第11話 悪意

 2ヶ月目最後の4階層探索を行った。


 俺達は順調に、機体やパーツを回収していた。

 そして、これを回収すれば満載になるという作業に入った。


 破損している部分を胴体から切り落としていると、ロックオンアラートが鳴った。

 俺は、レーダーには反応がなかったため油断していた。

 シールドは間に合わないと判断し、持っていた胴体パーツを構える。

 次の瞬間には、全身に衝撃を受けた。


「ぐッ!!」

 

『ケイタ! 各自警戒! ギルド本部緊急です!!』


 俺の画面には、左腕破損の表示と、ロックオンの表示がされている。

 内心クソッと思いながらも、先ほどの攻撃で破損した敵の胴体を右腕で構え、シールドまで機体を走らせた。

 あと少しというところで、右脚が撃ち抜かれ転倒した。


「ぐぅッ!!」


 全身に強い衝撃。

 意識が飛びそうだ。


 シズクさんとリンゴさんの声でなんとか意識をとりとめ、シールドを拾い構えることが出来た。


 その後、2発分の衝撃を受けた。

 シールドが壊れそうだ。


『来た! 救援がきました!!』


『リンゴ! 警戒は解かないで!』


『は、はい!!』


 俺のレーダーにも複数のグループが近寄ってくる反応が映っている。


 そこで、ようやくロックオンの表示がなくなった。


 しばらくすると、救援にきてくれた人達が到着し、外部音声で声を掛け合っているのが聴こえた。

 

 複数のグループに警護されて俺達はリフトまで送ってもらった。

 俺は機体ごとキャリアに載せられ、キャリアはリンゴさんが引いてくれた。

 

 なんとか大きな怪我をせずに、ギルドへと帰還できた。


 ギルドでは、パーツの売却代から、弾薬、救援要請に対する経費を差し引かれた。

 俺の機体の費用については、今回の事件をおこした犯人に請求するそうだ。


 もう犯人はわかっているらしい。


 そして俺達は、個室へと集まった。


「大きな怪我がなくて、本当によかった……」


「シズクさん、ありがとうございます。すみません、油断しました。レーダーに反応がなかったので……」


「救育係である私こそ、すみませんでした。かばうことも出来ずに……危うくケイタさんを死なせてしまう所でした」


「いえ! さすがにあの攻撃をかばうのは無理ですよ。お互い死なずに済んで良かったです。ところで、あの攻撃の正体はなんだったんでしょう?」


「それはスナイパーライフルによる攻撃ですね」


「あぁ、それでレーダーには映らなかったんですね。襲われた理由は、パーツ目的ですかね?」


「いえ、それは……私怨だと思います」


「え……私怨ですか?」


「すみません。私のせいもあります。今回の犯人は……藤堂です」


「そんな……」


「ギルドの調査によると、彼はギルドを辞めた後、色々なところから借金をしてスナイパーライフルを購入しています。また襲撃をうけた時間、決まり事を破り4階層に1人で入っていたことも確認出来たそうです」


「殺そうとするほどのことがあったとは思いませんが……」


「そこはきっと、彼の言っていた先輩とやらが唆したのでしょう。そういった人は、人を殺すことを躊躇いませんので」


「……そう、なんですね」


「はい。ですが、そうならないように、新たにマーセナリーになる人には、ギルドに所属し、カリキュラムを受け、教育するということが始まったそうです。そういったことをやっても完全にいなくなるということは無いんですがね……」


「少し怖いですね。自分がそうなるかもしれないと思うと……」


「ケイタさんは大丈夫だと思いますよ。真面目ですし、思いやりもありますから」


「そ、そう言っていただけると嬉しいですね」


「それに何か困ったことがあれば、私やリンゴさんに言っていただければ相談にのりますし」


「そうですね! 私も相談にのりますよ!」


「あ、ありがとうございます。え、えっと、俺が言うのもアレですが、お2人も何かあれば言ってください。俺も微力ながらお力になりますので!」


 シズクさんとリンゴさんはキョトンした顔をした後、2人で顔を見合わせ、クスクスと笑い出した。

 そうだよな! 作業用ロボット乗りが何言ってんだかって感じだよな!

 なんだか恥ずかしくなって両手で顔を隠して俯いた。

 笑い声が大きくなった気がした。


 しばらくして2人が落ち着き、真面目な顔つきになった。


「ケイタさん、藤堂ですが、まだ捕まっていません。それにこの機甲都市を出たことも確認出来ていないので、まだこの都市内に潜伏していると思われます」


「それはまた……」


「ですので、藤堂が捕まるまで、ギルド内にいたほうが安全だと思います」


「そうですね、そうさせてもらいます」


 ギルドは巨大な高層ビルのようになっていて、最上階はギルド長や幹部の居住区となっている。

 中層部は、シュミレーションルームやトレーニングルームなどがあり、下層部はギルド職員やギルドに所属した人の居住区となっている。

 俺はお金がなかったこともあり、都市内で最安値のマンションを借りていたので、この機会にギルドの居住区に移ってもいいかもしれない。

 マンションには大した荷物もないし、藤堂が捕まってから取りに行けばいいだろう。


 俺達は、藤堂が捕まるまでは探索を取り止めることを決め、解散した。


 俺は、ギルドの受付に行って、入居の手続きを済ませ、居住区へと向かった。


 居住区に割り当てられた俺の部屋に入ると、家具などは揃っていた。

 色々あって疲れた俺は、シャワーを浴びて、ベッドに横になった。





 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る