第11話

初級鑑定魔法習得の為に1日12時間は瞑想に費やされる1日は24時間、それはこの世界だって変わらない

なら削るべきは睡眠だろう

睡眠時間は4時間まで削っても日中のパフォーマンスは落ちないってどっかで見た気がする

だから残りの8時間はスキルの習得だ


1周目で検証したスキルと魔法のランクと習得方法の推測をおさらいしとこう


初級…必要技能を満たしている者が規定の状態で規定行動を規定回数行った時に習得出来る

初級+…初級スキルを規定回数以上使用した場合に派生する

中級…初級+スキルを所持した者が必要技能を満たしている場合に派生する

上級…中級スキルを所持した者が必要技能を満たしている場合に派生する(但し素質が一定以上必要)

マスター級…上級スキルを所持した者の中で1番強い者に与えられるスキル(世界に1人しか存在出来ない)


ステータス画面によると、上級までは普通のスキルだがマスター級はエクストラスキル(EXスキル)という分類に分けられるらしい


俺に才能はなかったから上級以上習得出来るスキルはなかった

でもスキルは取ったら取っただけステータスに補正が入る

なら俺に出来るのは取れるだけスキルを取る事だろう、幸い時間はあるしな


祐二の魔法適正(全)は文字通り全ての魔法の適正を手に入れられるという事だろう

何でも器用にこなす祐二らしいスキルだ

このスキルを選ぶ所もセンスがいいあいつらしい


剛のもつ勇者というスキル

恐らくこれはEXスキルだろう

だが俺のスキル一覧にあった魔王と同じく必要能力値がかなり高いはず


そして1周目に色々調べた結果と1周目の剛の事を思い出した所、おそらく勇者スキルには段階が2段階存在するはず

1周目の剛はある時急に強さのランクが何段階も上がった

その時1段階解放したと推測出来る

でも勇者などと大層な名前が付いたスキルを持っていてあの程度の強さのはずが無い

だからもう1段階強くなるはず


傑の剣術+は2人と比べると見劣りするが

傑の剣の素質なら上級は勿論、マスター級まで上げられる可能性を持ってるだろう


やはりそうなると4人の中で1番弱いのは俺なのだ

スキルの習得にしても成長にしても鑑定魔法がある方が効率がいい


そうは言っても無いものは仕方ないので地道にやるしかない

1周目でスキルを持っていた武器から優先にやっていく

剣、斧、槍、棒、槌、弓なんでもやった

空手も勿論やった


スキルの習得も大事だがこの1年間である物を探さないといけない

それがないとレベルアップ出来ないので、修行よりも大事だ


スキルの習得に4時間、街での探索で4時間



――半年後



探し物は見つからない

なんなら見つかる気配すらない

鑑定魔法がないからスキルを習得出来ているのかも分からない

せっかくリセットしたのになんの成果も得られていない

俺は焦っていた

もしかすると1周目より酷くなってるんじゃないか?


焦りから修行はオーバーワーク気味になる

睡眠時間にはあの時の夢を見てしまい、満足に休息出来いなかった


日に日に身体がボロボロになっていく

自覚はあったが休む訳にはいかなかった

何の成果がないのに、という焦りが俺をつき動かした

見事な悪循環が出来上がっていた


そしてついに…

俺はぶっ倒れた

どこで倒れたのかすら分からないくらい疲弊していた

寧ろよく持った方だと思う



「ん…」


目が覚めると布団だろうか?

なにか柔らかい感触が頭にある

夢も見ずにこんなに寝たのは久しぶりだな…


それにしても俺のベッドってこんなに柔らかかったっけ?

というか俺はベッドで寝て…

なんで俺寝てるんだ!!

慌てて起きた


「今何時だっ!!」


起きた…というか起きようとしたのに起き上がれなかった


「さて、何時でしょう?」


聞きなれない声がする

そして頭の柔らかい感触

声のする方を見てみる


予想外の展開に顔面蒼白となる

俺が寝ていたのは初島の膝の上だった


「こんな可愛い同級生に膝枕してもらってそんな反応するのね」


「いや…ちがっ、違う訳でもねぇか。まぁいいや、助かった」


1周目で初島は祐二と結婚して子供までいた

俺にとっては初島は祐二の奥さんなのだ

そんな彼女に膝枕されている今の状況には罪悪感しか覚えない


「和泉くんってそんな人だったのね」


そんな意地悪を言ってくる彼女は可愛らしいけど、今の俺にはそんな事はどうでもいい


「まぁ、なんでもいいよ。じゃ」


なるべく塩対応でその場を離れよう


「大倉くん達、心配してたよ」


「そっか、見ての通り俺は異常者だからほっとくように言っといてくれ」


彼らに心配を掛けるのは分かっていたが今は我慢の時だ


「そんなになるまで何をやってるの?」


「答える義務はない」


「心配もさせてくれないの?」


去ろうとする俺の手を初島が掴む


「誰も心配してくれなんて頼んでない、ほっといてくれ!」


「っ!」


こんな言葉を重ねて彼女を傷つけるのは本意ではないが、察した祐二が何とかしてくれるだろう


手を掴む力が緩んだので振り払ってその場を去った

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