お題3つの超短編小説

淡雪

第1話寒い空に咲くその花は

 ここは今皆さんが住んでいるちょっと昔の地球。


 その時代はとても寒く、小さい動物はいてもたってもいられなくなる程だったんだ。


 どのくらいかというと、暖かいと言われる“火”というものが、幾つあっても足りないぐらい。


 まぁ、モットも、冷た過ぎて“火”なんてものは、初めから役にはたたない世界なんだけどね。


 生き抜くことでさえ困難なこの世界で頑張る、小さな愛おしい生き物達に、僕は感動を覚えた。


 そして、考えに考えて。


 僕は、彼らの心が癒されるように、夜空に大きくて綺麗な花火をプレゼントしようと決めた。


 早速僕は、朝から晩まで用意をし続ける。


 打ち上げる場所や時間、打ち上げる花火の数まで全て一人で用意した。


 誰かに手伝ってもらっても良かったけど、サプライズにしたかったから、今回は一人で頑張った。


 そして、時間が過ぎて、今日がその花火の打ち上げる日。


 あれ?


 良く分からないけど、誰かが空を見上げてる……


 よく見ると、僕が愛しいと思っている生き物達みんなが空に、期待した瞳を向けてる。


 何で、みんなこの日に花火が上がることを知っているのだろう?


 ……そうだ、僕自体が楽しくなって、一週間前に遊びにきた鳥さんに、うっかり話しちゃったんだ。


 だけど、反省している時間はない。


 それに、もうあとには引けない。


 僕は気を取り直して、花火玉が入った筒から出ている導火線に、火を点けた。


 程なくして、色とりどりの花火が、冷たい空一杯に広がっていく。


 それに乗じて、声援が大きくなっていく。


 凍えるぐらい寒い地上に笑顔の花が咲いて、僕は“やって良かったな”と思った。


 気付くと、企画者の僕の胸にも、優しさという名前の花が咲いていた。


お仕舞い


令和5(2023)年2月4日21:00~21:53作成

お題「友達」「花火」「氷河期」

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