第3話 下校時間16時

あのビートンの襲撃以来、特に変わったことは起きなかった。僕の悪い癖なのか、何処かを期待している。それにあの時わずかに光ったグリーン。たぶん僕の感は当たる。きっとあれが手に入れば僕の任務は完了する。「陸、何ぼーっとしているんだ。帰るぞ。」生徒会が終わったサムがサッカー部に来た。「陸、帰るぞ急げ。」「陸、お前らほんと仲良いな。出来てんのか。」と先輩が僕の肩に手を回してじゃれて来た。「先輩やめてくださいよ。」僕は全力で否定し、先輩の手を振り払った。「先輩、俺達出来てまーす。」とサムがふざけた。先輩はうれしそうに「やっぱり。」とふざけて笑いながら部室へ行った。「陸、話がある。急げ時間がないんだ。」「何があったんだ?」「詳しいことは後で話す。急げ、電車に遅れるぞ。」僕は急いで先輩の後を追い部室で着替えた。『サム。サム。』ジルの声にサムは反応した。『サム、分かっているよな。』『ああ、もちろん。陸は連れていく。』『うまく乗れそうか。乗れるさ。』「お待たせ、サム、今だれかいなかったか?。」「いや、だれもいない。そんなことはいいから急ぐぞ。16時の電車に乗るぞ。僕はサッカーの泥だらけのユニフォームを鞄に押し込みながら、駅へ走った。「ピー。」「陸、電車来たぞ、急げー。」サムが叫ぶ。「OK」定期をかざし何とかホームへ。間に合った。乗り換え飯田橋駅まではすぐだ。16時の車内は意外と混んでいた。帰宅の学生とランチ後のママ会ぽい人たち。ちょっと圧がある。営業途中で乗ってる人、少し疲れ気味。リュックを背負って塾へ向かう小学生。乗客はバラエティーに富んでいる。そしてもちろん、リサもいた。僕の大好きなリサ。友達3人と隣の車両にいた。僕がリサを好きなことをサムも知っていた。リサは2組の女子でこの間のビートン襲撃時にグランドにもいた子だ。16:18この電車内。まだ彼女と話したことはない。「サム、見ているだけで幸せな気持ちになるのは変か?」「大丈夫でしょ。所詮、僕ら1階層の人達だし、1階層には恋愛はない。”好き”って感情自体存在しない。いたって合理的だ。まあ、この2階層にいる間は2階層の人間らしく”好きになる”のもありかも。」「だよな。サム」その時だったジルの声がした。『16時いただき。陸。』突然ジルが隣の車両のリサの前に。そしてシートの中に連れ去った。ジルが言う。『陸。3階層でリサと待ってるよ。』「サム、リサがさらわれた。ジルに3階層に連れていかれた。サム。」「ああ。」「サムどうしたんだ、変だぞお前。陸、すまない。この電車に皆が乗るように仕向けたのは俺だ。」「なんだとサム。どういうことだ。」「ジルから1階層を支配後に、未開拓地エネルギーの全指揮を任せると約束があったんだ。陸、すまない。陸とはずーっと友達だった。しかし、いつも俺はの2番。嫌だったんだ。何をするにも一番のお前にかなわない。好きな友達だからこそ、憎めないが、嫉妬してしまう。俺は一番になりたかったんだ。」僕は思わずサムを殴った。「バカやろ。」「2番が嫌だったと。ふざけるな。俺はお前以上に努力をしてきた。お前がふらふらしている間も真面目に仕事もしてきた。お前が俺の努力を見ていないだけだ。だが、許せない。関係のない人間を巻き込むな。2階層の人間を巻き込むな。それも僕が好きな子を。リサをリサを巻き込むな。ばかやろ。」殴られたサムは目が覚めたのか「陸、すまなかった。裏切ってしまった。許してくれとは言わないが俺も3階層に連れて行ってくれ。頼む。それにリサは。」「サム、リサはなんだ。」「リサは”グリーン核”だ。この2階層の核を持ってる。」「なんだと、リサが。ジルが言っていた。」「この間のビートン襲来の時、リサはグランドにいた、確かにわずかだがグリーンの光が見えた。そうだ、あの光はリサだったのか。あの時ビートンの群れが一瞬にして消えたのはそれが原因だったのか。」「そうだ、ビートンはもともと人間だ。人間はグリーン核には逆らえない。絶対服従なんだ。そのことに気付いたジルが3階層、2階層全支配をするために俺を使った。本当にすまない陸。」「わかった、サム。これから僕は3階層にリサを救出に向かう。」「陸、僕も行く。」二人は2階層の時間を止めた。そして3階層の異次元空間シートへ消えた。

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