第2話

けれども、出鼻はすぐに挫かれた。

他でもない、ぼく自身によって。

「コユキ……っ、待って! 速い、よ……!」

息も絶え絶えに、先を行くコユキに訴える。

振り返ったコユキは数回瞬きをし、苦笑した。

「おやおや……ミライは体力がないねえ」

「のんびり言ってる場合? そんなヤツ置いて、さっさと行こうよ」

果たしてぼくが遅いのか、コユキが身軽なのか。つい思い悩む程、彼女の足取りは軽やか過ぎた。

そして、猫。一言多い。

「ほれ、あと少しだから頑張るんだよ」

「そんなあ……」

思わず、情けない声を出してしまう。そんなぼくの背中を、彼女はポンポンと叩く。

「あたしが後ろについててやるから。ほれほれ、頑張れ!」

激励され、なんとか走り続ける。

そうだ、早く行ってあげなきゃ。先程の光景を思い出し、自分の体を叱咤する。

コユキだって気が気じゃない筈。ぼくなんかが足を引っ張るわけにはいかない。

やがて、目的のビルが見えてきた。

足を動かしながら、人だかりがないか視線を巡らせる。サラリーマンのおじさんと、目が合って――。

「あれ、君、血相変えてどうしたの? あ、もしかして君達も死んじゃった人!?」

やたらとテンションが高い人物に、ぼくは頭が真っ白になった。

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