第8話 チャンネル登録者10万人突破記念①

 我はあれから生徒だけでなく、放課後には教師にまで色々と聞かれることとなってしまった。

 教師が言うには生徒が命の取り合いをしているのは教師として見過ごせないらしい。

 しかし「昨日の配信でどれ位稼げた?」などの明らかに関係ないことを聞かれたり、挙句の果てに「辞めないか?」とまで聞かれたので、辞めないとだけ伝えてとっとと学校を出た。

 

 我はまだ1日しかやって無いのに辞めるわけなかろう。

 それに幾ら教師だからといって我のプライベートに土足で踏み込んで来るなど言語道断である。

 と言うか初配信でまだ収益化も出来ていないのにどれ位稼げたなどと分かるわけない。

 我はまだ配信初心者なのだ。


「―――と言うことがあったのだがどう思う?」


《うーん、教師の言う事も分からんでもない》

《実際ダンジョンは命がけだからな》

《社畜魔王のせいで安全なツアーみたいになってるけどww》

《まぁ強すぎて全然危ない所がないもんな》

《逆にモンスターが弱すぎて物足りないと感じるレベル》

《話戻すけど、社畜魔王の教師って収益聞いてきたの?》


「うむ。まぁ我は全く分からないので知らんと言っておいたが」


《流石に1日で分かるわけねぇよな》

《今回はお互い様って感じだな》

《うん》

《まぁそうだろうな》

《あの……》

《ん? もしかして初見か?》

《まぁまだこれで2回目だけどな》

《あ、はい、初見なのですが……何でB級ダンジョンに潜って絶賛戦闘中なのにこんなにほのぼのとした会話をしているのですか!?》

《あー》

《いやなんかね?》


「む? 何故かと言われれば、敵が弱すぎて片手間でも余裕で倒せるからだが? リスナーも暇になるだろう?」


 我に向かって迫りくるオークジェネラルやオークキング達は、我が予め発動していたトラップ魔術によって、石化されたり、麻痺に陥って動けなくなったり、頭を魔力弾で潰されたりと、誰も我の下に辿り着いていない。

 我は罠魔術を永遠と発動していればいいので、こうしてコメントを読んで雑談も出来るわけだ。

 現在は6万人強ものリスナー達が集まってきている。

 何故こんなに多いかと言うと―――


「今日はチャンネル登録者10万人記念配信であるからな。枠にも【ダンジョン攻略&雑談】と書いてあるであろう?」


《書いてある》

《始めは意味が分からんかったけど、今なら分かる》

《これはダンジョン攻略&雑談だよなww》

《ダンジョン配信の常識を覆してるww》

《それな。社畜魔王全く動いてないのにどんどんモンスター来るし、どんどん罠に掛かって死ぬし》

《一応ここB級ダンジョンだからな?》

《あっそう言えばそうだったな》

《あまりにも安全すぎてF級ダンジョン攻略見ているように思ってたわ》

《そう言えば今日はどうして此処のダンジョンを選んだのですか?》


「うむ。実はな……我の親友たちにもう食いたくないと言わせれるほどにモンスター肉を食べさせてやると約束してな。モンスター肉の中でも特に美味いオークエンペラーの肉を取りに来たのだ」


 今回攻略しているダンジョンは、《豚鬼の楽園》と呼ばれ、世にも珍しくオークのみが生息している。

 しかし楽園と言うだけあってオーク全種が生息していて、その数も多く、5階層しか無いのにB級ダンジョンとなった最大の理由だ。


《あー確かにオークエンペラーを狩るなら此処が1番だよな》

《ボスがエンペラーなんだっけ?》

《そうだぞ。だから一々探さなくていいから楽》

《まぁその分他の種が沢山居て辿り着けないんだけど……》

《社畜魔王は問題なさそうだな》

《既に4階層なのに舐めプしてるし》

《と言うか友達のためにわざわざB級ダンジョン攻略するとかかっこよすぎ》

《それな》

《俺もこんな友達欲しい》

《絶対にカノジョ居るだろ》

《まぁ口調以外は完璧だもんな》

《ウルガ様! もしかして……カノジョ居るのですか!?》


「口調は前世に引っ張られているだけだ。それにカノジョは居ない。我がカノジョにするなら一生添い遂げる程に好きになった人でなくてはな」


《あらやだなんてピュア》

《今の時代にこんな奴居るんだな》

《でもウルガ様にめちゃくちゃ愛される……いい》

《私ウルガ様ならヤンデレでもいい》

《何なら私を貰って欲しい》

《23歳独身、顔は整っている方だと自負しています! 是非一度お会いしませんか!?》

《私とも是非お会いしましょう!!》

《何言ってるのよ泥棒猫達!! 優真はお姉ちゃんのなんですーー!!》


「――――――は?」


《は?》

《え?》

《優真……? もしかして社畜魔王の本名?》

《って事はさっきのは社畜魔王のお姉様!?》

《まさかのお姉様登場ww》

《社畜魔王もびっくりしすぎて呆けてるやん》

《これは多分ガチだな》

《ブラコンの姉……羨ましい》


「―――は!? どういう事だ我が姉よ! どうして本名を出す!? 別に知られても良いのだが、流石にまだ早い気が……それに我は許可していないだろう!?」


《良いじゃない別に。優真はお姉ちゃんのものってアピール出来たんだし》


「そう言う問題では無い! BANするぞ!」


《やめたげてー》

《確かにいきなり本名出されたらそうなるのも分かる……けどやめたげてー》

《取り乱す社畜魔王見るもの楽しいからバンしないでやって欲しいです》

《私は本名が聞けてとても嬉しいです!》

《優真様! やっぱり私をお嫁にどうですか!?》

《ガチ恋勢出てくるの早くて草》

《でも俺も本名が分かって嬉しいかも。なんか距離が縮まったみたいな?》

《これについてはお姉様に感謝》

《だから見逃してやって》 


 どうやらリスナーは、我的に非常に不本意な事に姉をBANするのに反対らしい。

 ……命拾いしたな姉よ。

 

「……分かった。もう言われたので開き直るが、優真は我の名前で間違いないし、これからは好きなように呼んでくれ」


《やっぱりマジだったか》

《まぁそんな感じしかしてなかったしなww》

《配信2日目にして既に名前バレww》

《まぁ誰も悪用せんことを祈るのみだな》

《こんなんで炎上して辞めるとか絶対になしにしてほしい》

《まぁ今までにない安心感で心置きなく笑えるしな》

《じゃあ優真様で》

《俺は前と変わらず社畜魔王かな》

《私は勿論優真様》

《優真呼びはお姉ちゃんの特権!》


 また余計な事を書き込む我が姉。

 本当にBANしようか。

 だがリスナーはそれを良しとしないし……何か腹が立つな。


「むぅ……今からモンスターに八つ当たりさせてもらおう……」


《wwww まぁどうせ倒さないといけないんだしそれでいいか》

《モンスターが可愛そうだけどww》

《皆でモンスターに向かって手を合わせるしか無いな》

《姉って強いよな……》

《それな》

《思った》

《さっきのやり取りで如何に社畜魔王が振り回されてるかがよく分かった》

《むくれる優真様かっこいい……》

《今からでも後ろに瞬間移動して頭ナデナデしたいなぁ》


 我は若干名の者が我の境遇に同情してくれる事にほんの少し嬉しくなりながらも未だ姉への怒りもあるので、罠魔術を解除して剣に持ち替え、オークの大軍の中に身を投じた。

 それと、自分だけ楽しくなるのでは配信者として良くないと思うので、ついでに皆を驚かせてやることに。

 


「勇者剣技改―――【魔覇斬】」




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