第33話 戦車と黒馬と一騎撃ち

「ぶぇっ、ぶぇっ、ぶぇっ。バカなのか?ばかなんだろ?恰好つけおって」


 戦車男は楽しそうに笑う。

この馬車を引く馬は魔獣、ナイトメア。夜は無敵の魔獣だ。そのパワーは馬車を引いても尚、一瞬で最大速度まで加速する。それが2頭で引くのだ。すさまじいパワーになる。どんな攻撃も効かない究極の肉弾戦車の完成だ。

人間如き一瞬で町ごと踏みつぶせる。

 だが、最初の礼拝堂への突撃で生きている連中だ。油断は禁物。

最大の加速を得るべきだろう。

戦車男は得意の興奮剤の入った注射器をナイトメア二頭に投げてぶっ刺す。


ブヒヒィィィィィィン!!!


二頭の馬が立ち上がり嘶く。真っ赤に光る眼がさらに光彩を上げ、涎をばら撒いた。

興奮で鼻息が荒く、今すぐにでも突撃したくて前足を掻く。


 これで良し、速度はさっきよりさらに出る。一瞬でひき肉にしてやる。死体が残るかどうか、残ってたらリードストン様に届けるべきか?まぁ跡形も残らないか。


「ぶぇっ、ぶぇっぶぇっ」


 戦車男は久々の全力でウキウキだった。



 馬が暴れるように嘶き始めたのを見てリーネが楽しげに


「おぅおぅ、馬がやる気全開のようじゃぞ。ありゃなにか盛りよったな」


「ずいぶん酷いやる気の出し方をしてるようだな。あの馬、もったいないな」


 俺は黒く力強い馬を見て率直な感想を述べた。


「ふむ。その意見は賛成じゃな。ほれ見よケントよ。残念ながら儂らの愛馬が先ほどの破片のせいでお陀仏になっとるぞ」


「ま、まじかっ???」


 リーネの言葉に俺は慌てて母屋の方に視線を送る。

暗くて俺には見えないが礼拝堂の破片が母屋の方にも飛び火したのだろう、屋根などに柱か何かが刺さっているのがシルエットで確認できた。


「貴重な足なのにぁ……高いんだぜ?」


 俺はトホホな気分で意気消沈する。そんな俺に正面を見据えたままニヤリと笑うリーネ。


「そう気落ちせずとも、正面に程よい馬がおるではないか」


 そう言われて俺は正面を見据える。吹き出す鼻息が白く湯気立ち、その瞳が赤々と光っていた。


「……おお!! 」


俺は合点がいったようにポンと手を叩く。


「俄然やる気がでてきたなっ」


「……現金なことじゃて」


 俺たちのお気楽な会話が聞こえていたのかいないのかは分からないが2、頭の馬が大きく前足を掲げて


ブヒヒイィィィィィィィィィン


と大きく鳴くとボンっという風切り音と共に一瞬で最高速度に達して突撃を開始する。そのプレッシャーは一瞬気圧されるほどであった。


「早いっ。どっちを狙う?」


リーネの言葉に俺はしっかりと見極めて


「右、だな」


 そう言うと銃をまっすぐ左側の黒馬に定める。


リーネが背後からサポートして魔力を俺に流す。

俺はリーネの魔力を【神聖力置換】で力に換えて、それを増幅して一発の弾にすべて注ぎ込む。


 戦車はすでに目の前。俺は引き金を引く。


 ガァン!!と音と共に弾が飛び出し、左側の黒馬にヒットした。

馬の身体が一瞬で八割消滅して弾はさらに貫通して後ろの戦車男に命中する。


ギャアアアアアアア


 戦車男の断末魔の悲鳴が響き、左側の車輪と動力を失った戦車は左に向いて倒れる。


ヒヒィィィィンン


 右側の馬が苦し気に悲鳴を上げる。左に傾いた荷重がすべて馬にかかり制御できずに転倒しかけていた。

 俺の背後にいたリーネがいつの間にか素早く馬に飛び乗り、身体に付いた留め具を手元に持った光り輝くナイフでスルリと切断する。

そして手に持っていたキビダンゴを馬の口に放り込む。

 ピコーンという音と共に


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

[ナイトメアをテイムしました]

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「リーネ、ナイトメアこいっ!!」


 俺は手を伸ばしリーネとナイトメアを一旦アイテムBOXに収納する。機動力も車輪も失っても最速で突っ込んでいた戦車男の身体は勢いは落ちているものの、まだ俺の方へと突っ込んでくる。

 俺はそれを余裕を持って躱す。


 暫く地面を削りながら進むと戦車男の身体はそのまま停止した。


「ぐぞぅ!!いでぇ。身体がいでぇ、ちくじょゔ……そうだ、この薬を身体に……効ぐぅぅぅ。痛みがないっ。力が沸くぅ!!くそ、あの野郎、ぶっころ……」


 動けずなにやら薬のようなものを投与し、ごちゃごちゃ言ってた戦車男にスタスタと近づき,俺は何も言わずにそのこめかみに銃をあて引き金を引く。


ガァン


という音と共に戦車男の頭部がなくなる。


「やれやれじゃの」


 ひょいっと俺の背後から顔を出すリーネ。こいつだけはなぜか自分でアイテムBOXから出てくる。


「ステータス」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

レベル:   148

なまえ:けんと

ねんれい:26

しゅぞく:にんげん

しょくぎょう:えくそしすと

HP 999999999999/999999999999

MP 999999999999/999999999999


ちから :  99999

ちりょく:  99999

まりょく:  99999

すばやさ:  99999

きようさ:  99999

みりょく:  99999

すたみな:  99999

じょうたい:けんこう

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

スキル

【魔物操術】

【自動守護】

【完全回復】

【全体完全回復】

【自己再生・特】

【二刀流・真極】

【神速抜刀】

【空断一閃】

【無刀剣術・改】

【神聖力置換】

【技能貸借】

【聖剣具現化】

【強化付与・改】

【真力解放】

【神聖力操作】

【神聖力増幅】

【神聖力放出】

【魔力操作】

【魔力増幅】

【魔力放出】

【魔属特攻】

【銃術・真極】

【神速撃ち】

【銃器製造術】

【功徳】

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺のステータスが表示され、それをスワイプしてリーネのステータスが表示される。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

レベル:   182

なまえ:りーね

ねんれい:123

しゅぞく:でーもんぷりんせす


HP 999999999999/999999999999

MP 999999999999/999999999999


ちから :  99999

ちりょく:  99999

まりょく:  99999

すばやさ:  99999

きようさ:  99999

みりょく:  99999

すたみな:  99999

じょうたい:けんこう

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

とくぎ

【魔力操作】

【魔力放出】

【魔力増幅】

【剣術・真極】

【空断一閃】

【無刀剣術・改】

【魔炎操作】

【みね撃ち】

【銃術・極】

【聖剣具現化】☆

【神聖力無効】

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


それをさらに縦にスワイプするとナイトメアのステータスが出てきた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

レベル:   1

なまえ:

ねんれい:5

しゅぞく:ないとめあ


HP 999999999999/999999999999

MP 999999999999/999999999999


ちから :  99999

ちりょく:  99999

まりょく:  99999

すばやさ:  99999

きようさ:  99999

みりょく:  99999

すたみな:  99999

じょうたい:けんこう

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

とくぎ

【体躯操作】

【超速疾走】

【馬車牽引・極】

【空蹴】

【夜行特化】

【睡眠咆哮】

【日光減退】

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ふむ。なかなか優秀」


 俺はアイテムboxからナイトメアを呼びだす。

出てきたナイトメアは先ほどの4mほどの大きさではなく2mほどとずいぶんちっちゃくなってたがそれでも普通の馬よりは大きかった。


ヒヒィィィィィン


 と大きく鳴き俺に頭を摺り寄せてくる。


「よしよし、名前はどうするかなー」


「ではわしゃが決めてやろう。うーむ。 ゴンザレスでどうじゃ?」


「黒曜、とでも名付けるか」


俺はリーネを無視して名前を決める。


黒曜は嬉しそうにもう一度嘶き喜んでいるようだった。


「さて、これからどうするかな……」


 名前をスルーしたことで俺の足をリーネが蹴っているのを気にせず、この後のことを考えた。

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