無口な私 『光へ導く存在と共に』

辻田鷹斗

プロローグ 無口なサナ

私は無口だ。自覚はあるし直したいとも思っている。それでも人に話すという当然で安価な行為が出来ない。いつからだろう?気付かぬまま他人に対して自分の意思を閉ざしていった。なぜ?さらに、話そうと目の前にいる人に向けて伝えようとしても口が開かない。唇は強張ってないし緊張も全くしていないのに。話しているのは私の心の中だけ。頭の中をぐるぐると言葉が彷徨うだけ。年齢が上がるにつれ、次第に無口でいることが厳しくなる。ある者は避け、ある者は悪口を言う。中学を卒業する頃には誰も私の側に近寄る者はいなかった。先生ですら呆れていた。孤独と絶望が漂う。親も心配していた。「高校は無理せずにね。最悪通えなくても道はたくさんあるから。」と。見放されていないことに少しホッとした。ここまで理解ある親は珍しい。そうして高校に入学して新たな環境で生活する。ここから私は大きく変化する。彼女と出会うまでは。

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