農家はみんな、アスリート!

 さて、資本の話が続いているので、ちょっと変化球を入れて、『体は資本』でいってみましょうか。


 当然ながら、農業は肉体労働です。それもかなりきつい部類に入るものです。


 肥料袋を運んだり、収穫したねぎを運んだり、山積みの梱包した段ボール運んだり、重たい物が目白押しである。常日頃から重量挙げのオンパレードだ。


 それらに加えて、足場の悪い畑の中を行ったり来たりで、これがまた足に来る。


 何時間も機械の操作をして、こちらは腕に来る。


 どうしても機械ではできない作業もあり、そこは人力でカバー。


 夏場の照り付ける太陽に、冬場の積雪もお構いなし。愛する娘達(しろねぎ)のために、過酷な環境であろうが戦い抜くのが、白ねぎ農家というものです。


 そう、白ねぎ農家はとにかく体力勝負!


 まあ、はっきり申しますと、自分もこの点ではかなり苦労させられました。


 元々調理師と言うことで立ち仕事には慣れておりましたが、とにかく体力が削られまくる。


 特に夏場は過酷な作業に加え、暑さにもやられて、汗と一緒に魂まで抜けていきます。


 そう、無心です、無心。考えてはいけない。無我の境地で、ひたすら作業です。


 そして、冬は雪です。大阪京都ではあまり縁のなかったですが、雪ってこんなに重かったんだと、ばっちり分からされました。そりゃそうですよね。雪なんて、水の塊ですから、シャベルでかき分けてれば、重いのは当然です。


 そんなわけで、親方農家での修行中は、栽培方法の習得のみならず、体作りも必須です。


 まあ、筋トレいらずの農作業で、あとはいかにして体を休ませて回復させるか。これができるできないで、翌日の作業に影響が出ます。


 今でこそ、こうして執筆に勤しんでいますが、かつてはそんな余裕は全然ありません。


 筆を執って創作活動に打ち込めるようになったのは、気持ち的にも肉体的にも金銭的にも余裕が出てきた、五年目突入直前からです。


 先輩農家の言っていた、「農家はみんな、アスリート!」という言葉を理解させられました。


 はっきり言って、雨の日以外は休みがないです。雨の日も、梱包作業をしていますから、実質休みなし。畑に収穫できる白ねぎがある限り、ひたすら駆け抜けます。


 そして、“周年”での栽培が確立している以上、年中働けます!


 かくして、完成するわけです。“働いていないと落ち着かない”農家と言う存在が!


 休むには休みますが、日が昇っている間は外で動き回っていないと、どうにもソワソワして落ち着かないんですよ、自分(笑)


 体は資本ではありますが、それを消耗して金銭に置き換えるのが、ある意味で農家と言う職業です。まあ、肉体労働全般に言えることですが、農家になると言うことは、経営者であると同時に、肉体労働者でもあるということです。


 最重要項目だと話した“資本”ですが、これは金銭だけでなく、肉体も含めた“資本”だと考えてください。


 そして、人を雇うことができるまでは、ひたすら肉体を酷使します。


 自分の場合は、梱包作業などの内向きな仕事をパートさんに任せ、自分は畑仕事に集中できるようにしました。これだけでも労働時間が劇的に楽になり、今ではゆとり(当社比)ある生活環境、労働環境が出来上がりまして、こうして皆様とは、筆を介して交流することができるというわけです。


 健全なる精神は健全なる身体に宿ってほしいものです、はい。


 皆さんも農家を目指されるなら、“資本”の中には、健全な肉体が入っていて、間違いなく必須であることを認識しておいてください。



           ~ 次話に続く ~

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