————【瞬閃】……」
その瞬間にソウルイーターは灰の様に粉々になって消えていった。
「……ふぅ……体が痛え……でも後少しの辛抱だ……!」
俺はボロボロの体に鞭を打って全力で学園に戻る。
此処から学園までをほんの十数秒で移動した俺の目の前に広がっていたのは、そこそこ強そうな気配を纏った者が瀕死になっている所と、今にも殺されそうな清華と優奈の姿だった。
その瞬間に何かが途切れる音がした。
そして気付けば口から言葉が出ていた。
「2人を殺す? ———そんな事は俺が絶対にさせない」
もう2度と誰も失うものか。
俺にはそれなりの力がある。
この力で今度は俺が守ってみせる———ッ!
「———遅れてごめん……でも後は任せてくれ」
俺はボロボロな2人から視線を殺意を込めてこの惨状を作り出した張本人へと向ける。
「お前は許されない事を犯した。覚悟しておけ——ルドリート」
絶対にお前は許さない。
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