第4話 社畜魔王、ボス部屋に到着する

《……》

《……》

《……………え?》

《?》

《何が起きたんだ……?》

《鼓膜が破れそうな音がしたんだが》


 大量に舞った砂埃が収まると同時に、先程までも光景とは全く違う光景が広がっていた。

 湖のあった場所には水などなくなり、その代わり湖よりも遥に巨大なクレーターが出来ている。

 更には周りの木は根こそぎ吹き飛び、丸裸となっていた。


「ふむ……少々やりすぎたかもしれん」


《完全にやりすぎだよ!?》

《どう考えてもオーバーキルで草》

《これを少々と言える魔王様すげぇぇぇぇ!!》

《社畜魔王最強!! 社畜魔王しか勝たん!!》

《改めて本当に魔王だったんだなって思いました》

《もう疑いようがないよなww》

《これで疑う奴はただのアンチ》


 どうやら我が思っている以上に今の惨状はやりすぎらしい。

 だが、異世界ではこの程度の事などザラにあったからな。

 勇者と本気で戦った時は、この世界で言うユーラシア大陸がお互いの力の衝突で消え去るくらいだった。


「この程度でやりすぎ……少し自重した方が良さそうだな」


《果たして魔王の自重が一体どれほどのものなのか……》

《絶対大して変わらない気がするww》

《それな》

《俺も変わらないに一票》

《そう言えば同接3万人&登録者2万人突破おめでとう》

《え!? もうそんなに行ってんのか!?》

《ついさっきまで登録者5000人くらいだったのに……》

《まぁ過去最高レベルにド派手だし、前世魔王とか言う個性の塊だったらそりゃそうなるわな》

《納得の結果》


「チャンネル登録者数が2万……だと……!? うおおおおおおおおおおお!! 我、超感動!!」


 我がコメント欄を見た後に、急いで自分のチャンネルを見てみると確かに2万人を超えていた。

 更には眺めていると秒刻みでどんどんと増える。


《テンション高っww》

《まぁまだ1時間も配信してないのにもう2万人だからな》

《それに社畜魔王は個人だし》

《確かに個人でこれは凄いよな》

《王手事務所の配信者の初配信と肩並べるレベル》

《これは売れるぞ!!》

《俺が社畜魔王の古参になるんだ!!》

《そう言えば時間大丈夫なの?》

《……あ》

《あっ》

《あっ》

《あっ》


「ああああああああああ!! すっかり忘れておった!」


《魔王の雄叫びww》

《いや社畜魔王の悲痛の叫びだろww》

《声デカっ!?》

《思わずイヤホン外してしまったわww》


「それはすまぬ。だが時間がヤバいのに気付いてな。今直ぐ遅れを取り戻すぞ」


 我は急いで下の階層に進む。

 次の階は砂漠みたいな所で、大きなミミズみたいなモンスターが出てきた。


《サンドワームだ!!》

《物理攻撃が効きにくい厄介な奴!!》

《あと普通にキモい》

《それな》

《あんなのに殺されるのだけは絶対にやだな》

《社畜魔王さっさとアイツを吹き飛ばしてくれ!!》


「まぁ見ていろリスナーよ。おいミミズ、邪魔だ――どけ」

「キュアアアアアアアアアアアアア!!??」


 我は進路を阻むデカいミミズに破壊魔術エンドを無詠唱で発動させる。

 この魔術は、自分よりも大幅に弱い相手にしか効かないが、我は腐っても元魔王。

 この程度の敵など雑魚に過ぎないため、成功した我の魔術によってミミズがパンッと風船が割れたような音がなると同時に破裂して跡形もなく消える。


《うえっ!?》

《一瞬で消えたwwww》

《いや風船みたく割れたぞww》

《いい音なってたなww》

《あのサンドワームが一撃……》

《あれでもB級上位のモンスターなんですけど……》

《確かにサンドワームがボスのダンジョンもあるくらいだしな》

《なら社畜魔王はB級ダンジョンクソ余裕じゃん》


「むっ、あのミミズはサンドワームと言うのか? それにあれでB級だと? もしかして……結構お金になるのか?」


《なる》

《なるぞww》

《余裕でなるww》

《何ならB級でも上位くらいにお金貰える》

《多分死体全部売れば何億か貰えるだろうな》


「ぐっ……我はまたやってしまった……もう少し優しく殺せばよかった……」


《優しく◯すってww》

《どこも優しくねぇよww》

《悔しがってる魔王様可愛い》

《確かにww 年相応って感じ》

《まぁ社畜魔王って結構イケメンだし、まだ未成年だしな》

《可愛いぞ社畜魔王!!》

《可愛い!!》

《可愛いぞww》


「イジるでない! 我は男だぞ!!」


《でもまだ子供だし》

《前世では爺でも今世では見た目子供だし》

《はっ!! これが噂のショタジジイ!?》

《確かに可愛い顔してるもんな社畜魔王》


 こやつらめ……勝手に言いおって。

 まぁいい、勝手に言わせておいてやろう。

 なんたって我は寛容であるからな。


「もう可愛くてもショタジジイでもよい。我はとっととダンジョンをクリアするのみだ。その間コメントが見られないかもしれんが、怒らないでくれよ》


 我は出来るだけコメント欄を見ないようにして先に進んだ。


《諦めたww》

《いや拗ねたのかもしれんww》

《いまツイッター見たらショタジジイと社畜魔王がトレンド1位2位を独占してる》

《ほんとだww》

《これは毎回いじられるようになるなww》






***





 ――44階層――


「軽く……かる~く……【水球アクアボール】」

「グギャ――ッ!?」


 我の手のひらサイズの水球が正確に相手の眉間を捉え、撃ち抜く。

 相手はワイバーンとか言う空飛ぶトカゲだ。

 コイツはリスナーが言うには厄介な奴らしいのだが、我の下級魔術の水球であっさり死んでしまった。


《えええええええええええええええええ!?!?》

《ワイバーンがあああああああ!?》

《いやもうおかしいってww》

《何でただの水の球でワイバーンの硬い鱗貫通できるんだよ》

《武器いらなくね?》

《俺探索者んだけどさ、俺の時はワイバーン倒すのに5人がかりで1時間掛かったんだが?》

《俺も大体そんなもん》

《と言うかそもそもワイバーン倒せる奴は中々いない》

《やっぱ社畜魔王最強!!》

《社畜魔王さいきょおおおおおおおおお!!》


 我がワイバーンの死体を空間魔術の1つである《次元収納》に収めてからコメント欄を見ると、結構大盛り上がりだった。

 ついでに同接も4万人を突破しており、まだまだ伸びている様子。

 

「さて、遂にボス部屋の前まで来たのだが……何分で着いた?」


 確認してみると、タブレットには32分15秒と表示されていた。

 我的にはもう少し早く着けそうだったのだが、コメント欄ではこの記録にお祭り騒ぎだった。


《すげええええええええ!! まさかの30分台だとおおおおおおお!?》

《社畜魔王さいきょおおおおおおおおお!!》

《マジかよ! どんだけ早いんだよ》

《さすまお》

《全配信者でダンジョンタイムアタックでもしたら社畜魔王優勝しそう》

《絶対優勝するだろうなww》

《見た感じ息一つ切れてない》

《強すぎwwww》

《ガチで体力おばけじゃんww》


「体力はそこまで無いぞ。精々全力疾走で1時間耐えられるくらいだ」


《その時点でおかしいwwww》

《普通に全力疾走で1時間持たねぇよww》

《俺なんて全力疾走すら出来るか怪しいぞ》

《それは完全に歳のせいだろww》

《でも20代でも全力疾走だったら30秒も持たないだろ》

《これでそこまでって……前世ではどれくらいあったんだよ……》


「前世なら……1週間くらいは余裕だったな」


《!?》

《んなっ!?》

《は?》

《え? 何て? 1週間?》

《異次元すぎる》

《あまりに凄すぎてコメント欄が動くのがびっくりするほどおせぇww》

《皆固まってんんだろ》


「?? 我が何かおかしいこと言ったか? 1週間くらい動けないと死ぬぞ?」


《異世界怖っ》

《俺絶対に生まれ変わっても異世界転生したくない》

《俺も》

《ワイも嫌になった》

《殺伐とし過ぎな、異世界》

《地球に生まれてきてよかった!!》

《ありがとう地球!!》

《ありがとう地球!!》

《ありがとう地球!!》

《ありがとう地球!!》


 この後「ありがとう地球!!」もツイッターのトレンド入りしたことは言うまでもない。



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