地下第四層



「なんかやけにあっさりここまでこられたぞ。勇者たちはほんとうにこんなところで二箇月近くもモタモタしておるのかや」


「第三層までは物理でどうにでもなるからな。こっからは瘴気に身体を馴らしていかなきゃならんから、人間の足だとどうしたって進度は遅くなる」


「人類って瘴気に馴れることができんの?」


「低量の瘴気なら。わずかに残ってる神の加護や地霊の力を借りて、体内で浄化ができるようになる。完全にその土壌が汚染されきっちまうと不可能だ。ここでいったら第六層辺りまでだな。そこから下は適性のある者か、特殊な装備を持ってるやつ以外は進めない。つーわけで、最下層を目指す者どもは、第六層に中継基地を築くのがフツーのやりかただ」


「そこに行けば勇者に会えるのケ?」


「会えるかどうかは知らんけど、行方を知ってる誰かはいるんじゃねえの」


「それにしてもぶるるぅ、冷えるの」


「この第四層は極寒、下の五層は灼熱。でそンつぎは巨大な森になってる」


「地下ナノニめちゃくちゃナ環境。ゼンブ温暖化ノセイ!」


「とゆーより、お約束みたいなもんであろ?」


「〈猫〉、さぶいの苦手ブヒッ。お姉さまの躰であっためてほしーねこ?」


「よしよし、ちこうよれ、〈豚〉。やはり畜産動物の身体はぬくいのう」


「ブヒャー、〈猫〉は〈猫〉ブヒッ、〈豚〉じゃないンにゃひっ、でもお姉さまに抱き着かれてコポォ、しゃーわせ」


「モウ、〈豚〉デイクナーイ?」


「このブタめ。これか、ぐへへえ、これが欲しいんだろお?」


「ブヒャヒャ、ヒャい、くくくすぐったいニャ。お姉さま、わき腹は駄目ニャ」


「なんぢゃ、毛が生えてきた。こ、こわい」


「モトニ戻ッタ。ナンデ?」


「てめーらのイチャイチャ芸を見せつけられンのもしんどくなってきた、おぢさん、三十五だし」


「だっさー。三十五なんて終わってるー、ざーこ」


「ヤ、〈猫〉。地上の時間でゆったら、そちもわらわも三〇〇歳越えとるぞい」


「二匹あわせると六〇〇歳!」


「オット。ココデワガママ魔王ノロリババア疑惑発覚カ?」


「あわせる必要ないであろ! そもそもわらわ、ロリ担当ぢゃないし」


「ヂャ、ばばばばあ?」


「それ、ただの年寄りであろ。てゆーか、どさくさにまぎれて何わらわのコトBBA呼ばわりしてんの? 〈巨匠〉こそ、製造から軽く四〇〇〇年超えてんじゃん」


「吾輩ハ偉人枠。古ケレバ古イホドヨイ」


「オトコって勝手よねー?」


「ほんとニャほんとニャ。野郎もまいンち化粧してからエラソーなこと語るといーニャ。お肌のお手いれに気を使わないやつに、御託を並べる権利はないと知るニャあ」


「あ。魔物も化粧するんだ」


「だって画面に映るじゃん? 見場を調える時間はとるよ、当たり前であろ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る