いざ!体外授精へ

母親の死から1年が経っていた。


感情の大波を何度も繰り返してようやく前に進めた時期に

ステップアップを決めた。


「やれるだけやってみよう!」


もちろん不安の方が大きかったが、

これで妊娠に一歩近づくと思うとワクワクした。


都会にある専門病院に転院をして様々な検査を受けた。

もちろん登竜門の卵管造影検査も。

確かに痛かったが、初めてで何も分からなくて言われるままこなしていった。


それから採卵準備に入った。

まずびっくりしたのは自分で注射をしなければならないこと。

自己注射教室に行き、方法を学んで自宅で指示された日数分打つということ。

自分のお腹に針を刺すのが怖くて怖くて毎回緊張しながら行った。

痛みは刺す場所によって変わり、うまくできたら「えらい!」と自分を褒めた。

手術前になると卵が大きくなりお腹の張りが凄かった。


そして採卵手術へ。

私の場合は卵が多かった為、静寂麻酔をしての手術だった。

術中の痛みは全くなかったが、

目が覚めてからはお腹に鈍痛があったくらいでその日は終わった。


採卵後、腹水がたまり一週間ほど体調が優れなかったが

それも徐々に落ち着いていった。


私が思うに、

体外授精で一番大変なのはこの採卵の段階ではないだろうか?

ここを乗り越えたらひと段落のような気がする。

何種類もの薬に日時指定があり、自己注射や内診、調子が悪くなるなど

色んな壁を乗り越えた私や同志たちに拍手を送りたい。


次に待ち受けるのが授精確認。

採れた卵がちゃんと授精出来ているのか?

この確認に心臓がきゅっとなった人もいるだろう。

私の場合は電話での確認だったので、1時間くらい躊躇してしまった。

出来た受精卵は16個だった。

その中でも見た目のグレードが良いとされるのは3個。


これで私は妊娠できるとそう思っていた。



























  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る