第二話 ルインは子分

「んー、あぁ……おあよー。ふぁぁー。おやすみ」


 寝ぼけているのかメルザはまた寝てしまう。


「おい! そのまま寝るな! 起きろ! ていうか女の子だったのか? 起きろよメルザ!」

「うるさーぃぃ。俺様の眠りをさまたげんなぁー、すやすや」

 メルザのケリが俺に炸裂して吹っ飛ぶ。

 弱っている身体にこのケリは痛いし酷い……と思ったがあんまり痛くなかった。 


 俺の身体ってもっとひょろひょろだったような気がしたんだが、実際見てみるとそうでもないな。


 仕方がない。起きるまで待つか。

 前世でスープ位簡単に作ったことがあるし、俺が代わりにスープでも作ろう。


 そう思い台所を探したが見当たらない。

 火を起こす場所があっても道具などがない。


「どうやってスープ作ったんだ? まさか木をこすって火を起こしてたのか? ライターとかチャッカマンみたいなのもないし。マッチすらないや」


 そう呟きながら俺は周囲を見回す。

 本当に何も無いな、ここは。 

 毛布と多少食べられそうなものが転がってるくらいだ。


 メルザはこんな場所で一人で暮らしていたんだろうか? 親はどうしたんだろう。 

 それにメルザの左腕は……そう考えていると、メルザは起きたようだ。

 遠くで「んあーよく寝たぜー」と言っている声が聞こえた。


「メルザ、おはよう。ちゃんと起きたか?」

「あー……おー、ルイン! お前見えるようになったんだな! よかったよかった! けどお前そんな身体つきだったか? まぁいいけどよ。たくましいほうがこれから先ばっちり仕事出来るしな!」

 

そういうとメルザはニハハ! と笑った。

 

 本当底抜けに明るいな。

 そんなメルザの明るさと優しさに、俺は救われたのかも知れない。


「改めてメルザ、ありがとう。けど自分の腕をまず治さないと。

あの玉で治るんだろ? その腕も」

「さっき使っちまっただろ? もうねぇよ、あの玉は。言っただろ、一回きりって。手に入れるのに苦労したんだよあの玉。他にもあるかどうかも知らねぇしな」

「なんでそんな大事なの、自分のために使わなかったんだ? 

メルザだって片腕じゃどう考えても生活は大変だろ!?」


 俺はそう尋ねたが、もうわかってしまった気がした。


「だって、お前両目が見えないのなんて大変すぎるだろ? 俺様の顔もわからねーしよ。

腕は片方あるからよ。だから気にすんな! 今後はお前がいるから両手じゃねーと

出来ない事もできるしな」


 再び笑うメルザ。


「メルザ。俺はお前の子分として出来る限りのことはする。

親に捨てられたばかりで拾われるとは思ってなかった。

これからは俺がメルザを支える!」


「おう! まずは食料の確保からだな。ねぐらも小せーしよ。

色々やる事はあるぜ! まずは飯だ!」


 そういうと火を起こしていたという場所にメルザは走っていった。


「俺も手伝うよ! って……はぁ?!」


 メルザは右手の親指と中指でパチリと木に火を付けていた……どうなってるんだ? 

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