5/5 ウィリアム・シェイクスピア『オセロー』


 ムーア人の将軍・オセローは、ヴェネチアの有力者の娘であるデズデモータと深く愛し合い、結婚する。しかし、彼の地位を妬む旗手のイアーゴーに、デズデモータはオセローの副官のキャシオーと通じ合っているという嘘を吹き込まれる。それに信じ込み、キャシオーがデズデモータのハンカチを持っているのを見たオセローは、とうとう妻を殺してしまい……。

 シェイクスピアの四大悲劇の一つ。演劇としての初舞台は1604年の、時代を超える傑作でもある。


 シェイクスピアを読むのは二作目。一作目の『マクベス』は、意外な展開にハラハラしてすごく怖かったが、『オセロー』はかなり構成がシンプルで、分かりやすい分、ちょっと平坦な印象もあった。

 あんなにデズデモータを愛していたオセローが、いかにしてイアーゴーの計画に嵌り、どんどん疑心暗鬼に駆られて追い詰められていくのかがしっかり描かれている。策を弄してオセローを苦しめるイアーゴーに寒気がした。


 冒頭では、イアーゴーがヴェニスの紳士のロダリーゴーがオセローに対する不満を並べているのだが、「誰かに忠誠を誓うのではなく、自分の為に出世をしたい」という考え方をしていて、それが現代っぽいと思う。元になったお話では、イアーゴーはデズデモータに恋しているとい設定らしいが、こちらの方が新しい考え方を吹き込んでいるのかもしれない。

 そこまで冷酷なイアーゴーの前では、オセローとデズデモータのような純粋にただただ愛し合う二人のような関係は、壊されやすいのかもしれない。しかし、オセローが疑ってしまうのは、デズデモータの美しさや愛情深さも知っているからで……と思うと、余計にややこしい。


 あと、気になったのは、イアーゴーの妻であるエミリア。最初は、イアーゴーの作戦に協力しているのかと思ったら、実は何も知らずに利用されていて、デズデモータのことを心から慕っていたというのには驚いた。

 そんな彼女の言葉で、イアーゴーの策が全て明らかになり、自分の夫に最後は殺されてしまうというのも悲しい。この夫婦もどういう関係だったんだろうと気になる。


 不変な愛というのを人は求めるけれど、結びつきが固ければ固いほど、それは意外とあっさりと崩れてしまうというのは、今と昔も変わらないのかもしれない。



























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