※第4話

この出来事を振り返って俺は、運命って本当にあるんだなって思った


そこには盗賊達に慰み者として犯されているクラスメイトの女子2人の姿があった


これが初めてではないのだろう、感情を失くし早く終われと言わんばかりの表情で男達を受け入れる2人の姿は現実のものとは思えなかった


だが片方の人物を見て正気に戻った

彼女の名前は山本由紀

彼女にしたいランキング1位にして、剛の想い人


大倉剛という人間は、基本的に誰にでも優しく、誰とでも仲良くなれる、そして正義感に溢れた好青年

そんな彼の友人は口を揃えて言う

「剛を怒らせてはいけない」


1年ちょっとの間、関わりがなくなっていたとはいえかつての想い人がこんな目に遭っていれば誰だってキレてしまうだろう


「ああああぁぁぁぁ!!」


怒っているのか、泣いているのか、分からない叫び声が響き渡る


「祐二は剛のサポート!!傑は俺と2人の保護っ!!」


すぐ様指示を出す


「なっ、なんだ!?」

「敵襲だ!!」


流石に盗賊達も異変に気付いたようだ

だがもう遅い…


2人を犯していた盗賊の首が飛んだ

Dランク討伐者としてバリバリやってきた俺達とその辺の盗賊が勝負になる訳がないのだ


その場が一瞬にして血祭りとなった

キレた剛の無双っぷりは凄まじかった


俺は保護した2人を傑に任せ、拠点の外を見張った

案の定逃げ出そうとした盗賊がいたので殺した

殺した感覚はゴリアナと変わらなかった

嫌悪感や後悔もなかった

俺も感情が欠落してきたんだろうか…


こうして当初の目的とは少し違ったが盗賊討伐依頼を達成した

盗賊の相手より、興奮した剛を宥める方が苦労したのは言うまでもないだろう


町に戻ってから話を聞いた

元々山本達は、男女2人ずつの4人でチームを組んでいたのだが害獣の討伐依頼をした帰りに盗賊に襲われたらしい

その日の討伐はかなり手こずり全員疲労困憊の状態で、為す術なく男2人は殺され山本ともう1人の女子は捕まり今に至ると…


殺された2人と山本達は恋人関係で2組のカップルパーティだったそう

恋人が殺され、3ヶ月もの間盗賊達に弄ばれ心も体もボロボロになっていた


流石にこんな状態の2人を放り出す訳にもいかず、しばらく依頼を受けずに一緒に過ごす事にした


1ヶ月ほどで体は随分と良くなり、心の方も剛たちの優しさに触れる事で少しずつ回復しつつあった

さらに1ヶ月経った頃にはすっかり元気になった

山本はすっかり剛の虜となり俺たちのチームに入りたいと言ってきた

もう1人の女子は流石に討伐者はもうしたくないと引退し、街で仕事についた


こうして俺たちのチームに紅一点が加わった



――あっという間に1年が経過した



山本のレベリングもあり、無我夢中で害獣を狩り続けていたらレベルが50を越えていた


試しに上級ダンジョンへ挑戦したらあっさりとクリアしてしまった

こうして俺たちはCランクとなった


Cランクからは実力者として他の討伐者や街の人から注目や尊敬される存在となる


Cランク以上のチームというのは特別で、名前を付ける義務が発生する

俺たちのチームは【ブレイブハート】と名付けた

発案者はもちろん剛だ


新しい名有りのチームはアルカナ大陸を収めるアルカナ王と謁見する


Cランク以上のチームは強い害獣が現れた時、緊急依頼として強制的に出動する事が義務付けられている

その時すぐに対応出来るようなるべく王都に待機する事が推奨される

その代わりに依頼を受けなくていいようにBランクまで5万だった月給が100万まで跳ね上がる


謁見に関しては緊張し過ぎて何があったのかほとんど覚えていないので割愛する


祐二はCランクになったら初島と結婚すると決めていたらしくプロポーズをした

結果は勿論OK


地球ほど豪華な結婚式ではなかったが教会で行われた結婚式はとても素晴らしく感動した


それから3年くらい平和な日々が続いた

傑も地元民と付き合い始めた

いつの間にか付き合っていた剛と山本も結婚した

祐二と初島の間には子供が産まれた


そして俺は独りになっていた


緊急依頼など殆どないし、今まで発令されたことも無い

お金はあるし、家族も出来た

皆、討伐者として依頼を受けなくなった


俺は独りで依頼を受け続けた

レベルが60を超えた


依頼で倒す害獣ではレベルが上がらなくなってきた

ならばと上級ダンジョンへと向かった


上級ダンジョンにはまだ見ぬ害獣、強い害獣がいた

いつからか戦うのが楽しいと感じるようになった

それが強い敵であればあるほど…

俺は何かに取り憑かれたように上級ダンジョンへと通った


そんなある日緊急依頼が発令された


俺は心底ワクワクした

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