#02 一人暮らし



 現在、俺は、地方のA県の県庁所在地A市にある私立A大学に通う2年生の今年20歳。

 実家は隣のB県にあり、去年の4月に今の大学へ入学し、大学近くにある学生向けのワンルームマンションに住み始めて、先月4月で2年目に突入したばかり。


 マンションは築6年程らしく、4階建てでワンフロア8部屋あり、その2階の一番端っこの部屋に住んでいる。

 部屋はキッチン込みの9帖で、バスとトイレが別々で脱衣所もあり、そこそこ広いクローゼットもある。

 学生の一人暮らしとしては充分な広さで、近所にはコンビニやスーパーマーケットに牛丼屋やうどん屋などの飲食店もあって、優良物件だと思う。 実際に、空きが出来ても直ぐに埋まってるみたいだし。


 しかし、良いことばかりという訳でも無く、学生ばかりが住むマンションなので、週末になると酔っぱらった住人やその友達だかが廊下で騒がしくしたり部屋で騒いだりして、防音がいまいちなせいでお隣や上下の部屋の住人とトラブルになったりしてるのをちょくちょく見かける。


 俺は角部屋でお隣は右隣しかないのだけど、去年はその右隣に同じA大の4年の男性が住んでて、よく夜中にゲームかなんかの大きい音出しては五月蠅くされて、でも1年の俺にしてみれば同じ大学の4年の先輩なんて怖くて、毎回苦情も言えずにずっと我慢していた。

 だから、俺も彼女が出来てエッチする様になってからは、声が隣近所に聞こえない様に音楽流したりお互い声を我慢するようにして、かなり気を使っている。


 そんな地味にストレス溜まるお隣さん事情だったが、この春に卒業して出て行ったので今は別の学生さんが住んでいる。

 先々月の3月末に引っ越して来たのは女性で、同じ市内にある国立のC大学にこの春入学する新大学生。

 引っ越して来た時に挨拶に来てくれて、その時に聞いた話では出身が俺と同じB県で、しかも出身校が俺の地元の隣の市にある高校で、部活の練習試合とかで数回訪れたことのある学校だった為、話を聞いた時は親近感が沸いたのだけど、相手は女性で初めての一人暮らしらしいし大学も違うし、男の俺には色々警戒してるだろうし、控えめな性格っぽくて初対面の俺相手に緊張しながらポツポツと話す様子から、俺も相手に合わせて馴れ馴れしくならない様に当たり障りの無い会話をした程度だった。


 それ以降、廊下とかで偶然顔を会わせれば、「こんちは」とか「こんばんわー」とか挨拶だけはするけど、世間話などの会話は最初の挨拶に来た時だけしかしていない。 俺にしてみれば最初は親近感が沸いたとは言え、彼女が居る身で異性の隣人と必要以上に交流を持ちたいとは思わないので、淡泊な近所付き合いは気にならないし、去年までの住人に比べれば今のお隣さんは騒ぐことが全く無くて、そういう意味では丁度いいご近所さんだった。


 因みに、同じマンションに住んでても、俺に限らず住民同士の交流はほとんど無いと思う。

 近隣に複数大学や短大が集まってる関係で、ウチの大学以外の大学の学生も多く住んでて、それに女性の割合がかなり多いからかもしれない。多分今年は女性のが多い。

 条件的には優良物件なので、女性のが本人や親が家賃が多少高くても条件重視で選ぶのかもしれないな。 女性のが警戒心強いだろうし、だからなのか、住人同士の交流はほとんど無いのだろう。


 もしかしたら俺だけハブられてる可能性もあるが、別にそうだったとしても、学校には友達居るしバイト先にも彼女が居るし、別にどうでも良いや。





 普段の生活のサイクルは、平日の日中は歩いて大学へ通い、授業後は友達とかと少し遊んだりして夕方から夜までバイト。 バイト先までは少し遠いので、一旦自宅へ帰り自転車に乗って行くパターンだ。

 一応、車の免許は去年の夏休みに取得したが、車は持っていない。

 欲しいとは思うけど、購入費に維持費に駐車場代を考えると、とてもじゃないけど手が出ない。

 それに、学校もバイト先も徒歩や自転車で充分通えるので、自分の車を購入するなら、卒業して就職してからだと考えている。


 バイトは、駅前にあるホテルのレストランのウェイター。

 流石に県庁所在地の駅前にあるので誰でも知ってる有名ホテルで、去年の5月頃に無料配布の求人情報誌を見て選び、一人で面接に行って採用して貰えた。

 平日のみ週4~5の夕方で入り、今月で丸1年続けていることになる。

 給料は、多い月で10万いくが、だいたいが8~9万台が多い。

 家賃と大学の授業料は親に頼っているが、それ以外は全部自分で賄っているので、サークル等には入らずに学校の授業とバイトが中心の生活を続けている。



 彼女の『佐々木ミキ』とはそのバイト先で知り合った。

 彼女もその年に県内の私立女子大に入学したばかりの俺とは同い歳で、俺よりも1週間ほど早くバイトに採用されてたほんの少しだけ先輩で、お互い新人ながらも俺に仕事を色々教えてくれた。


 学校が違えど同じ新大学生で職場内では唯一の歳が同じ新人同士となれば、自然と仕事以外の会話も多くなり、そして面倒見が良くてしっかり者で責任感も強くて、美人の彼女には直ぐに好意を抱く様になった。


 容姿に関して言えば、可愛い系では無く綺麗系だろう。

 髪型はセミショートのストレートで、若干ブラウンだけど本人が言うには染めてなくて地毛らしい。

 大学生になってからメイクするようになったそうだが、あまり派手なメイクは好みじゃないらしく、普段は所謂ナチュラルメイクってやつだろうか。 

 泊まりに来た時にスッピン顔を見せてくれるが、意思の強そうな瞳に鼻筋も通ったどことなくエキゾチックな顔立ちで、スッピンでも充分綺麗な容姿だと思う。

 身長は170以上あり、中高とバレーボールに打ち込み高校時代にはバレー部でキャプテンを務めていた程らしく、長身で脚も長く、スポーツで鍛えていた為か引き締まった体形はモデルのようなスタイルで、レストランの落ち着いたグリーンの制服がとても似合い、働く姿は実際の年齢よりも大人びて見える。


 ずば抜けて美少女だとか美貌の持ち主とまでは思わないし好みの別れる容姿だとは思うが、好意を抱いた理由は容姿よりも性格とか内面とかの方で、バイト先でしか会うことが出来なかった当時は、仕事前に休憩室で彼女と二人きりで少しお喋り出来るのが楽しくて、「彼女と会うのが目的で毎日の様にバイトに通っていた」と言われても否定できないほど、惹かれていた。



 そしてバイトを始めて2カ月程の7月に、バイト前の空き時間にお互い着替え終えて休憩室で夏休みの予定を話題にお喋りしてた時に、思い立って遂に俺の方から告白した。






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明日から1日1話(朝7時)更新となります。






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