CRトロピカル因習村とは

 皆さんどうもこんにちは。

 今日はいつもと同じように、CRトロピカル因習村の攻略をしていこうと思います。


 と、言いたいところですが、なんと過去の記事を名のある都市伝説収集家に取り上げてもらったことにより、パチスロ界隈を超えて多くの人に注目してもらえることとなりました!

 自分の身の丈に合っていない閲覧数に戦々恐々としていますが、それでも私の記事に興味を持ってくれた頂いた方にはとても感謝をしています。


 なので今回はパチスロ界隈じゃない人にもわかりやすくCRトロピカル因習村について説明を交えさせてもらいます。これまでの閲覧者からしてみれば「そんなことは前から知ってる!」と言いたい方もいるかもしれませんが、初心者が不用意に手を出すと大変危険な存在です。丁寧な説明および警告は、しすぎるということはないはずなのです。

 最悪命にかかわるかも……

 ですから、これからこのページを見る方はくれぐれも慎重に読んでくださいね!


<CRトロピカル因習村とは?>


 おそらく多くのパチンコ打ちの方が、そんなパチンコ台は見たことも聞いたこともないと主張するでしょう。私の記事の過去の閲覧者の中には『架空のパチスロ台の攻略を書いているネタ記事』だと思っている人も少なくありませんでした。また名前は聞いたことが、あんなものは荒唐無稽な都市伝説である、はたまた同じような現象を知っている人からすれば、別の台の話だ、等様々な意見があります

 確かにCRトロピカル因習村は実在すると言い切ることは難しいです。しかし私は確かにCRトロピカル因習村をやったという記憶があるのです。

 アルコール中毒者の妄想か、はたまた承認欲求にまみれた怪談好きのホラ吹きか。

 どう思っていただいても結構です。私は信じていただける方のために書いてはいますが。



 パチンコ店というものは音が大きく、色が多くて混沌としています。それでいて台が規則正しく羅列されるように並んでおり、私はそんなホールを歩いていると墓地をさまよっているような気分になります。にぎやかな墓地です。私の墓もこれぐらい彩ってほしいですね。

 あの日の私はかなり酔っていました。騒音ともいえる店の喧騒がどこか遠くに感じられ、夢見ごちでホールを歩いていたのです。個人的な話をすると、妻に逃げられたショックで足取りもおぼつかなくて、目元もどこかかすんでしました。

 そんな酩酊にまみれた遊歩のなか、『こんなのあったかな?』という島を見つけたのです。

 トロピカル因習村の話をしていたので、パチンコ店の中に突然海と島が!? と勘違いする人がいないよう一応言っておくと、同じパチンコ台が列になって集まっている島のような場所ということです。

 私はそこそこパチンコ遍歴が長いですが、それでも日本中のを把握しているわけではありません。しかしながらその島に並んでいる機種はどこかこの世のものとは思えないような奇妙な雰囲気を漂わせていました。

 全体的に黒で統一されており、目立っているのは観音扉を開いたような演出用の飾りつけでしょうか。某歌で戦うバトルヒロインアニメ原作のパチスロの左右についていてパカパカする奴を大きくしたようなのみたいな……という認識ですが、パチンコを知らない人にはさっぱりでしょうから歯がゆいです。私は先ほどパチンコ店を墓地に例えましたが、この形であるならば仏壇を思い起こしました。それでいて盤面はオーソドックスなデジタルパチンコのそれで、牧羊的でトロピカルな雰囲気をもった南国で美男美女が水着で遊んでいる風景が映し出されていました。

 私は何かに憑かれたように、その台へと向かいました。どうしてそんな怪しげなパチンコに向かったのか、自分でもわかっていません。一応沖縄の島出身ではあるのですが、懐郷のため南国感あるパチンコをやりたいのなら、ほかにもいくらでもありすぎるほどにあります。やはり、『何かに憑かれていた』としか言いようがありませんでした。


 実際プレイしてみたところ、手ごたえとしては『変』という印象でした。スロットの方は大当り抽選回数によって出玉が変化するタイプなのですが、その大当りを引くこと自体そこまで難しくはなく、むしろ液晶の演出を楽しむタイプの台といった印象を受けました。

 問題はパチンコの方です。スペックを見ると時短付きの確変機で、初当たり確率は1/100となっていましたが、実際に打ってみると1/200以上はあったのではないかと思います。

 大当たり中は右打ちとなり、盤面に表示された図柄のフルーツを狙えばいいだけの簡単なルールなのですが、これがなかなか当たらないのです。


 とまあ、そういったご新規さん置いてけぼりの話は今回は置いておいて、映像として流れているストーリーの話をしましょう。

 断片的に流れる映像から察するに舞台は南国の島にある村でした。人々は水着で踊りまわり、魚たちが歌い、なんとも楽しげな雰囲気です。しかし、確変に入ると場の雰囲気には似合わない怪しげな儀式が始まります。

 まずは老人たちが神棚に向かって呪文を唱えています。続いて琉装めいた装いの巫女が祝詞のようなものを奏上します。そして最後に村人が手に持った木槌を倒れている巫女に打ち下ろします。

 なんとも悪趣味な光景でいて、ストーリーも何かの模造品をつぎはぎしたような印象を受けました。大まかな設定は有名パチンコシリーズである海が舞台の某作を思い起こさせますし、因習村めいた要素は某同人ホラーサウンドノベルゲーム原作の台を連想します。時折本土の戦国武将のようなものが島を襲ってくるから防衛する話が挟まれるのですが、これは琉球侵攻を表している……? と思い少し考えて、某傾奇者戦国武将が主人公の漫画原作のパチスロ要素だと気が付きました。原作小説だと朝鮮出兵に参加しているのが、漫画だと琉球出兵に変更されている話ですね。

 これはもしや海賊版なのでは? とプレイしていて不安になりました。見覚えのない島を見つけてそこまで違和感を感じないほどの大型の店で、そんな反社会的な要素はないに決まっています。しかし博打というジャンルは何らかの違法性を常にはらんでいます。真に健全なものなど存在しないという思いから、なんらかの裏社会めいた思惑に巻き込まれたのでは、という考えが捨てきれませんでした。

 こんなゲームはやらないほうがいい、悪いことに巻き込まれる、そう思いつつも私は機体から離れられませんでした。カードの残高はどんどん吸われていき……


 とまあ大げさに書きかましたが、幸いなことに残高はすでに少なく被害は少なかったです。いや、すでに普通のパチスロに被害を受けていたというのが正しいですが。  被害というのも見当はずれな言い方ではありますね。

 カードの残高がゼロになると、私は呪いが解けたようにその場から立ち上がりました。冷や汗をかき、後ろ髪を惹かれながらもその場を後にしたのです。その日は夏で、店から出ると蒸し暑い熱気を肌で感じられました。

 後日気になってその店を訪れましたが、CRトロピカル因習村なる機体はついに見つけることはできませんでした。


 え? それだけ? つまりはお金をむしり取られるから、『人食いパチンコ』ってこと? ただ酔った勢いで複数のパチンコを打った記憶が合わさっただけなのでは?

 これまでの話から、そう思ってしまう方もいるかもしれませんが、結論まではもうしばしお待ちください。


 少し時系列は戻り、私は心臓の音を抑えながら店から逃げようとしました。すると道で知り合いに出会ったのです。


――よお、どうした。おばけにでもあったみたいな顔をして。


 その人はパチンコ仲間です。私よりもはるかにベテランで、界隈についてもよく知っている方でした。

 私は今見たことを吐き出すように彼に話しました。初めは笑っていた彼ですが、話が進むにつれて深刻な顔をしていきました。そして、一通り聞き終わると、彼はこういったのです。


――お前、負けてよかったな。


  これは、パチンコ仲間から聞いた話だが、と彼は話し始めました。いわば私は今、知り合いの知り合いの話をするわけですが。

 その友人Aは友人Bとパチンコに来て、私と同じように見知らぬ島を見つけました。奇しくも同じ台だったようです。

 Aは私の同じような流れをへて、素寒貧になりました。もっとも残り少なかったわけではなく、本当に大負けをしたようですが。

 そして気味が悪いのでBに向かって帰ろうと促そうとしました。そこでAは奇妙なものを見たのです。

 先ほど私は台を仏壇に例えましたが、その扉の部分、それが閉まろうとしていたのです。Bは扉に挟まれながらも、パチンコをプレイしていました。

 想像してみるとなんとも滑稽な光景です。仏壇に挟まるということは、私も子供のころに経験したことがあり、罰当たりながら微笑ましささえ感じる人もいるかもしれません。

 最初はAも笑っていました。「お前挟まってるぞ」と、隙間から手を入れて肩をたたきました。しかしBはパチンコを止めようとしません。よく見ると、画面に顔をへばりつけて、一心不乱にハンドルを回していました。次々と大当たりを出しているようで、かなりの玉数の表記がデジタル画面に表示されていました。しかし数字をよく見ていると、ところどころ文字化けしており、流れている曲も不協和音としか言いようがありませんでした。

 いよいよおかしいとAはBを無理やり引き離そうとしました。しかしBはフジツボのように席に張り付いており、とても離すことができませんでした。

 そうしている前に、扉はじりじりと閉まっていきました。Aはあの手この手でBをパチンコ台の前からどかせようとしましたが、最後には……


 ちぎれたBの下半身と、あたりに散らばった血に呆然としながら、Aはようやく助けを求めました。しかしながら戻ってみると、その島は存在せず、さらに自分についた血さえ消えていました。店員は彼のことを『数いるおかしなことを言う客』の一人だと判断し、そのままあしらってAを帰らせました。

 今でもBは見つかっていないようです。


 そこまで聞いて私は背筋が凍るのを感じました。私は負けたからそのまま解放されましたが、勝ち続けていたら同じ運命を辿っていたのです。

 欲につられた人を食う怪異忌憚はよく聞く話で、言ってみればベタです。そういった話を聞いた時は、明らかに怪しいものを前にすれば怖くなってすぐに目先の欲を捨てられる、そう私は思っていましたが、実際かかわってみるとうまく逃げられなさそうだというのが感覚でわかりました。

 これが人食いパチンコ『CRトロピカル因習村』について私が体験したことです。


<CR因習村パチンコ考察>


 この人食いパチンコはどういった存在なのか、調べたところ様々な考察がされているようです。

 まずは博打の神の祟りであるというものです。

 古来より祭事と博打は切っても切れない関係でした。博打というのは「今でこそ法整備されているが昔は無法地帯だった」、なんてことはなく、いかなる時代でも大なり小なりの締め付けは行われてきました。そうした規制から逃れるために、博徒たちはあらゆる手段で脱法を図り、その一つが祭事としてまぎれて打つことです。これは祭事なので実際にお金をかけているわけではない、そういった建前の元、神社で賭け事が行われたという文献は平安時代のころから数多く残っています。(台が仏壇みたいだと言ったのはあくまで比喩なので)さて、それだけの長い時間同じことを繰り返していれば、「祭事の建前で博打をしている」から「祭事の工程事態に博打が含まれる」へと変わることがあると思いませんか?

 やがて博打から生まれた祭事が信仰を生み、信仰によって博打自体が神性を宿したのです。

 博打の神とはそういった存在なのです。

 祭事は規則が厳重です。パチンコ、競馬、競輪、違法賭博。今の博打は混沌としています。そういった時代に警報を鳴らすために人食いパチンコが生まれた、というのが説の一つです。


 他には少し変わり主でありますが、別世界のパチンコだという説もあります。

 見知らぬ島が現れるのは、空間が割り込んでおり、しばらくしたら閉じるので、いつの間にかなくなる。微妙に見たことがあるようなパチンコなのは、別世界の微妙に違った歴史によって作られたストーリーだから、というものです。

 琉球神道においては他界概念として、ニライカナイ信仰があります。ニライカナイというのは理想郷の伝承ですが、それは水平線にあるといわれ、つまり海の彼方に常世にあたるものが存在するという考えです。トロピカル因習村はそういった理想郷の海を表しており、何らかの手違いであの世とパチンコが繋がってしまったという説です。


<なぜ人はCRトロピカル因習村に惹かれるのか>


 このパチンコについては局所的ににぎわっており、命がかかっていても打ちたいという人は数多くいます。それは何故か。

 俗な話をすると儲かるからです。

 基本的にパチンコというのは店のほうが儲かるようにできており「パチンコでお金を稼ぎたいのならまずやるべきは打たないことだ」という考えが一般的だと思います。

 しかし人食いパチンコは超自然的な存在なので、そういった常識の外にあり、端的に言うと設定が変です。だからゲームとして破綻しているので、思いがけないほど大勝ちすることもあれば、信じられないほど大負けすることもある。そこにロマンを感じて、もう後がない人たちが探すということもあるようです。

  本当に大勝ちすれば絶対に喰われる、というのであれば打ちたいと思う人はいないでしょうが、大勝ちしたのに生還したという例も少なからず残っているのです。なんとも危険なパチンコです。

 私が言うのもなんですが、近づくのはよくないです。

 しかしこうして私自身がこの話するということは、情報を伝播していることになっています。

 危険を周知するのと、軽く語ることで怖さを軽減し怪異としての質を落とす役割もあるのですが、それでも軽く扱うからこそ力が増大するパターンの怪談も多いです。怖がらなければ怖くないという話は一面の見方でしかなく、例えば迷惑な配信者が怪談スポットでひどい目に合う、というストーリーは『怖がらないことこそが怪異を遠ざけることにつながっている』とは真逆の方向性ですから。

 でも閲覧者の皆様はこの記事を見てしまった。そんな人のために、支援BOXを開きました。

 

 勘違いしないでほしいのですが、これは恐怖を煽り立ててお金を引き出そうとしているわけではないです。一番いい方法はこのままブラウザバックをして、パチンコ事態にかかわらないことです。

 それでも好奇心を抑えられない人はいるでしょう。そんな人のために私が代わりに人食いパチンコをプレイして、経過を書くのです。パチンコをするにはお金が必要ですからね。

 持ち逃げをされるのではないか、という不安もあるでしょうが大丈夫です。私自身怪談には多少の知識がありますが、こういった怪異を利用して無駄に儲けようとする人は、大抵ひどい目にあいます。そんな消極的な理由で死ぬよりは、危険のほうに突っ込みたい。私はそう考えています。

 もし私を危険な目にあわせたいという方がいるのであれば、是非ともお金をご支援ください。

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