果ての海

暗い霧が海からやって来る

ぼくらは水底へ帰るのだ

霧が手招いている

行こう、行こう


森の奥にいても聞こえるのさ

行こう、行こうと呼ぶ声が

眠りの中で触れた手は

冷たく、思考を塗り潰し

海へ、海へと


光も闇も粒となり

互いに手を取り

ついては離れ、渦巻いて

風が止んだら沈みゆく


隣人と手を繋ぐ

向かう先は同じだもの

光であり闇

きみは誰だったか

ぼくは誰だったか

忘失、溶け合い

粒は消えゆく

祈りなき眠り

境界を跨ぎ

海になる

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