第20話 報告

 暫くして、受付嬢を従えた逞しい隻眼で壮年の男が奥からでてきた。

男はカウンターで手持ち無沙汰に立っているリーネを見る。

さらにリーネと一緒に立っているバイナリィにも視線を向け


「バイナリィ、久しぶりだな」


「え???あっ!!!ギ、ギルドマスター!!お、お久しぶりです!!」


 バイナリィは飛び退く様に後ろに下がりペコペコと頭を下げる。

そんなバイナリィの様子を見て、リーネは隻眼の男がそれなりの地位であることを理解したはずだが不遜にも不貞腐れた顔で男ににらみを利かせていた。


”揉め事は勘弁しろよ。スマイル、スマイル”


 俺の声を聞き、一瞬眉をピクリと動かしてから男の正面に立ち直し少女らしくニコリと笑い


「お初にお目りかかる。わしゃリーネ。最近ギルドに登録した新参じゃ」


 そう挨拶をする。

……偉そうだぞ。


 ギルドマスターはそんなリーネを値踏みしながら


「ふむ。儂はこのギルドを預かっているマスターのドンブランゴという。君の話は聞いている。バイナリィが戦わずに合格にしたとか」


 ギルドマスターの言葉で頭を下げた城謡でビクリと動いたバイナリィに視線を送り


「まぁ……その件はいい。なにやらドラゴンを退治の依頼を完了してきた、との報告を受けたのだが?」


鋭い視線をリーネに送るドンブランゴ。

その言葉にリーネは得意そうに胸を逸らし


「ふふん、そうじゃ、ドラゴン……というか街道を塞いでおったアリ……」


”ドラゴン!!”


 俺は念を押す。


「…‥ドラゴンはわしゃとバイナリィで討伐してきてやったぞ。ほれ、報酬をよこすのじゃ」


その言動にピクリと眉を潜めたドンブランゴであったが


「……バイナリィ、今の話は本当か?」


少し低い声でドンブランゴはバイナリィに問う。


「あ、ああ。俺もというかリーネさんがほぼ一人でやっちまいました」


その解答で少しドンブランゴは思案するようなしぐさをして


「バイナリィは信用に値する男だ。俺が試験官に推したわけだしな。だからリーネ君の実力は疑う余地もない。だがさすがにドラゴンを討伐したというのは……」


その言葉に少し気分を害したリーネが額に血管を浮かび上がらせる。


「なんじゃ?わしゃとバイナリィが嘘をついておると言いたいのかえ?」


まぁそうなるよなぁ。俺はこの展開を当然のように予想していた。

そしてこういう時にやることはわかってるよな?


”リーネ”


俺は彼女に声をかける。

リーネはにやりと笑い


「では証拠を見せてやろう。とくと拝むが良いぞ。ケント!!」


リーネの呼び声に合わせて俺はアイテムboxからアイテムを取り出す。

ボンっ大きな煙が上がり、ズドーンという音と共に巨大なドラゴン?の首が出現する。ドンブランゴ6人分はある巨大な首だった。大きな驚愕の声が上がる。


「こ、これはっ!!」


さすがのドンブランゴも驚きの声を上げる。


「体の方は邪魔じゃったから細切れにしてそのへんにばらまいてやったわ。まぁあの辺一体、しばらく匂うがそのうち落ち着くじゃろう」


驚きの声に満足したのかリーネの機嫌が直り、楽しそうに笑う。


「おい、商会連合に連絡して見分してもらえ」


ドンブランゴの指示で使いがギルドを飛び出していった。

そしてリーネと向き合いドンブランゴは頭を深々と下げて


「疑って申し訳なかった。どうか許してほしい」


そう謝罪をした。


「なになに、詮無い事じゃて。ちなみに1匹で六千かの?」


「…‥どういうことだ?」


リーネの質問の意味が分からずドンブランゴが顔を上げて聞き返す。


「いやいや……」


ニヤニヤと笑いながらリーネが手を伸ばす。

それを合図に俺はさらにアイテムboxからアイテムを取り出し

ポンポンポン、という音と煙の先に大小10個ほどのドラゴン?の頭を取り出した。


「こういうことじゃて」


リーネが意地悪そうに笑った。

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