第4話

 ぬすびとへの、反省の罰。

 そのかたほう。

 明かりも灯さぬ一艘の船で、盗みを働いた日の夜。どんな天気の日でも船を出し一晩孤独と暗闇に耐えること。そして、その刑を受けている時、家族は誰からもそれを知らされないこと。町のみんなが夜の海にその人の家族がひとりでいるのを、口をつぐむ。大勢いる場合は例外で一人ずつ。


 少年は反省していた。船は少年の背よりちょっと大きい小舟らしい。しかし、彷徨うと言っても岩に巻きつける縄がもらえるらしい。

 そして、常闇と海の舌舐めずりの音、何より天候がいつ変わるか素人には分からないなかでたった一人。

 ある者は飴玉を盗み、永遠に指が使えなくなったと聞いた。少年は、小舟を選んだ。

 選んだ先にお役人は服はどうする、と聞いた。

凍死されては罰が足りない、ということだろうか。しきたりなようだった。家にある、古い白いシャツでお願いします。少年が言った。

 昔の服だが父の着ているようなのと同じくらいの大きさがあるのだ。ひだもあって古いベストよりはすり減っていない。何より父を感じることができる。

 村人の一人が適当な理由で家から古い服を持ってきた。父はそういうことを気にしない人だ。こんなに騒ぎになっているのに気づかないのかと思うだろうが。小さな町では融通がきくのである。おおかた若者同士が喧嘩したり、盛大に家畜が逃げた話になっているだろう。

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