第18話

どこまでも、青く澄んだ海。


俺がこの国に来て1ヶ月くらい経った。言葉は相も変わらず分からないけど、俺を保護した女達の素性は分かった。


ソマリア沖の海賊。食い扶持に困った元漁師達の成れの果て。だけど、前世のように武装してるとこは見たことがないし外国籍の船を襲ってもいない。はて?海賊とは?


当然、俺が辿り着いたこの国は前世では世界一治安の悪い国だったソマリアのはずなんだが治安の悪い国には見えない。そもそも、悪いことが起こってない。


例えば、強盗だとか誘拐だとか。殺人など無く、死因は病死か老衰のどちらか。平和な国だと思う。


何故、言葉が分からないのに情報を得ているのか?それは


"海賊達んとこの旦那、絶倫だってよー!"

"あら!作物持って1晩だけお願いしに行きましょうかね!"

"3軒隣の婆さん、おっちんじまったって?"

"幸せそうな顔をして寝てるのかと思ったら死んでたんだと。町医者が言うには寿命だったとよ。"

"海賊のとこに来た男を初めて見て感極まってたのにな。"

"最期に男を見れるなんてあの婆さんは幸せだったろうな。"

"婆さんに餞としてあの男の子種汁をかけてやりたいな。"

"んなことをしたら、婆さんが生き返っちまうだろ。"


ってな感じで不定形達のを盗み聞きした。


生活は決して裕福ではないんだけど、心が貧しい人間がいない。


前世のソマリアと今世のソマリアの違いは一目瞭然だけど、やっぱ歴史改変されたのかな?


すると、こっちの大陸にも転生者がいる可能性があるのか。


日本では接触することはなかったから良かったが、俺も転生者だと知られると面倒事に紛れ込まそうだな。


ちなみに、今俺が何をしてるかと言うとだな…日陰で女海賊達とイチャイチャしている。なんか、めっちゃ構われてる。言葉が通じない分、身体で繋ぎ止めたいのかな?


ここで、1番疑問に思っていたこと。何故、この国に男が俺以外に居ないんだ?その事について誰も話してないから不定形達からも何も得られてない。


きな臭い。けど、女海賊達からはそういう雰囲気は感じられない。何か理由があるのか?


「hantideena…♡」

「ku siiyo wax kasta oo aad weydiisato」

「Markaa fadlan ha naga tagin」


何か俺に願いを伝えてる?言葉は未だに分からないが雰囲気が甘く切ない感じがする。いつか、訪れる別れが来るまで一緒に居ようって感じかな?そうだな。しばらく、ここで自堕落に女達と暮らしても良さそうだな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る