極悪系美少女達が超高難易度ダンジョンの攻略を任されるのはしかたないよねっ?

草田蜜柑

序章 王国暗殺者が美少女だらけのダンジョンへ派遣されるまで

第1話 ライズ・リーディット

ライズ・リーディットは暗殺者だ。


幼い頃より暗殺者である義父に育てられ、僅か10歳という歳から王国専属の暗殺者として暗躍している。


しかし、王国に仕えたとしても所詮は暗部。


万が一の際は容赦なく切り捨てられる立ち場にあった。


ライズは……今、まさに切り捨てられようとしていた。


(覚悟はしていた)


暗殺者となった日から、いつか己も殺されるという覚悟はあった。


(……でも、それならなんで私は応接室なんかに喚ばれてるんだ?)


豪華な装飾品で飾られた応接室は、貴族や他国の重鎮を招く為の場所だ。


間違えても、処刑を数日後に控える暗殺者に通されるべき部屋ではない。


ガチャッと扉が開く。


「やぁ、ライズ」


「王子殿下」


入って来たのは金髪碧眼の美貌を携えたこの国の王子、レオンである。


彼とは幼い頃からの知り合いだ。


王国暗部に所属するライズは、国王陛下直属の暗殺者ではあるが、レオンが即位すれば彼が己の主となっていただろう。


「殿下なんて、他人行儀はよしてくれ、友人じゃないか」


「まさか、自分は暗殺者です。

血に濡れた存在ですよ?」


「なら、僕ら王族も同じだ。

必要だからと開き直り、本来守るべき国民を殺しの道具としている。

むしろ、君等きみらよりも罪深い」


レオンは昔から優しい性格だった。


聡明であり優しい彼は、時期国王として名高い。


唯一の欠点など、その美貌がありながらなぜか女性の話が一切ない事ぐらいだ。


「父上は最低だ……!

君はただ、子供を守っただけなのに……!」


「それがいけなかったのです。

我々暗部は、闇の存在でなければならなかったのに。

そうでありながら、多くの人々の前に姿を晒してしまった」


ライズが受けた依頼は、とある貴族の当主を暗殺するというものだった。


その貴族は王家に知られないとでも思っていたのか、何度も脱税や横領を繰り返し、領地でも圧政を敷いたりしてやりたい放題だった。


ライズはその当主を暗殺した。


しかし、問題はその後だった。


当主の圧政に苦しんでいた領民達が、武器を持って雪崩なだれんで来たのだ。


もちろん、それでも問題はない。


すでにターゲットは殺害したのだから、後は立ち去れば良かっただけなのだ。


それなのに、ライズは致命的なミスを冒した。


領民に殺されそうになっていた、当主の子供を助けてしまったのだ。


それによって、ライズの存在が世間に浮き彫りとなってしまった。


貴族を殺した暗殺者として報道される事となったライズは、もはや暗部の人間として生きていけない。


結果、ライズは王国に囚われ、処刑される事となった。


「遅かれ早かれ、私はこうなる運命だったのです。

むしろ、名も知らぬ暗殺者の手ではなく、王家自らが刃を振り上げてくださるというなら、私如きには幸せ過ぎるほどです」


「嫌だ、そんなの……」


(レオン様は、優しいな)


幼少期は、共に遊んだ事もあった。


王子と暗殺者の関係でおこがましい事だが、ライズもレオンの事は兄や友人のように感じる事もあった。


たまに、に頭を抱える事もあったが、それも今では良い思い出だ。


と、そこで扉が開いた。


「っ、国王陛下……!」


ライズは床へ跪き、畏まる、


「表を上げよ、私は、私的してきにお前と話に来ただけだ」


国王は上座かみざの席へ座る。


「お前も座れ」


と言われ、ライズもソファーに腰掛けた。


何気にレオンも横に座る。


此度こたびの処罰、誠に申し訳ない」


「いえ、しくじったのは私です。

陛下は適切な判断をしただけの事」


「しかし、結果としてはお前を殺す事となる」


国王は苦渋に顔を歪める。


ライズがまだ年若いからか……レオン程ではないが、国王にも昔から良くしてもらっていた。


父……はすでにいるので、親戚の叔父のように感じる事もあった。


これも王族相手に失礼だが。


「もとより、あってない命です。

父に拾われ、そして陛下に見出されたからこそ、私はこうして存在しているのですから」


「本当に、すまない」


頭を下げる


心から申し訳ないと思っているのだろう。


それでも、ライズを処刑する事に代わりはない。


「お前は我々王家の為に尽くしてくれた。

なのに、我々はお前に何も返せないでいる」


「父上!そう思うなら、ライズの処刑を中止してください!」


国王は首を横に振る。


「それは無理だ。

……だが、抜け道なら、ある」


「抜け道ですか……?」


ライズは目をパチリと見開く。


「ライズよ、お前、冒険者に興味はないか?」


「は?」


「実は、近いうちに大きなプロジェクトを実行しようと思う。

それに、お前を参加させたい」


「その、プロジェクトとは……?」


「ダンジョンガールズプロジェクト」


「は?」


「まぁ、冗談みたいな話だとは思うが、真面目に聞いて欲しい。

この大陸にあるダンジョンを、可愛い女の子のパーティに攻略させてそれを配信し、国民から視聴料をガッポガッポと巻き上げる……それが、このプロジェクトの全容だ」


至って大真面目に、アホ丸出しな事を言い出す国王に、ライズは本音を隠しきれなかった。


「冗談ですよね?」


「マジだ」


シリアスな顔で言い放つ国王を前に、ライズは思った。


この国、終わったかもしんない、と。

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