第6話 帰郷と決戦

「勇者……お前、なんで……」


「私と勇者様でアンタのこと、ずっと追跡魔法で居場所を確認してたの。で、それっぽいところに付いたみたいだから、転移魔法でこんな辺鄙な村まで来たってわけ」


 勇者の背後からは、魔法使いが現れた。明らかに俺をバカにした様子で、ニヤニヤしながらそう言ったのだ。


「まぁ、お前が逃げる可能性もあったしな。それにしても……随分とソイツを見つけるまで時間がかかったなぁ」


 なるほど……。コイツらは、最初から俺のことは信用していなかったってわけか。


「さて。ヒーラー。俺のパーティに戻ってこい。これは命令だ」


 そう言って勇者はヒーラーに近づく。と、ヒーラーはなぜか俺の背中に隠れた。


「あ? 何の真似だ?」


 勇者が眉間に皺を寄せてヒーラーを睨む。


「わ、私は……戻らない!」


 ……俺の背後に隠れながら、ヒーラーはとんでもないことを……いや。ある程度予想できたことを言った。


「……戻らないだぁ? 戻れって言ってんだよ! この俺が! じゃないと……この村、どうなるかわからねぇぞ?」


 そう言って、勇者はニヤニヤしながら村を眺める。


「なっ……! あ、アンタ、勇者でしょ!? 村をどうするっていうのよ!?」


「お前が俺の誘いを断るから悪いんだろうが。はっきり言うぞ。この村を地図から消されたくなかったら俺のパーティに戻ってこい!」


 ……勇者ははっきりとそう言った。言ってしまった。


 今のは……言ってはいけない言葉だった。


 仮に冗談だとしても、村を消すなどと、言ってはいけない。


 流石にそんなことは言わないだろう、勇者なのだから……俺はそう信じていた。


 しかし、そうではなかった。そうではなかったことで、俺の中で……何かが決定的に崩れた。


 それは、おそらく、パーティへの未練であったろう。とにかく、それが完全に崩れたのであった。


「……俺も戻らない」


 反射的に俺の口からそんな言葉が出た。


「……は? お前、なんか言ったか?」


 勇者がもう一度聞きかえる。俺はゆっくりと剣に手をかける。


「……俺も、ヒーラーと一緒だ。お前のパーティに戻らないって言ったんだ」


 勇者は明らかに怒りを露わにする。そして、剣を抜き、俺とヒーラーに突きつける。


「……仕方ねぇな。少し痛めつけてやらねぇとわからねぇか……。おい! お前ら、わかってんだよな? お前達二人じゃ、俺には絶対に勝てないってことをよぉ!?」


 ……その通りだ。勝てない。今のままでは確実に。


「……ど、どうするのよ! アンタ……勇者に勝つ作戦でもあるの?」


 ヒーラーが不安そうに俺にそう言う。俺はちらりとヒーラーの方を見る。


「……とにかく、俺を回復しろ。お前の魔力が枯れるまでな」


「え、えぇ……。わ、わかったわよ! もう!」


 俺は剣を構えた。そして、そのまま……勇者との戦闘状態になったのであった。

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