第26話

 それからどれくらい経っただろうか?

 恐らく一時間も経っていない……だが、僕たち三人は相手組織の頭を潰し、組織そのものを壊滅させることに成功していた。


「こんなに……弱かったんですね」

 

 呆気なく自分を縛っていた組織を崩壊させてしまったレーシアは思わずと言った感じで率直な感想を漏らす。


「ま、基本的に戦闘能力に特化したスキル所持者がそもそも珍しいんだ。とんでもないデメリットがある代わりに戦闘能力を手にしているまさに化け物……玲香のような例はほとんどいない。普通に考えてそんな玲香とそれに匹敵する力を持つレーシア。決して死ぬことのない僕の三人の襲撃にあえばただの犯罪組織に抵抗する術なんてないよ」


 簡単に個人の力でテロ行為を行えてしまうのが戦闘能力に特化した能力者なのだ……貧民の戦闘能力に特化した能力者は子供のうちから早いことさっさと殺してしまうような制度があるのも納得である。

 倫理的には最低だが。


「感謝しなさいよ?私の力だってことも忘れずにね?」


「いえ、これもすべて偉大なる輝夜様のおかげです。輝夜様は私のために身命を賭してくださいました……」


「はぁ!?そんなわけ!?」


「待ってください、。二人とも。こんな血生臭いところで喧嘩してはいけませんよ?死体が一つ増えてしまうのではないかと思ってしまいます……ただでさえ僕は生け捕りを願っていたのに多くの死体が転がっていますしね?」


「「うぐっ……」」

 

 僕の一言に玲香とレーシアが言葉を詰まらせる。

 二人は僕の出来るだけ生け捕りでという言葉を完全に無視し、大量に人を殺した。彼女たちの頭に生け捕りのいの字もなかった。

 ……完全に人を殺すのを楽しんじゃっているやばい奴だったよ。二人ともそんな物騒な人間だったとは思わなかった……。

 特に玲香。

 君ってば僕を始めていただきますしたとき人を殺すのにちゃんと抵抗感を覚えていたよね?その抵抗感は一体どこへ消えてしまったというの?


 僕がそんなことを考えていると遠くからパトカーのサイレンの音が聞こえてくる。

 ……もう来たのか。

 あらかじめ連絡してあったとはいえかなり早いな。


「……ふぅ。これでとりあえずは一件落着かね」

 

 レーシアを縛っていたもの。

 それはとりあえずこれで壊すことが出来ただろう。






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 『悪役令嬢の執事となった僕はゲームの世界へと勇者として召喚された最強格のスキルを手にした同級生たちと違ってスキルを持たない落ちこぼれ勇者様!』

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