チートを貰えなかった落第勇者の帰還〜俺だけ能力(スキル)を引き継いで現代最強〜

あおぞら

プロローグ① 落ちこぼれの勇者

 突然だが、ファンタジー好きであろう皆に質問がある。


 もし異世界にクラス転移をして勇者になれるなら行ってみたいか?

 勿論チートは貰えると神様直々にお言葉があるとしてだ。

 更には召喚された元では丁重に扱って貰えるとも約束されているなら?


 きっとチートを貰えると言うなら、ファンタジー好きなら殆どの人が行ってみたいと思うだろう。

 だってチートスキルを貰えるなら余程のことがない限り死ぬ事はないのは間違い無いからな。

 それに神から直々に約束されるんだし。

 

 さぞかし沢山の候補者が上がるだろう。


 因みに俺―――藍坂隼人あいざかはやとの答えは簡単。

 


 


 ―――異世界転移なんてクソ喰らえだ。




 

 これは実際に異世界転移を体験し、10年の月日を異世界で過ごした俺の率直な意見である。

 








 高校2年生の夏休み前、俺たちがいつも通りの学校生活を送っていると、突然教室の床に教室を覆う程の大きさの魔法陣が現れた。


「な、何だよこれ!?」

「に、逃げようぜっ!!」


 クラスの素行の悪いメンバーが教室の扉から外に出ようとするが、その前に魔法陣が光り輝き、俺達は意識を失った。


 そして意識を取り戻した時には、何も無い真っ白な部屋で、機械の様に感情が見えない女神の様な人に、魔王によって滅ぼされそうな異世界へと、チートスキルを貰うと言う約束で異世界転移をさせられると説明がされた。

 初めは嫌だと言う人もいたが、帰るには魔王を倒す以外に方法はないと言われ、結局全員が了承すると、またもや俺達は意識を失ってしまった。


 そして異世界に召喚されて意識が戻ると、目の前には如何にも王様っぽい王冠を被った男や煌びやかなドレスを見に纏った王女が1番に目に入る。

 その後に護衛の騎士がいて、『ラノベまんまだなぁ』と思ったのを覚えている。


 暫くして皆んなが起きると、この世界の現状を詳しく説明された。


 どうやらこの世界には魔王がいるらしく、人間種は魔王の軍勢に押されてどんどん生活圏を奪われているらしい。

 そこで俺達異世界人が勇者として転移させられる運びになったんだと。


 その話を聞かされた時の俺は浮かれに浮かれまくっていた。

 まぁ当時異世界ラノベオタクだった俺からしたら、夢のようなシチュエーションだったからな。


 王の話が終わると、王女が水晶みたいな魔道具を取り出して、1人1人スキルを調べ始めた。

 始めは俺の親友の天野光輝あまのこうきだ。


 こいつはマジで主人公みたいな奴だ。

 俺の幼馴染なのだが、イケメンで男女誰にでも優しく、文武両道で王子様系イケメンを地で行くような男だ。

 俺は勿論の事、男子からの信頼も厚く、女子には勿論モテモテ。

 そんな光輝は、学園一の美少女や美女系生徒会長など、まさにラノベのような属性を持った美少女達から好意を寄せられている。

 まぁ学園一の美少女は2人居るんだけど、その片割れが光輝の幼馴染って訳だ。

 もう片方は珍しい事に光輝に惚れていなかった。

 もしかしてB専なのだろうか?

 

 まぁそいつは例外としても、そんな主人公のような奴は何処に行っても主人公らしく―――


 

____________________

・天野光輝

・《EX級》スキル

【覚醒】

・《SSS級》スキル

【勇者】 

____________________



 ―――案の定めちゃくちゃいいスキルを手に入れていた。


 スキルはE級からEX級まであり、チートスキルと呼ばれるのはSS級かららしい。

 つまり光輝は1番いいスキルを手に入れたわけだ。


 その為……


「おお!! 早速素晴らしい! 彼こそがこの世界を救う勇者の中の勇者―――英雄だ!」

「流石勇者様ですわ! これからも宜しくお願いしますね?」

「あ、あはは……頑張ります」


 王様をはじめとした全ての人達が歓喜に声をあげる。

 まぁ強いスキルを持っている人がいればそれ程自分達が生き残れる確率が上がるから当たり前なんだろうけど。


 因みにその間光輝は、俺に向けて苦笑いをしていただけだったが。

 俺? 俺は勿論苦笑いを浮かべ返しただけで何もしてないぞ。

 慰めたり寄り添うのは周りにいる美少女達がすればいいのだ。

 俺がしたら殺されそうな程睨まれるし。


 現に今王女が光輝に近いと言う理由で光輝ラブの美少女達が噛みついている。

 女の嫉妬って恐ろしいよね……。


 閑話休題。

 

 その後も続々と神の約束した通り、チートスキルを持ったクラスメイトが王達に持て囃されていた。

 その為俺もそうなるのだろうと期待しながら水晶に手を置いたのだが―――



____________________

・藍坂隼人

・《D級》スキル

【身体強化】【感知】

____________________



「―――は?」


 俺にはチートスキルどころか、強いスキルすらなかった。

 あまりの衝撃に俺は呆然としてしまう。


 チート能力が……ない……だと……?

 でも女神は皆に与えると言っていたよな?

 ……あのクソ女神、嘘ついたなッ!

 絶対に許さん……!


 俺が1人呆然としながら心の中で呪詛を呟いていると、王女が王の元へ行き、何やら話をしているのが耳に入った。

 

 あーこれはラノベでよくある光景だなぁ……。


 あまりの出来事に何処か他人事の様に感じてしまう。


「お、お父様……この方は……」

「…………チッ、全部平凡なD級スキルか……こいつは使えんな。こいつは城から追い出せ。だが絶対殺しはするなよ? これでも勇者なんだからな」


 ははっ……やっぱりこうなるのか。


 転移の影響か、聴覚が強化されているらしく、何十メートルも離れた小声も聞き取れた。


 どうなってんだ……俺の耳……。


 俺がその事に少し驚愕していると、兵士が俺の脇腹を掴んできて、いきなり連行された。

 まぁ俺は王の話を聞いていたから特に抵抗はしなかったけど。

 と言うかこの兵士達に勝てる気もしないので諦めたと言うのが大きいが。


 そしてなされるがままに連れて行かれた所は、王城の外で、どれくらいの価値か分かりもしないが幾らかのお金―――後に日本で言う10万円くらいだと知った―――を貰い、帰ってしまった。


 いやもう少し説明してくれよ。

 こちとらまだこっちに来て全然経っていないんですが?


 そう心の中で毒付くが、どうせ言った所で教えてもらえそうにも無いし諦める。


「はぁ……これからどうしよう……」


 こうして俺は何故かチートが貰えず、転移後10分ほどで城を追い出されることになった。



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