第7話 初のプレイヤーと遭遇。

猪がこちらに気付く前に【看破】で見てみる。


『【種族】ロックワイルドボア

 【クラス】D

 【特徴】大きな身体での体当たりが強烈。』



魔物にはクラスがあるのか。

初めて知った事実。

10メートル程の距離にきた所でボアは俺に気が付く。

直ぐに足で地面を何度か蹴り、突進の体勢に入った。


先ずは【空蝉術】を試してみよう。

ボアが突進して来たタイミングで術を思念で発動させる。

直後にボアの体当たりが俺に当たるが、俺はボアを通り越した位置に瞬間移動していた。


これは慣れが必要だなぁ。

いきなり視界が変わって混乱する。

ボアはそのまま進み木にぶつかる直前に停まって方向転換し、また突進の体勢に入った。


次は【分身術】を発動。

すると俺から、ズルっともう一人の俺が横に出てきた。


これはどうやって動かせばいいのか。

自動で動くのか?

それとも指示をすれば動くのか?

とりあえず、ボアに攻撃と念じてみる。


次の瞬間には分身が走り出し、木刀を振り下ろしていた。

なるほど、思念操作でいけるのか。

なら連携もとりやすいな。


しかも、攻撃を念じたのに避けながら戦っている。

もっと細かい操作も出来るのか、後に検証しないといけない。



ボアが頭を振って分身と戦っていると、10秒程したら分身が霧のように消えた。


まあレベル1だからね仕方ない。

再度使うには10秒のクールタイムが必要と。

これは常に使って早いことレベルを上げた方が、今後に役立つな。


ちなみに【空蝉術】のクールタイムは5秒だった。




そして最後に、このゲームを始めてゲーム内時間ではや8ヶ月。

職業クエストの間は使えなかったが、職業を得たと同時に身体の中に感じた存在。


そう、魔力だ。

やっと魔力を使う時がきたのだ!

分身術を使った時にも消費される感覚はあった。

あれが魔力なのだろう。



このGFWの魔法は以前までのゲームとは違い、プレイヤーのイメージと魔力操作で、その可能性は無限に広がるとサイトに載っていた。


職業に魔法使いは存在するが、単純に魔力操作が他の職業より上達が早く、スムーズにできる事と威力が桁違いになるらしい。


しかし、プレイヤー次第で魔力を操作する事はどの職業でも可能である。

故に、魔法が使えるのだ。


戦闘前に試しておけって?

実戦でやった方が自分の気持ちや意思、緊張感が違うからな。

何も無い所でやるより、成長度合いが違うような気がする。



ちなみに、キジ丸がそう思っている事は間違いではない。

実戦での緊張感、プレイヤーの気の持ちようでスキル経験値も段違いになる。

キジ丸はと言うか、他のプレイヤー達も知らない事実だが、感覚でそう思う者も少なくない。



分身が居なくなり、俺にターゲットを変えたボアが突進してくる、が……当たる直前に俺の姿は消える。


実際に消えた訳じゃ無く、単純に避けただけだ。

魔力を全身に多く巡らせ身体強化をした。

異世界系のラノベは読んでいたからな。

イメージは完璧だ。


「それにしてもスゲー強化されてね?」

自分の動きが早すぎてビックリなんだが。

身体はいつも以上に軽いし、動きたくてウズウズする感覚に似ている。



ボアは少し進んだ所で止まり、続けて俺に向かって突進してきた。

まさに猪突猛進だな!


突進を躱し、分身を作る。

次は木刀にも魔力を流し強化魔法を掛けながら、ボアに向かって分身と走り出した。


その後は、一方的にタコ殴りだ。

振り向いた所を分身と一緒に強化した木刀で殴ると、ボアは身体を横倒しにし絶命した。

これは早くスキルレベルを上げたいな。



ボアはインベントリに入れて持っていく。

この辺りに水場が無いので解体ができない。

ブンッ! と木刀を素振りし感覚を確かめる。


「強化魔法は便利だな」

思いっきり振っても木刀が折れなかった。

しかし、早く刀か直刀が欲しい。



木刀をインベントリに入れ、森の中を更に西へ走り出す。

偶にマップを見て方向を確かめながら進むと、小さな集落のような木材で作った家が見えてきた。


森の中に集落があるとはな。

そんな事を思いながら村に入ると生き物の気配が全くない。


「廃村か?」

よく見ると、家の所々が壊れている事に気が付いた。

「せっかく人に会えると思ったのに」

期待外れに肩を落とし、更に西へ向かう。




間で1日野営をし更に進むと森が途切れ、草原と丘が広がっている場所に出た。


ここへ来るまでに猪2匹と狼5匹を狩ってインベントリに入れてある。

これを売れば多少の金にはなるだろう。



暫く丘を登り草原を進んでいると、丘の向こう側から戦闘音が聞こえてきた。

【隠密】で気配を消し、丘から少し頭を出して覗いてみると。

ローブを着て杖を持つ幼女と白髪の革鎧を着た剣士風の男が、10人程の男達に囲まれて戦っていた。



あれは助けに入った方がいいのか?

おそらくあの男女はプレイヤーだろうから、獲物を横取りしたら怒られるしな。

聞いてみるか。


丘の上に姿を現し声を掛ける。

「助けは要るか!?」

俺の声にその場にいた全員が一瞬身体を止めるが、直ぐに戦闘へと戻った。



「お願いします!」

「頼む!」

「よし、任せろ!」


男女の方から返事がきたので木刀を取り出し身体強化をしながら丘を駆け下り、途中で地面を蹴り空中へ跳び上がると、手前に居た男の頭に木刀を振り落としかち割る。

男はそれで絶命したようだ。



着地した俺に他の男達が剣を振り下ろしてくるが、動きが遅いので木刀で簡単に受け流し膝蹴りを腹に打ち込むと、前屈みになり動きが止まった男の頭に木刀を振り下ろし絶命させる。


その後、俺が加わった事で男女の方も勢いが戻り、20分程で全滅させた。



「ふぅ、こいつで最後かな」

そう言いながら周りの気配を探り、何もいないのを確認する。

全て倒したようだ。


すると男女が近づいて来て声を掛けてきた。

「ありがとうございました!」

「ありがとう! 本当に助かった!」

幼女が頭を下げ、男は手を上げてお礼を言ってくる。


「いやいや、たまたま近くを通ったら戦闘音が聞こえてきたんでね」

「俺は剣士のゼロって言うんだ、でこっちが……」

「魔法使いのヒヨコ姫って言います」

ゼロは白い髪に蒼い瞳で、ハーフっぽい顔のイケメンだ。

身長は俺より少し高いくらい。


ヒヨコ姫は、長いストレートの銀髪に可愛らしい顔。身長は120センチ程で白をベースにしたローブを着て、大きな杖を持っている。

まさに幼女だな。



「俺は…侍のキジ丸です、よろしく」

さて、色んな情報を聞かせてもらえるかな?

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