とおほどたって、ごんが、すけというおひゃくしょういえうらとおりかかりますと、そこの、いちじくののかげで、すけないが、おはぐろをつけていました。しんいえうらとおると、しんないが、かみをすいていました。ごんは、

「ふふん、むらなにかあるんだな。」と、おもいました。

「なんだろう、あきまつりかな。まつりなら、たいこやふえおとがしそうなものだ。それにだいいち、おみやにのぼりがつはずだが。」

 こんなことをかんがえながらやってますと、いつのまにか、おもてあかのある、ひょうじゅういえまえました。そのちいさな、こわれかけたいえなかには、おおぜいひとがあつまっていました。よそいきのものて、こしぬぐいをさげたりしたおんなたちが、おもてのかまどでをたいています。おおきななべなかでは、なにかぐずぐずえていました。

「ああ、そうしきだ。」と、ごんはおもいました。

ひょうじゅううちのだれがんだんだろう。」

 おひるがすぎると、ごんは、むらって、ろくぞうさんのかげにかくれていました。いいおてんで、とおこうには、おしろがわらがひかっています。には、ひがんばなが、あかきれのようにさきつづいていました。と、むらほうから、カーン、カーンと、かねってきました。そうしきあいです。

 やがて、しろものそうれつのものたちがやってるのがちらちらえはじめました。はなごえちかくなりました。そうれつへはいってました。ひとびととおったあとには、ひがんばなが、ふみおられていました。

 ごんはのびあがってました。ひょうじゅうが、しろいかみしもをつけて、はいをささげています。いつもは、あかいさつまいもみたいなげんのいいかおが、きょうはなんだかしおれていました。

「ははん、んだのはひょうじゅうのおっかあだ。」

 ごんはそうおもいながら、あたまをひっこめました。

 そのばん、ごんは、あななかかんがえました。

ひょうじゅうのおっかあは、とこについていて、うなぎがべたいとったにちがいない。それでひょうじゅうあみちだしたんだ。ところが、わしがいたずらをして、うなぎをとっててしまった。だからひょうじゅうは、おっかあにうなぎをべさせることができなかった。そのままおっかあは、んじゃったにちがいない。ああ、うなぎがべたい、うなぎがべたいとおもいながら、んだんだろう。ちょッ、あんないたずらをしなけりゃよかった。」

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