災害規格

 また台風がいらっしゃるようで、今回もそれにまつわるお話をいたしましょう。


 白ねぎが最大の被害を受ける自然災害は三つ。台風、大雨、積雪である。


 台風は風で白ねぎをへし折り、大雨が畑を水没させて根を腐らせ、積雪は積もった雪の重みで葉を折ってしまうのだ。


 その結果どうなるか。出荷規格にそぐわない大量の白ねぎが畑に残留することとなる。


 規格に合わないため、出せて加工用であり、値段も買い叩かれる。


 これでは農家が苦しいだけで、保険が出ればまだいいが、そうならない場合も多い。


 そうした場合はどうなるか。通常の出荷規格を一時的に撤廃し、縛りを緩めた“災害規格”が発令されるのだ。


 例えば、白ねぎの葉は基本的に3枚以上となっているが、2枚でも可となったり、あるいは許容できる曲がりの幅を大きくして、多少曲がっていても出荷できるようになる。


 こうした特別な規格は、災害発生時にすぐさま実態調査が行われ、災害規格を発令するかどうかの会議が開かれる。早ければ、災害発生から3日、4日で決まる場合もあるので、農家にとっては大助かりだ。


 なにしろ、通常なら加工用でしか出せない物でも、正規品として出荷できるのである。災害から畑の復旧が終われば、掘れそうなネギから順次掘っていくのだ。


 もちろん、災害無しに比べて、収量が落ちるのはやむを得ないが、それでも出荷ゼロに比べればマシである。


 作物が全滅して、出荷ができないのが、農家にとっての悪夢ですからね。


 年一発勝負の果実農家はリカバリーが効かないため厳しいですが、白ねぎ農家は年中収穫できるよう、収穫時期をずらせるように植えているため、最悪でも3、4カ月でリカバリーできます。


 また、被害を受けた畑でも、災害規格が発令されれば、どうにか出荷もできて、リカバリーできる数カ月後まで食い繋ぐ事もできるのです。


 皆さん、台風が通過した1週間後辺りに、少し見てくれの悪い白ねぎが店先に並ぶかもしれませんが、それは“災害規格”が発令したものと思っていてください。


 葉の数が少なかったり、曲がりがいつもより大きかったりするかもしれませんが、味はいつもと変わらないので、安心して食べてください。


 では皆さん、また次回に~♪

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