第6話 かわいこちゃんとパーティ組むぞ

「あ、あの……突然すいません」


 小さな声だが今度はしっかりと聞こえる。

ぴょこぴょこと動く髪の毛から下に目線を送ると、そこには子供かと思うような女の子がうつむき気味に立っていた。

ああ、ぴょこぴょこ動いてたのはこの子の癖っ毛だったのか。

小さな少女はもじもじしながら俺の返答を待っているようだった。


「なにか用かい?お嬢ちゃん。ここは冒険者ギルド。子供の来るところじゃないぜ?」


そう告げてからまるでゲームのNPCみたいなセリフだな、と考える。

……ん?ゲームってなんだっけ?


「あ、あの……今のやり取り、近くで聞いてたんですが……」


「あ、ああ……恥ずかしいところを見られちゃったな。水晶の故障だってさ」


 俺はヘラヘラ笑いながら視線を上へと泳がす。どうせ説明しても証明はできない。適当にごまかしとこう。


「い、いえ!!故障なんかじゃないです!!お兄さんのステータス、本物だと分かってます!!」


 もじもじおどおどしていた少女が少し赤くなった顔を上げて急にハキハキとそう断言する。


「あ、ああ。ありがとう。……どうしてそう思うんだい?」


 俺は彼女をまじまじと観察しながら質問をする。

俺の視線を感じたのか、彼女は顔を真っ赤にして俯き


「え、えっと……その……わ、わたし。その人の強さが、こう、オーラの色、みたいなので分かるスキルを持ってて……その……」


 彼女はしどろもどろになりながら説明をする。


「なるほど。それで俺の強さがさっきの数字通りだと?」


「は、はい!!あなたのオーラ、今まで見たこともないくらい輝いてて……最初眩しくて太陽かとおもっちゃったくらいで……」


 俺が肯定したことで彼女は嬉しかったのか顔を上げて目を輝かせながら力説をした。

その確信に近い嬉しそうな顔を見て俺は一瞬たじろぎ、それでもその可愛らしさと信頼にも似た熱い眼差しが心地よく


「あ、ありがとう。信じてくれる人がいて……嬉しいよ」


「あ、い、いえ。そ、その……」


 彼女は俺と目が合うとさらに顔をゆでだこのように真っ赤にして俯く。

頭の上に蒸気もあがっていそうな勢いだ。


「で?なにか用があったのかな?」


 俺は話しかけてきた彼女の意図を問う。


「ぁ……」


 彼女は小さな吐息のように一息吐き、もじもじとしていたが意を決したように顔をあげ


「あ、あの。わ、私と一緒にパーティ、組んで近くのダンジョンに向かってもらえませんか?」


 少し上擦った声で叫ぶように彼女は言った。

ふむ。願ったりではあるのだが俺は彼女を見る。

身長は小さい。俺の胸元あたりまでしかない。身体も小さくまるで子供のようだ。

筋肉もあるようにはみえないので戦士系ではないのだろう。

杖の類も持っていない。魔法使いでもなさそうだ。

いや、装備は今持っていないだけかもしれない。

だが、


「うーん、行くのは構わないんだが君が冒険者であるようには見えないな」


 俺としてはついていってあげたいがなんせ今日の食事にすら困っているのだ。

乗り気じゃないのを察した少女はポケットをゴソゴソし始める。

そして一枚のカードを差し出してきた。

俺はそれを受け取りカード、ギルドカードに目を通して驚きの声を上げた。


「え、S級!!き、君がか??」


「は、はい。S級冒険者のリーンと言います」


 少女はそう返事をして赤くなって俯いた。

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