第33話
今、俺はレイチェル達が乗ってきたヘリに同乗させてもらっている。女傭兵達の船だと暴走した男日照りな喪女達が鬱陶しいからとレイチェルの判断でだ。
何故男日照りなのか?どうやら、この200年ほどで男女比が大幅に偏ってるのと元々男の精力が乏しかったのが更に減少したからとのこと。
あと、世界人口も減少している原因は言わずもがなアレだ。
薬を使った子作りにより再起不能に陥る男が後を絶たないため現在の国際法では禁忌薬認定され、生産した場合は家族や親戚全てが死刑。所持や使用の場合は流通経路に関わった全ての人間が死刑。これでも未だにブラックマーケットで取引されているらしい。
昔は、男傭兵や男軍人が居たが今は戦死したりするリスクがあるため男に武力に関わる仕事には就かせないようにしているらしい。
だいぶ、変わった世界に驚いていたがレイチェルが更に驚くことを言った。
「ミスター、貴方の精子を提供頂けませんか?」
「いや、やめた方が良いぞ。」
「どうしてでしょうか?」
「俺の精子から生まれるのはほとんど女で男はたまにしか生まれない。それと、成長がかなり早いらしい。普通の人は嫌がるだろ。」
「大丈夫です。ミスターの精子で生まれた子供は一般生育ではなく特別施設にて養育しますので。」
「どういう意味だ?」
「一般生育とは主に、精子バンクで購入した精子で人工授精を行い出産した一般人が育てることです。稀に自然妊娠される方が居ますが、本当に稀です。ミスターが危惧されてるのはこちらの方々が恐怖心を抱いて虐待をする可能性ですよね?」
「そうだ。未知は人に恐怖心を植え付ける。俺の子供達は全て殺されたからな。」
「親になるための教育や資格制度を設けていますが、未だに愚かにも虐待をする親がいます。そのため、我がUSAでは新生児から入所する特別施設で成人まで養育する準備が出来ています。」
「…仮に男が生まれても俺みたいな絶倫ではないし、俺のように不老不死ではないからな。それと、俺の子供だからって非合法な研究や実験はするなとは言わないが記録には残すなよ。万が一にその記録されたものを俺が見たら、俺は海底か地下深くに潜るからな。」
「承知しました。」
「はぁ、精子の提供するよ。あ、ちなみに子供の遺体は呪術に使われないようにな。大陸を騒がしてるアレに悪用されるから。死に方が悲惨だったり残忍だったりすると成功率が高いらしい。」
「ありがとうございます。そのような情報は一体どこから?」
「秘密さ。」
…
「ミスター、あちらに見えるのが我がUSA海軍が誇る最新鋭原子力空母であるドンナ・M・トラッパー級航空母艦です。」
「うわぁー」
1つの島。そう評するしか出来ないほどの巨大な艦だ。
この巨大空母艦は別に世界大戦を見越して造られたとかではない。ぶっちゃけると、超巨大難民艦。別大陸から命からがら逃げ延びた人々がアメリカ大陸やオーストラリア大陸では溢れて元々住んでいた人々と文化の違いや様々なことでトラブルが絶えない為、急遽建造されたのがこの巨大空母艦である。
ドンナ・M・トラッパーとは昔居た超資産家でアメリカ大統領の名前だと言う。こっちの世界ではTSしたけど、前世のあの人だろう。
姉妹艦としてオーストラリアの方も巨大空母艦を建造して今同じように別の海域で運航されているらしい。
で、何故俺が超巨大難民艦に連れてこられたかと言うとこっちの艦の方がユーラシア大陸に近いから。1番近い国はソ連邦。
辛うじてモンゴル帝国がユーラシア大陸の最前線となっている。
アフリカ大陸にはもう人は居なく、彼女達もユーラシア大陸の方に移動しているとのこと。
日本から漢と何故か繋がっていた海底トンネルから彼女達がユーラシア大陸に上陸して漢で大虐殺が起きたが、国の名前が違うだけで前世と変わらずに事態が手遅れになるまで漢は他国にその事が漏れないようにしていたらしい。
彼女達が上陸してから1年で漢の国土半分と朝鮮半島が壊滅。それぞれの国に潜伏していた他国のスパイのうち、国連にもっとも近い国がこの事を世界に広めようとするもコンテナに収納された彼女達が上陸し、その国は事実上滅びた。
多分、陰陽連と繋がりがある奴からの妨害だろうな。
他のスパイ達は漢に拘束され、自国に情報を渡せなくなった。
SNSでは漢や朝鮮半島へ旅行しに行っていた人があげた彼女達の一般人を蹂躙してる様を撮した動画が話題になっていたが、大半の国はジョーク動画か新作映画のデモシーンとして気にもしていなかった。
事態が動いたのは、漢から脱出したソ連邦のスパイからの告発だった。
「漢では殺しても死なないバケモノが人間を殺し回っている。その為、漢の国土半分と朝鮮半島は壊滅的被害を負っている。とある国はその事を世界に広めようとしたが日本がバケモノ達を従わせてその国を滅ぼした。」と。
各国は漢や朝鮮半島へ事実確認をしようとした数日後にソマリアにとある組織の貨物船からソ連邦のスパイが言っていたバケモノが上陸。
瞬く間に、アフリカ大陸の人間が滅んだ。といっても10年ほどなんとか粘ったらしい。理由は分からないがバケモノは海まで追って来ないことが分かってから進行方向に地雷原を作ったりして妨害しつつ船で海上に逃げさせていたとのこと。
USAは日本からの多数の不審船を宣戦布告として受け取りそれを尽くを沈め、日本列島に兵士を上陸させるまでに至ったが日本はバケモノの巣窟になっておりやむなく核を落としたらしい。
この辺りの話は、くそ陰陽連と噛み合わないが視点が変われば事実も変わるから誤差だろう。
ほぼ海没した日本列島に調査に入ったのが今から約70年前。仕損じたバケモノ達に海水を放水などして安全を確保してからの上陸だからそんなに掛かったとのこと。
なんとか原型を留めていた資料や復元作業をし調査をした結果、俺の存在を突き止めたとのこと。
USAは藁をも掴む思いで傭兵に依頼して捜索させて、とある情報を得た。「シャチの群れと行動を共にする全裸の男を見たら、すぐにその海域から離れろ」という。
それを見た船乗り達が帰らずになるというオカルトめいた話として語られていたらしい。
うん、俺のことだな。
海洋学者などを交えて、俺がどの海域に来るか予想をして今回当たりを引いたとのこと。
そんなことを、つらつらと語ったのは俺を捜索していたUSAの捜索隊の責任者だという女だ。
見た目は40代くらいの日系の血が混じった顔をしていて、なんだか懐かしい雰囲気のする白衣を羽織っている。
「…貴方に会えて良かったわ。」
「なぁ、俺達って初対面だよな?アンタの顔を見ていると、なんだか懐かしい気がするんだが?」
「ええ、初対面よ。でもね、私は初対面でも貴方は覚えてるのね。」
「なんの事だ?」
「私のひいお祖母様、アサコ・ミツイ」
「ミツイアサコ…三井麻子?まさか、麻乃の母親の?」
「はじめまして、ひいひいお爺様。私はハンナ・A・ミツイ。貴方の孫娘よ。」
新たな孫娘、ハンナは確かにどことなく麻乃に似ていた。
「ああ、良かった!俺の娘がちゃんと生きて子孫を残せていたなんて。」
「これからはお爺様と呼ぶわね。」
「おじいちゃんと呼んでも良いんだぞ?」
「ふふふ、それは2人だけの時にね。人前ではお爺様と呼ぶわ。」
「そうか。わかったよ。それで今日はこれからどうするんだ?」
「今日は随分と話し込んじゃったから明日今後のことを話すわ。お爺様はこれから私と一緒に今日泊まる部屋に案内するわ。」
「ああ、よろしく。」
…
…
…
「血は争えんな…」
俺の隣にはあられもない姿をして寝ているハンナが居る。
あの後、部屋に鍵をかけたハンナと致した。
「まさか、身体の相性なども一緒だとはな。」
俺はハンナと致しながら、麻乃とのことを幻視していた。最低だと思うけど、こんなにも似ているのは仕方ないと思う。
「んぅ…?ぁ、おじいちゃん」
「起きたか?おはよう」
「えへへ、おはよう。ねぇ、おじいちゃん」
「なんだ?」
「モーニングがてらに…しない?」
「元気だな。」
「だめ?」
「ダメじゃないよ。しよう。」
「やったぁ♡」
…
部屋から出たのは昼前のことだった。
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