第7話

順平くんも、順平くんのお父さんも、そして美紅ちゃんも、みんな目を丸くした。

「こりゃたまげだ! なしてこげなきれいに染まるだ」

みんな、私の反物を手に取って染まり具合を見ていた。


「染まりもいいけんど、この麻布あさぬのの地色が白いのもいいな」


私は、姉からアドバイスをもらっていた。

染めを目立たせるために、染まっていないところを目立たせる。

つまり、染まっていないところをのだ。


「この麻、なんだか白いけんど、眞白、どうしたにゃ?」

美紅ちゃんが聞いてくる。


「ん? 白く染めたの。そうした方が染めたところが目立つから」


「白く染める? そんなこと、なしてできるにゃ?」


私は何も答えず、持ってきたもう一つの反物を広げた。

これは、全く染めていない、真っ白の麻布あさぬのだ。


「ほう……こんな真っ白な麻布、初めて見だ。うちでも、こんな白さは出せん」


順平くんのお父さんは、感嘆の声を上げた。

私は言った。


「おそれいります。この布、これから何色にでも染まります」

「んだば、眞白ちゃんらしい、真っ白な布だ」


順平くんのお父さんは笑顔になり、それを見た順平くんも笑顔になった。

美紅ちゃんの顔をそっと見てみると、いつもの感じがなくなっていて、なんだかしおらしくなっていた。


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