第2話
空中に浮かび上がってきた俺の
「れ、玲!!」
「っ!」
海翔に名前を呼ばれて現実に引き戻される。
「希少属性じゃん!!!やったな!!!」
俺の肩を掴んで自分の事かのように喜んでる海翔を見ると自分が希少属性持ちだという実感が湧いてくるが、同時に基本5属性の親和性が0だった、つまり使うことができないという現実も理解し始めた。
「でも...基本5属性が」
「全部0のやつなんて探せばちらほらいるし、そもそも玲は希少属性持ってるんだから大丈夫だって!」
「そうかもしれないけど...」
そう、別に探せば基本5属性を1種類も使えない人は居るが、彼らが探索者として成功しているケースはほぼ0に等しい。もちろん彼らもレベルを上げてステータスを高くすれば剣や盾を使い物理アタッカーとして探索者になることも可能だ。ただ、そもそも最低限それができるステータスになるまでレベルをあげる必要がある。基本5属性を一切使えない人にはそれが難しいから不可能に近いのだ。
それと比べれば、得体が知れないとはいえ一応俺は希少属性を持っている。基本5属性が俺に使えない以上、俺が探索者として成功するには何が何でもこの錬金術を極めるしかない。だから俺の最初の目標は、
「黒鉄さん!!」
「は、はいっ!?」
考え込んでいると、急に受付のお兄さんから声を掛けられる。妙に興奮しているのはなんでだろうか?目を輝かせながらお兄さんが続ける。
「おめでとうございます!あなたの錬金術はいまだかつて発見されたことがない新属性です!いやー、実は私この仕事10年近くやっているんですが、
新属性の発見には初めて立ち会いました!今、探索者協会で管理しているデータベースを確認したんですが、錬金術に該当する魔法属性は存在していませんでした。つまり前例がいないということになります!」
「は、はい...」
カウンターに身を乗り出しながら、早口でほぼ息継ぎもなく捲し立てたお兄さんを少し引き気味で見ると、その視線に気づいたのかお兄さんが体勢を整えて咳払いをする。
「こ、こほん、失礼しました。少々興奮してしまいました」
「大丈夫ですよ」
「え、えー...例えば、先ほどの女性の希少属性だった治癒は、データベース上でもこの40年で200人ほど確認されています」
「へぇ、そうなんですか、意外といるんですね」
希少属性とは言っても40年もあればそこそこの人数は発見されるか。
「えぇ、希少属性でも被る方は居らっしゃいます。アメリカ最大のダンジョン街なんかに行くと治癒属性や付与属性の方なんかが強いパーティのサポート枠を奪い合っていることもあるくらいですし」
「なるほど...」
行くところに行けば希少属性でも数はいるんだな。
「はい、ご友人の速水さんの光属性も今までに400人ほど確認されていますよ」
「え、光属性って結構いるんだな...じゃあ先輩探索者の人で光属性持ってる人の使い方とか参考にしたら使い道見つけられるかね?」
「そうですね、良い考えだと思いますよ」
海翔がそう言うとお兄さんがにっこり笑って海翔の考えを肯定する。確かに、先輩探索者を参考にする、というのは良い手だと思う。
「俺はそれは多分出来ないでしょうね...」
そう呟くとお兄さんがこちらに目を向け顎に手を当てる。少し考えるようなそぶりを見せてから
「うーん、難しいでしょう、錬金術属性で確認された人数は黒鉄さんが初めてですし」
と言った。お兄さん曰く世界でこの属性を持っているのは俺しかいない。前例がない分手探りで色々試していかないとは行けないが、なんかちょっとわくわくするな。
「色々試してみます、ありがとうございました」
「いえいえ、データベース上に新しく新属性として記録しておきます、また何かあれば」
「ありがとうございます、それでは失礼します」
受付のお兄さんにお礼を言ってから離れると、途端に俺はたくさんの探索者の人たちに囲まれる。
「う、うわぁあ!?!?」
「なぁ!お前探索者志望だよな!何の希少属性だったんだ!?」
「錬金術って新属性なんだろ?俺らのパーティ入れよ!!一から鍛えてやるからさ!」
「ねえ君高校生で希少属性持ち?将来有望ね」
忘れてた!希少属性を手に入れるとコレがあるんだったっ...
「俺のパーティに...!」
「いいえ、私たちのクラン...!?」
「俺が...!?」
「し、失礼しますっっっ!!!!」
そういって海翔と2人でダッシュで逃げる。流石に追ってくるようなことはしないみたいだ。
「...はぁ...はぁ...た、助かった...」
「す、すごかったな...ははは」
「完全に忘れてたよ...」
ダッシュした勢いでそのままバス停まで走る。300mほど全力ダッシュをして疲れ果てた俺らはバス停のベンチに腰を下ろす。
「...なんていうか、びっくりだね、俺ら2人とも希少属性だなんて」
「そうだな...それよりも俺は玲が基本5属性全部0だったのがびっくりだったよ、まぁ錬金術があってよかったな」
「得体のしれない謎属性だけどね」
本当に謎属性だけどあってよかった。これがなければ俺は探索者にはなれないところだった。深呼吸を繰り返し息を整えているとまた海翔が話しかけてきた。
「...なぁ、玲」
「うん?」
「俺、やっぱり光属性も極めてみるわ。水も極める」
覚悟を決めたような海翔に俺も覚悟を決めて返す。
「...俺は
「玲は誰かを参考に、ってできない分俺よりも難しいだろうからな。玲が錬金術を極めるなら俺は水と光を極める、そうすれば俺らはきっと最強になれる、だろ?」
「海翔...」
本当にできた親友だ、と思っていると海翔が拳を俺の方に突き出してくる。
「玲!ここからだぞ、まだ始まってもねえ!一緒に探索者、やろうぜ!」
「恥ずかしいなぁ」
「良いんだよ、気合入れるんだ、ほら」
「...おう!」
俺も自分の拳を突き出し軽く打ち付ける。海翔の言う通りだ。ようやくスタートラインに立ったに過ぎない、海翔と一緒に絶対に最強の探索者になる夢が、今始まったんだ。
「ところで、玲、今日、何曜日だっけ?」
「日曜日」
「あっ」
「ん?まさか...」
「か、課題やってねえ...」
「おーい...」
先は長いようだ。
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