実況18 KAIの選択、その一部始終(解説:GOU)
俺達と地底大陸へ行き、大地の民につくか。
HEAVEN&EDENの住人として、世界を裏切らずにここで別れるか。
それを
一見して、こちらの声が聴こえたのかどうかすら怪しいような。
普通に考えれば、彼が俺達についてくる理由は無いだろう。
フェイタル・クエストの告知を受けたこの瞬間、俺は運営AIが、ゲーム全体の“若返り”を狙っているのだと睨んだ。
双方の敗北ペナルティに差があるのが良い証拠だろう。
方やゲームそのもののサービス終了。
方や地底大陸への島流し。
だから、終わらせずに留めて置くのだ。
シニアプレイヤー達の存在による経済効果は確保しつつ、地下に押し込んで飼い殺しにする。
さながら、大昔にあった、監獄紛いの隔離施設が如くだ。
そして、地上には若き“大地の民”を循環させれば、更に向こう二十年、この世界は安泰となる。
そもそも、HEAVEN&EDENのサービス開始時点から、仕組まれていたクエストですらあるのかもしれない。
奴ら運営AIには、我々人間のように、明日死ぬかも知れないと言う性急さが無い。
ゲームが誕生した瞬間から、二十年後の停滞まで予期して手を打っていたとしても、何ら不思議は無いだろう。
そこそこのクエストをこなしていれば食うに困らない楽園世界。
能動的に守る理由は無い。
かと言って、俺達と共に能動的に壊しに行く理由も無い。
“理由が無い”と言うのは、ある意味で最も強烈な理由たりえるのだ。
今更、俺達のように、嫌なら辞めると言う事も出来はしないだろう。
彼からすれば、別に俺達の固定パーティに拘る理由も無い。
事実、俺達と出会う前は、野良の即席パーティを組む程度の当てはあったそうだ。
その人間関係すら煩わしく感じる時は、一人でこなせるクエストでも食べて行けたらしい。
だから、
「あんたらの方針に、おれも乗ろう。さっさと行くぞ」
散々黙りこくっていた筈の
「“こちら側”の連中が、告知から我に返る前に脱出しなければ無駄死にする羽目になるぞ」
よし。
パーティの誰一人、欠けずに済んだらしい。
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