1-6 生徒会室にて①

「ジャン・ド・モンテルミエです。お呼びにより参りました」

「入りたまえ」


 エドモンド副会長の声。まあ私を呼び出した張本人だから当然よね


「失礼します」


 ドアを開ける。すると正面に……


 あれ?


 部屋の中にはエドモンド副会長がひとり

 生徒会の面々はおろか、肝心のアルバート会長の姿もない


「そこにかけたまえ」


 副会長が私の脇の椅子を指し示すので、私は状況がよくわからないままそこに座った


「さて」


 副会長は両肘りょうひじをテーブルに立てて組んだ両手を口元に持ってくる、いわゆる「ゲンドウポーズ」をしながら、あくまで事務的な口調でこう言った


「今日呼び出した理由はわかっているな」

「はい」

「なら話は早い。単刀直入に聞く」


 副会長の眼光が鋭くなった。いよいよね


「なぜアルバートを誘惑した」


(……へっ?)


 あぶなかった。変な声が出そうになったよ


「あの日からアルバートは口を開けば君のことばかりだ。君の髪、君のほほ、君の瞳の話ばかりする。触れた君の手の感触が忘れられないとまでも。これまでも他の生徒に熱を上げたことはある。でもこれほどまでのはここ何年かはなかった。私の記憶の限り、こんなことは、そう……」


 ここで副会長は息をひとつのむと、口調を強めて言い放った


「君の兄、クロード・ド・モンテルミエに対してだけだ」


 唐突に飛び込んできたおお兄さまの名前


(えっ、えっ。つまりどういうこと?)


 とっさに私は頭をフル回転させた


(どうやらこの世界でのアルバート会長は、おお兄さまのことが好きだった。それもかなり。でもおお兄さまが家で会長のことを話した記憶はないから、多分会長はおお兄さまに振られたのね。しかも会長が諦めきれないうちに、おお兄さまは卒業してしまった)


 うんうん


(入れ替わりでちい兄さまが入学してきたけど、ちい兄さまはおお兄さまとタイプが違う。第三王子という立場上、普段は周りを引っ張っていかないといけないアルバート会長は、おお兄さまみたいに強気でリードしてくれる存在に憧れがあったのかも。でもちい兄さまはそうじゃない。そんなところに私が入学してきたのね)


 ふむふむ


(もしかしたら、あの時私が強気に出たので、アルバート会長には私とおお兄さまがダブって見えたのかも。しかも私が拒絶したもんだからますます……)


 そこまで考えて、副会長の言葉で気になる点が出てきた


(そういえばアルバート会長のことを「会長」と呼ばず、「アルバート」と呼び捨てにしてたわね)


 それに「他の生徒に熱を」って言ったわね

 それってまるで嫉妬しているみたいじゃない

 なんで副会長が嫉妬なんか……


 その瞬間、全部がつながったの


(エドモンド副会長、アルバート会長に恋をしているんだ!)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る