空色

大根初華

黒き天使

 人はそれを【黒き悪魔】と呼んだ。

 それは可愛いらしい女性。だが、メタリックなボディ、黒い翼、そして、敵を殲滅する圧倒的な攻撃力を保有するためだ。

 だけど、僕は彼女に恋をした。いや、どちらかというと憧憬、あこがれに近いものかもしれない。

 

 そんなことを思いながら、彼女も出撃するという戦いに突撃兵として出ることになった。僕はあっという間に返り討ちにあい、そして、あっという間に彼女が敵を殲滅した。

 

 普段の彼女ならばすぐいなくなるのだが、この日に限っては倒れている僕のそばにきてくれていた。

 

 そして、彼女の眼から泪が溢れていた。

 ああ、彼女にとっては名も知れぬ僕だけど、僕のために泣いてくれているのか――――。

 それだけで僕は幸福感に包まれた。

 悪魔だなんて呼ばれているが、僕にとってはやはり天使だった。

 

 言葉も身動きもとれないけれど、せめてこの言葉だけでも伝えたい。

 

 ありがとう、黒き天使――――。

 

 END

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