第30話 試験勉強?

「石築それに遊矢、あと櫻井さんも。別にここだけの秘密ってわけではないんだが、だからと言ってあまり騒がないでほしいんだけどいいかな?」


「うん」

「おお」

「はい」


「えっと、僕とこの季里はお付き合いしているんだ。さっきは嘘ついてごめん」


 遊矢ともとより知っていた俊介は特に大きなリアクションもなくうんうんと頷いている。石築と櫻井さんは口に手を当てて声を出さないようにしながらも目を見開いている。


「組み合わせが組み合わせなんで目立つし、また変な噂を広げられてもたまらないから徐々にって話し合っていたんだ」



 躊躇していたが口に出してしまえば呆気なく三人には受け入れられてしまった。一人で悩んでいたのが馬鹿みたいだった。


「ほら私の言ったとおりでしょ? 全然大丈夫じゃない」

「だ、だな」


 腕をぐいと掴まれて耳元で季里にそう言われる姿を見て俊介は大笑い。石築と櫻井さんはまたもや目を丸くしている。


「なんだよマコちゃん。もう毒島さんの尻に敷かれているのか?」

「ほんとうっさい。つっかマコちゃん言うな」


 🏠


 気を良くした(?)僕らはそれからというもの朝も帰りも通学は一緒になった。朝は当然家の玄関から学園の昇降口まで一緒に。帰りはだいたい昇降口で待ち合わせて帰ることにした。


 周りの反応は思っていた通りで、僕ら二人をチラチラ見たり、またあけすけにじっとみる生徒もいたりした。コソコソと話すものも多数いたのを認めている。


 季里などは直接僕との関係を聞かれることもあったらしいが、僕とは違い彼女ははっきりと言ってしまう方なので一年生の間では僕らの交際は公然のような扱いになっているらしい。これは櫻井さん情報なので間違いはないと思う。


『あんな悪い噂がある男なんて君には相応しくない』

 と言った男子生徒がいたそうだが、それに対して季里は、

『は? あなたに誠彦さんの何がわかるっていうの? あんなばかみたいな噂話を信じているあなたこそ何処のどなたなの?』

 と応えたそうだ。


 まあその彼は、季里のクラスメイトだったらしいのだけど、存在自体を季里に認識されていなかったということでだいぶ落ち込んでいたと櫻井さんは「すっごく、おもしろかったですぅ~」と教えてくれた。



 僕の方には誰も聞いてくるやつはいないんだけど、俊介たちには「あの話は本当なのか?」と尋ねる者もいるらしい。その度に「自分で聞け」と一蹴してようだが。


 学園内や人目の多い通学路でこれ見よがしに手を繋いだり腕を組んだりしていちゃついているわけではないのでそっとしておいてほしいというのが本音なのだが暫くはこの状況を我慢することにしよう。


 🏠


「ねぇえ~ 誠彦さぁん」


 なんとも甘ったるい声で季里が甘えてくる。デスクチェアに座っている僕の首に後ろから抱きついてきている。肩に当たる季里の胸がほわわんと柔らかく感じるし、季里の甘くていい匂いが鼻腔をくすぐってくる。なお下着は未着用の模様。


「今は勉強中だよ。もうすぐ期末考査があるのだから季里も勉強をしないといけないんじゃないのか?」


 少しずつは成績も向上しているが、未だに学年中位を越えられていない僕は父との約束もあり必死に勉強に励んでいるところだ。それに対して季里はもともとの頭の良さで、授業を聞いていれば大体は理解できているというチートっぷりを発揮しており、試験前だというのにかなりの余裕をもって構えている。


「つまんなぁ~い。かまってよぉ~ いちゃいちゃしようよぉ~」


 今度は首にキスをしてきたり、シャツの間から手を突っ込んで僕の胸を弄ったりし始めた。ちょっ、そこは……身体がビクリと跳ねてしまう。


「わかった! わかったから、止めてくれよ。あと二時間、いや一時間半でこの問題集を片付けるからそうしたら季里のお望みどおりにしてやるから!」


「ほんとう?」


「ほんとう、本当。約束する」


「じゃあ待つね。えへへ……たのしみ~」


 あれから毎日身体を重ねていくうちに季里は快楽を覚えてしまったらしくおねだりが激しくなってきている。最初に買った三箱も次から次へと順調に消費している。

 やっと季里が部屋から出ていってくれたのでまずは問題集を片付けることに集中しよう。




 集中できたので予定時間前に問題は全て解き終えた。


 しかし部屋を出てリビングに行くものの季里が見当たらない。


「あれ、自分の部屋にいるのかな?」


 リビングを抜けて家の奥にある季里の部屋のドアをノックする。


「き~り~ おまたせ。終わったよ」

 返事がないのでドアを開けて覗き込む。


 季里は勉強机に突っ伏して居眠りをしている。どうも勉強はしないと言っていたが少しはやる気があったようで、教科書とノートが開いてある。


 このまま季里の部屋にあるベッドに寝かしつけてあげてもいいが、そうすると明日の朝は機嫌の悪い季里に出会うことになりそう。


「仕方ないな。せめて僕のベッドまで運ぶか」


 起こさないようにそっと季里をお姫様抱っこして僕の部屋のベッドまで運ぶ。季里は出るとこは出ているが全体的には華奢な方なので軽々運べてしまう。

 すやすやと眠っている季里も可愛い。寝ているところをいたずらするのも愉しいかも知れない。まあしないけどね。


「さて、下ろす時に起こさないように慎重にっと……」


 真っ白なシーツの上に季里をゆっくりとそっと下ろして、腕を抜き取ろうとしたその時。


「‼ んぐっ……」


 ガバッと季里が抱きついてきてそのまま唇を奪われた。季里の舌が僕の口の中を蹂躙してくる。くらくらするよ……。


「ふ~ んっ! ぷはぁ‼ はぁはぁはぁ。な、なんだよぉ。起きていたのか、季里?」


「えへへへ。途中で目が覚めたの。誠彦さん、私が寝ている隙にいたずらしようとしなかった?」


「し、しないよ」

「してもいいのに!」


 しようとは思ったけどね。なんだ、してよかったんだ。


「居眠りをするようじゃもう今日は寝ようか?」

「嫌よ。今から二人で勉強するんだよ⁉」


「?」


「保健体育のお勉強よ。まずは私から、どうやったら誠彦さんがピクピクしちゃうか舌とお口で確かめたいと思います。では、じゅるり」

「お、おてやわらかに……お願い……んっあっんんんんっ」


 翌朝、寝不足になっていたのは言うまでもない。

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