第2話 大いなる伝承の始まり(後編
ブラストは部屋の端で、警戒をしつつ目をつむっている。
こういう時は静かになってくれるから助かるんだよな。
と神経を全集中して古代文字の分析を始める。
(初めて見る伝承……、古代人が
石碑の周りに刻まれた絵。
幾度もの
世界樹は、大きいものが確か…何個だったか。
「ああ、こんなことを聞くのもあれだが…。ブラスト、ミズガルズが把握してる大きな世界樹の総数は? 」
「なんでそんなことを…、今も成長途上の奴を含めて…50を超えてる」
「ありがと」
ブラストは首を傾げつつも、遠くの方を見つめる。
(なるほどな…となると…あれ相当不味いこと
古代文字をメモに移し立ち上がる。
「分析…終わったか」
「まあね。古代にいた種族
ブラストは、首を傾げ。
「古代の
と聞くので、さらっと答える。
「ああ、古代守人ってのは世界樹を代々守る一族の名前。本来の名前があったのだろうけど風化して忘れてるから通称
説明をしてなるほどなあとブラストはメモ帳にメモをする。
彼は人の先生の話を聞かないが俺の話は聞く。
「なるほどな、まっ分からない事だらけだし帰るか」
「そうだね…、ってか帰還用の奴もらうの忘れたし歩こう」
「…そんなのあったな」
迷宮帰還用の糸、それは通称アリアドネの糸と呼ばれるもので世界樹毎に存在している。アリアドネの糸を使うと、近くにある街に転移するという特性があるので使っているだけの事。小世界樹では、アリアドネの糸がギルドから毎年まとまって配布されている。
理由は、明確な目的がない限り冒険者が来ないという事と需要が殆どない事などがあげられる。
(あの壁画が本当だとしたら、もう時間がないのかもしれない)。
自分は、とある世界樹の麓とはいかない辺境の地で生まれ。親に見捨てられていた、そしてミズカルズの孤児院に入り今がある。両親の事は知らないし、顔も覚えていない。覚えているのはアーシュという名前だけ…。下の名前もあったはずだけど、すっかり忘れて名前を名乗る時は上の名前しか名乗っていない。
「ブラスト、
「おう」
歩きながらブラストから緑色の液体を貰い、それを飲み干す。
緑色のは、青色のと違い傷の回復を促す効果がある。
ブラストは、回復関係の素材をアーシュは魔物の素材を集める事としていた。
2階から1階への階段を降りたときに村へ向けての近道を見つける。
「これは、こっちから抜けれる。近道出来るな」
「なるほどな。刺突」
細剣で、何もない壁をつくと壁はボロボロに溶けた。
隠し通り、抜け穴ともいい別名ショートカットとも言うものだ。
これがあるとないとで、迷宮の難易度も変わってくる。
表向きではわからないけど、反対側から触れてみたら近道だった
という事がよくあった。
ブラストは鼻で周囲を嗅ぐと
「焦げ臭くね」
「…、確かに急ごう」
もしかして、あの伝承…本当に始まったのか…? いや初めてしまったのか?
という俺の考えはすぐそばに答えがあった。近道を抜けて村の方へ走っていると叫び声が聞こえている。入口へ向けて走っていると、世界樹からミシミシという音ともに崩壊が始まった。
「流石にやばすぎるだろ…」
「…どうしてこうなった」
崩壊から脱出するため、急いで移動する。魔物も壊れていく世界樹から一緒に逃げていくので戦闘になることなく…世界樹を脱出できた。地図が頭の中にあった以上は問題はなかったが…。そのあとも、足を止めることなく村へ向かった。
村の広場のような場所に。何かがいた。
牙を剥くそれは、悪魔のようだった。
赤黒い羽を生やし、先ほど倒したボスの上位互換かと思わるもの。
こちらを見つめ、ケケケケケと歪な笑い声がしたかと思うと…。
黒い翼を4本広げると空へ飛びあがり何処かへ飛び立っていた。
空は、赤黒く一定間隔で化け物が飛んでいる。
…呆然として、それが消えるのを待っていた…。
あちこちで爆発音が聞こえ、遠くから聞こえる悲鳴。俺たちは何もすることが出来なかった。非力すぎるが故に、何もかもが消えていくような無慈悲な出来事。
遠くでは巨大な隕石が落ち、爆炎の柱が立ったりと散々だった。
こうしてはいられない…。
「今は住民を守らないとだな…」
「ああ」
という事で確認すると、住民が殺されているという事はなく全員無事だった。この日は、破壊されなかった宿屋で全員休み次の日護衛任務で被害のない街まで避難することにした。
隣町では、冒険者が一定数集まっていたおかげで、そこまで被害はなかったそうで全員無事避難出来たとの事。ブラストともに僕達は、村の人々に別れを告げ、珍しいドロップ品以外を商店で売り、ミズガルズへ帰路に就いた。
帰路の道は、ミズガルズ最寄り街まで移動する馬車を見つけたので、運賃を払い乗車した。
「さて……、ミズガルズ何日掛かるかな」
「いきしなは1週間かかったし帰りも1週間かかるでしょ」
1週間、その期間は短くも長い期間。
鞄を置き、武器は帯刀しつつもゆっくり過ごし始める。
「あれだろ? どの町でも、あれが不意に登場して街を破壊していったらしい。冒険者がいない町は壊滅だったと聞くしな」
「大きな世界樹がある町はどうだったんだろうか? 」
「さあ、その街に派遣されているミズガルズの奴らに聞かないと分からないだろ」
「まあねえ」
「でさっき石碑で見た伝承はなんだったんだ? 」
と聞かれ俺は、整理した文章を目をつむって唱える。
『
と、ブラストは目を見開き…驚愕した状態だった。
それは昨日の咆哮ではないにしろ…。
凶悪の世界が開いた証みたいなものであるからだ。
世界の中央では、天よりも宇宙に近い大木が生えていた。
いや、それは突然として出現している。
霧の中で、今まで姿を現していなかったそれは、
名をアウシュハーリアの世界樹……という。
数多の世界樹が攻略されし時に出現する誰からも隠された樹である。
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