街へと入り、物を揃える

第4話 世界樹の麓町にて

「アウシュハーリアへの道のり遠いな」

「そうだな……にしても」


 僕達は、アウシュハーリアへ向けて出発し早くも10日ほど。

 馬に跨り、突き飛ばしているものの。

 アウシュハーリアへは、長期間の旅路であることには変わりない。

 馬に乗る際、ここまでと指示していれば勝手に馬が走ってくれる。

 だが、


「……、霧に囲まれた麓町の建築しているって前の宿屋で言ってたが」

「多分それってアウシュハーリアの世界樹じゃない?」

「だよなあ」


 休むときはキャンプをするのではなく近くの街の宿屋で休んでいる。

(宿屋で飯を食べているとき、様々な世界樹での被害で生き残った冒険者が集まり即席のパーティを作っていたのは不思議だけど……仕方ないよな)

 そして聞いた話によると、大規模世界樹の麓町は壊滅的な被害を受けたんだとか。

ミズガルズで聞いた時よりも残酷で恐ろしい物だと人々は言っていた。

街の建築は、噂によると古代守人もりびとを先祖に持つというフェル族が主導して作っているらしい。

 

「一体どんな町なんだろうな」

「ついてみないと分からないし、先へ進もう」


 背の高い木々が生えた森を抜け、荒野を駆け抜ける。

太古の昔に海だったと思われる枯果てた大地を抜け旅を初めて20日が経った。

 ここら辺になってくると、世界樹アウシュハーリアが遠くの方に見えてくる。

 天よりも高く大空にまで続く世界樹は、圧巻だった。


「ここから見える世界樹って、どれだけ高いんだろうな」

「……確か、先輩方が大きな世界樹を攻略した時に30階までだと記されていたけど……。この樹、あまりにも大きすぎるよね」

「そうだな」


 僕達は圧倒的な樹の大きさに、驚きを隠せずにいた。

 それと同時に、わくわくする気持ちがあった。


 荒野を抜けた後、小さな世界樹の麓町などの跡地などの前を通りつつ。

 さらに3日が経過した、世界樹の麓までもうじきといった所だ。

 馬で走りつつ周りを見渡すと、いたるところで話し声が聞こえる。


「冒険者の数がここら辺から多いな」

「ブラスト、新しい世界樹が発見されると冒険心くすぐられるからね」

「そりゃそうか。昔から新しい世界樹が見つかった時は多かったものなあ」


 これで、累計5回目いや何回目か分からない。だが、常に新しい大きな世界樹が見つかると人々が集まるのだ。これが、世界樹の魅力ともいえる。


(確かに、未知の世界樹を冒険した冒険譚ぼうけんたんを読むのは好きだったけど、自分がその冒険ができるだなんて夢にも思わないよな)


 僕達は、様々な事を話しながら先へと向かう。そして…ついにアウシュハーリアの世界樹麓へたどり着いた。エリアごとに分けられ、巨大な街が形成されていた。


「え……、これだけ広い土地全部が……町? 」


と驚きを隠せない。

世界樹の周辺に防壁が立ち並び結界が施されている。

各地方の冒険者は、それぞれの場所へ移動していた。

迷宮と並んでもいいほどの大きさの街並み。

ましてや、数週間前に出現した世界樹の麓にここまで大きな街ができるとは思いもしなかった。


「こんだけ広いとな。とりあえず今日は疲れたし冒険者登録を済ませるか……」

「……冒険者が門前で色々並べられて色々やってるみたいだね」


……あちこちに人が多く、何処かの街の市場での盛況異常だった。


「入口は……何処でもいいが、お前ミズガルズの奴から預かった紙はあるよな? 」

「ああ、招待状というより推薦状だよね」

「勿論」


 ミズガルズを出発する前、ウヌスによって手渡された赤い印の推薦状。それを門番に渡せばいい。冒険者を並ばせ順番に街に入れているようだ。常に冒険者が溢れているけど、果たして本当に冒険をするのだろうかと疑問が残る。


 何処かの門の前で待機し順番を待つ事10分。

 順番になった。


「新たな冒険者かな? 」


と尋ねられ、すっと推薦状を衛兵に手渡す。

衛兵は、推薦状を広げそれ以外の衛兵と共に確認すると推薦状を返したうえで


「……ミズガルズからの来訪者ですね。ようこそ、アウシュハーリアの麓へ。まだ名もなき街ですけどね」

「名もなき街……、ここだけ人がいて? 」

「えっと、お2人にいいますと……」


と耳打ちするようにと言われたので耳を近づけると。


「ここの街の統括の人が、冒険者として優れているものに街の名前を考えるをを与えようといってるんです……」

(……、何だかありそうだな)

「そうなんだな、で何処へ行けばいいんだ? 」


とブラストが衛兵に聞くと衛兵はこう話す。


「冒険者ギルドにいけばいいさ。ここの冒険者ギルドは、街の中心部分にあるから」


 僕達は、衛兵にペコッと軽くお辞儀をすると推薦状を衛兵から受け取り中へ入る。衛兵は仕事をするモードに切り替わったのか、


「お次の方どうぞ」


と次なる入場者の手続きに進んだ。


「さて……、街にはいれたのはいいが、街に名前がないってのもな」

「気になるよなあ、まあまずはブラスト。冒険者登録しにいこう。そうじゃないと今日の宿もとれやしない」


 巨大な世界樹へ訪れた時には、必ず冒険者ギルドで冒険者登録をしないと始まらない。馬に褒美の肉を与えた後放した後、街の奥にある大きめの建物へと目指す。広く入り組んだ石造りや木製の家が立ち並ぶ街の雰囲気は、何処の街にも引けを取らない盛り上がりだ。


「冒険者ギルドに向けていこ」

「よしいきますか」


青い荘厳の建物に向かうと、そこには……剣がクロスしている看板を見つける。

(ここが、冒険者ギルドか。他の街にもひけを取らないものだな)

ブラストは、周辺を見渡しつつ何かを遠くで見つめた。

そして、口を多い笑ったのちに行く。

冒険者ギルドの中に入ると、そこにいたのは……。


肌が褐色のフェル族の集団であった。

職員が全員人間ではなく人間と同じような見た目をしているが背中に羽毛で出来た翼のようなものが生えているフェル族で、入った瞬間に盛大にブラストは驚きのあまり前のめりでこけた。その様子を、周りの冒険者も含め全員が笑いに包まれ……。(恥かしすぎる)

 女性のフェルが手を差し伸べてくれたので俺達は立ち上がり。


「冒険者登録ですか? 」


と聞かれつつ同じく推薦状を試しに見せてみると受付嬢の方は、全員に何かの合図を送ると一斉に整列していく。そして二列に並ぶと中央の受付嬢がお辞儀をして、


「アーシュ様、ブラスト様ようこそ……冒険者ギルドへ。ギルド長が、首を長くして待っています。そのまま奥の部屋へどうぞ。他の皆様大変申し訳ありませんが、暫く休業とします。再開まで、しばらくお待ちください」


と順番待ちであったのを全てすっ飛ばし自分たちの番になった。

僕達は茫然として顔を見合わせつつも、素直に冒険者長のいる部屋へと向かうのであった。それ以上に、顎が外れていたのは紛れもなく先ほどまで笑っていた周りの冒険者だったのだが…。



 

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